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創作意欲


ガクンと体が後ろに引っ張られた時は重量を失ったかと思った。


そして地面に倒れて、雨具を打つ雨の音を聞いていた。

それがとても心地良かったんだ。


「お前なんかに使う税金はねぇからな、とっとと死ねよ」


いきなり聞こえたその声があまりにもミスマッチで、僕は思わず笑ってしまった。


声を出して笑うなんて、お母さんが死んだ知らせを聞いた時以来だ。




—————————




「え、治療は受けないの?」

その問いに僕は頷いた。


「記念に、取っておきます」

そう言うと岡田さんは不思議そうな顔をした。

彼の顔はボテロの描いた単調で感情の読めない肖像画みたいで、僕はおかしくなってしまった。

すると岡田さんは慌てたように目を逸らした。


殴られたのが左側で良かった。

右側にはお気に入りの歯があるからね。


しかし、凄かったな。

大澤さんの表情、とても良かった。

興福寺の木造金剛力士像みたいだったな。

木造金剛力士像は左手を構えているけど、それに匹敵する迫力だった。


シャツが破れても突進しようとして来るんだもの。

脳にこびりついて離れないよ、何度も思い出してしまうんだ。

ここに紙とクレヨンがあれば描き出せるのに。


黒で全体を描いて、集中線みたいにして迫力を演出するんだ。

それで真ん中の胸部分には赤と、更にその中には青で妹さんに見立てた何かを描き入れる。


創作意欲が湧き上がって来る時ほど楽しいものは無い。

今僕が1番描きたいのは彼だ。





コン、コンと重たく、気怠そうにノックする音が聞こえた後、僕の返事を待たずに扉が開いた。


あからさまに不満そうな顔をした大澤さんが室内に入って来る。

背後から誰かに背中を押され、彼は顔をピクリと引き攣らせた。


僕は笑顔で出迎える。

まだ彼とは話し足りなかったから、また会えて嬉しかった。

だって彼は他の人とは違って、包み隠さず本音で僕と接してくれるから。


「殴って悪かった」

そう言うと鏡に向かって鋭い目を向けた。

この言葉は誰かに指示された“セリフ”なんだろう。


「僕は、フェンタニルの、毒性が強いと知ってて、お酒に混ぜて、女の子に飲ませました」


そう言うと大澤さんは僕に目を向けた。

やっぱり彼は良い顔してる。


「約束、ですもんね、本当の事を、言う」


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