第5話・スキル説明と天使の苦悩
「……すてーたすおーぷん」
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《ステータス》
ネーム:セレネ=スノウローズ
種族:人間
分類:人類種
性別:女性
状態:――
所持金額:——G
〈スキル〉
・アイテムボックス
・鑑定
・空蹴
・影魔術初級
・血の渇き
〈アーツ〉
〈スペル〉
○影魔術
ー初級
・シャドウ
〈装備〉
・不思議なワンピース
〈称号〉
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(ふんふん、色々書いてある……)
セレネがぼんやりしながらステータスの書かれた画面を見ていると、天使が何かを呟く。
「管理者権限を使用……プレイヤーネーム【セレネ=スノウローズ】のステータスの閲覧を申請……」
「……? どうかした?」
天使の不思議な言動に、セレネはそう問いかける。
「ステータスは基本、本人以外には見ることが出来ないようになっている。だから、管理者権限を使って閲覧しようとしているだけだ」
「なるほど、プライバシー保護……」
「まあ、間違ってはいない……」
天使はそう言いながら、天使の前に現れた画面を操作している。
せっかくだからとイスを立ち、天使の隣まで移動して画面を覗き込んでみる。
しかし、そこには何も書かれていない。
「なんなんだこれは⁉︎」
突然、天使が大きな声を出してイスから勢いよく立ち上がった。
そして、耳元で叫ばれたセレネは、耳に大ダメージを受けた。
「あの駄女神どもが! どうしてこんなふざけたものを……」
天使は叫んだ後、頭を抱えて唸り出した。
少しすると、天使はセレネの方に向き直す。
「今から、これらのスキルについて説明していく。はぁ……」
そう言うと、天使はため息をつきながらイスに座り直した。
セレネも同じように、さっきまで座っていたイスに座り直す。
「ミルクティーを飲んで少し落ち着こう……ふぅ。それじゃあ話すとするか」
天使は一息ついて、話を再開した。
「上から順番に説明……にしようと思ったが、まずは2つ目の『鑑定』からだ。このスキルは、まあきっと知っているだろう。ファンタジー作品御用達のスキルだからな。それじゃあ、スキル『アイテムボックス』を鑑定してみてくれ」
「……どうやって?」
「しっかりとイメージすれば、スキルを使うことが出来る。しかし、最初は難しいだろうから、声に出してみろ」
その説明に、セレネはこくりと頷いた。
「「鑑定』」
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《鑑定》
スキル名:アイテムボックス
分類:アクティブ
等級:——
レベル:1
属性:——
クールタイム:10s
〈効果〉
異空間にアイテムを収納することが可能になる
レベルに応じて、収納できる容量が変化する
『異邦人のみが所持している不思議なスキル』
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「おー」
「成功したようだな。スキル『鑑定』では、そのようにスキルやアイテム、またはモンスターといった様々なものを鑑定することができるスキルだ。それでは次のスキルを鑑定しよう」
(異世界流三種の神器のうち、2つが出てきた……この2つは、最初からプレゼントされるんだ)
セレネはそんなことを考えながら、言われた通りに次のスキルを鑑定した。
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《鑑定》
スキル名:影魔術初級
分類:パッシブ
等級:レア
レベル:——
属性:影
クールタイム:——
〈効果〉
魔力を消費して、影属性の魔術を使用できるようになる
魔術を使用するには、スペルを習得する必要がある
しかし、まだ初級であるため、初級魔術しか発動できない
『影を操りし魔術師の卵よ、魔術の神秘を追求せよ』
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「魔術……!」
「そう、このスキルは魔術を使うためのものなんだが……影魔術、これは特殊な属性だ。この属性は、通常では入手することが難しいんだ。まさかこれも入手するなんて……」
天使は眉間を押さえながらそう言った。
「まあいい……それじゃあ次のスキルに移ろう」
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《鑑定》
スキル名:空蹴
分類:アクティブ
等級:コモン
レベル:1
属性:無
クールタイム:30s
〈効果〉
発動すると、空中を蹴ることができるスキル
レベルによって回数が変化し、現在の最大回数は1回
『空を蹴り回り、敵を翻弄しろ!』
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「そうだな……このスキルは、後で実際に試してみよう。先に最後のスキルだ」
「はーい」
セレネは元気よく返事をした。
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《鑑定》
スキル名:血の渇き
分類:パッシブ
等級:ユニーク
レベル:——
属性:特殊
クールタイム:——
〈効果〉
人類種に対して、身体能力が大きく上昇する
代償として、一定時間、人類種を殺害しない場合、殺人衝動にかかる
殺人衝動は、人類種を殺害しない限り治らない
『血を飲め、命を狩れ。渇きを癒せ、心を満たせ』
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「どうしてこのスキルを引いたんだ……このスキルは、いわゆる悪魔契約みたいなものだ。強大な力の代償として、大きなデバフを受ける、そういった類のものだ。このスキルがある限りは、まともにプレイすることに苦労するだろう」
(強大な力……代償………………)
「……いい」
「……ん?」
「かっこいい!」
「………………そっかぁ」
セレネの言葉に、天使は諦めたかのようにそう呟く。
そして、天を仰ぎながら頭を悩ませ始めた。
「よし! それじゃあさっき言った通りに、スキルを試そうと思う」
数分後、天使がそう言ってきた。
(何のことだろう?)
そう思ったセレネは少し頭を悩ませると、『空蹴』のことだと思い出した。
セレネは遅れて、天使の言葉にこくりと頷く。
その様子を見て、天使は再び指をパチンと鳴らした。
世界が一変する。
あれだけ澄み渡っていた青空は、暗雲が垂れ込み、空を覆っている。
花が咲き乱れていた地面は、ヒビが入った石造の地面に変わる。
小鳥の鳴き声は一切聞こえなくなり、空間が静寂で満ちた。
セレネたちが立っていたのは、暗黒時代にあったような、コロッセオの中央であった。
「せ、世紀末……」
「戦いの場は、こういうのでないと」
天使は、この光景に若干引いていたセレネに向かって、そう言った。
「天使じゃなくて……悪魔じゃん……」
「私たちは貴女たちが想像する天使とは少し違ってね……私はこういったのが結構好きなんだ」
そう話しながら周囲を一瞥すると、天使はニヤリと笑った。