異変の前触れのような午後
ハジマリノ時…彼だけは発生の瞬間を観ることになる。
第3話 異変の前触れのような午後
「よし、夕方まで昼寝をしよう」
VBをログアウト、終了をして転送機から出る。昼寝の前に何か食べようかと考え、1階にあるキッチンへ向かう。
「今更だけど一人暮らしは面倒だな」
キッチンに立つ俺は何気なくつぶやく。
「まぁ、自分で望んだわけなんだが……カップ麺でも食べよ」
学園に入学すると同時に俺は学園に近く、実家より離れたアパートを借りて生活をしている。実家から登校するということも可能だが、俺は朝が弱い。俺は両親に、家事のある程度まではできるということでこうして一人暮らしをさせてもらっている。
生活費など家賃は実家が払ってくれているが、それ以外は自分で稼がないといけない。
学園入学してからはバイトで自分のお小遣という形で生活をしている。
昼飯をカップ麺で済ませ自分の部屋まで戻る。そしてベットに寝転がる。
「……」
VBをプレイしているときにふと思うことがある。架空魔物やプレイヤー同士で戦うことで自分が強くなっていく。強くなっていくのはVB上にある自分のデータ。リアルではまったく成長しない。
架空魔物と対峙するときたまに感じる恐怖。あれが現実化し、俺の目の前に出てきたらVBと同じように戦うことができるのだろうか?
おそらく、それはできない。そんな勇気や力はない。知識や感覚みたいなのはあるが、それでも常識的に勝てない。無謀に戦うと死ぬだけだ。
プレイヤーと戦うということはVBであまりしない俺だが、現実の中ではしたくない。相手を傷つけるという罪悪感。
一人暮らしをして少しは成長しているつもりだが、まだ俺は臆病なままなのかもしれない。
そんな思考をしながら横になり、昼寝をする。
夢というのはいつもうろ覚え。たまにその内容を覚えていることもあるし、そうでないときもある。まぁ、ほとんどが覚えてないほうだ。今回は自分が起きている感覚だった。
「夢……だよな?」
辺りを見渡すと、いつも通っている学園の屋上に俺はいた。当たりの景色は普段通りだが、何か違和感がある。さっきまで昼寝をしていたはずだよな。
「ッ!なんだこれ?」
その違和感は空にあった。雲一つない青い空。その青い空間の一部が赤く染まっていた。赤というより燃えているような色をしていた。
「燃えている空?不気味だな……あれ?」
急に眠気が襲ってきた。
俺の体は地面に倒れこむ。
携帯電話の着信音が部屋に鳴り響く。目が覚めてしまった。
「誰からだ?」
携帯電話の画面を見ると『宮野和香』。俺は通話ボタンを押す。
「もしもし~翔?」
「どうした?買い物に行っているんじゃないのか?」
「そうなんだけどね~。今、寝てたでしょ?」
なんで俺がこの後昼寝をしようと知っている?この部屋に隠しカメラみたいなのを仕掛けているんじゃないかと疑問が浮かぶ。まぁ、気のせいかもしれない。
「一日を無駄にしてるんじゃないぞ?睡眠をとって疲労を回復してるんだ」
「まぁ、どうでもいいかな」
どうでもいいなら、何の用だ?
「今、空見える?」
唐突にそんなことを聞いてきた。空?
「え?なんかあったのか?」
「なんか不気味な感じなのよ」
「不気味?」
言われて窓を開ける。紅の色……いや、燃えるような夕焼けみたいな感じだった。今が夕方ということは……時計の針は夕時を指していた。結構寝たな。
「ああ、確かに不気味だな。でも、こんな空稀に見るもんだろ」
「そうかもね~。あ、そうそう。私今日VBできないから。じゃあね~」
「あ、おい……切れたし」
一体何が言いたかったのだろうか?まぁ、いいか。
休日の時間は過ぎるのが早いと実感する。というより寝てただけなんだが。
「さっきの夢はなんだったんだろうな」
夕方がすぎて夜が訪れていた。夢にでてきた灼熱の空とさっきの夕方の空が似ていたという感じがした。気のせいかもしれないのかな。
「まぁいいか」
今日もまたVBをプレイする。
和香はログインしていなかった。適当にしていてやめて、寝ることにした。
ちょっと文が変なので後で治すかもしれません…。