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第12話・冒険者ギルド、そして魔力

町の中に戻ってきたセレネとナビィは、まったりと歩いていた。

ナビィは色々なお店に興味津々であり、ときどき窓から店内を覗いている。

そんなナビィに、セレネは声をかける。


「それで、どこに行けばいいの?」


セレネがそう問いかけると、ナビィは胸を張りながら答える。


「ふふん! それはねー……冒険者ギルドだよ!」


「ふーん。そっか」


「え、反応薄くない? セレネちゃんから聞いてきたのに……」


セレネはナビィの答えに対して、あっさりとした返答をする。


(冒険者ギルド、ねぇ……テンプレといえばテンプレだけど……)


考え事をしながら、セレネは歩みを進めていった。


「ちょ、おーい、セレネちゃーん?」






「とうちゃーーーく!」


『冒険者ギルド』と書かれた看板がすぐ目に入る、比較的綺麗な建物の前にセレネたちはいた。

セレネの身長より30センチほど大きな両開きの扉が全開になっており、ギルドの中では、武装をした多くの人々が談笑したり、掲示板らしき物を凝視していたり、ジョッキをぶつけあって乾杯したりしている。

奥にはいくつかの受付があり、綺麗だったり可愛らしい女性が、制服を着て立っており、冒険者に話しかけられたりしている。


まさに、セレネが想像していた通りの冒険者ギルドである。


「ナビィ、それじゃあ入るよ」


ギルドの中に進んでいくと、周囲の視線が一気にセレネに集まった。

ただ興味を示す者もいれば、好奇な目を向けてくる者、そして、セレネを見下す様な視線を向ける者もいる。


セレネは立ち止まって辺りを一瞥すると、自身に注がれる視線を無視して歩き始めた。


「うわぁ……みんな、すごいセレネちゃんのこと見てるね……こわぁい……」


「周りよりも遅れて来たワタシが、ただ珍しくて気になってるだけでしょ、どうせ」


ズカズカと進んで行くと、セレネは空いている受付に並んだ。


「冒険者登録、よろしく」


「はい、冒険者登録ですね、かしこまりました。少々お待ちください」


セレネに声をかけられた綺麗な顔立ちをした受付嬢は、肩ほどまでの黒髪を揺らしながら、淡々と作業をこなしだす。

ここの列だけ空いていたのは、この受付嬢の愛想が足りないからなのか、愛想の足りなさとその綺麗な顔立ちが相まって、相手に冷ややかな印象を与えるからなのか、セレネは黙々と資料を整理する受付嬢を見ながら、そんなことを考えた。


「お待たせしました。それではこちらの書類に、必要事項を記入してください。ペンはこちらにございます」


その言葉にセレネは小さく頷くと、ペンを手に取って書類に目を向けた。

名前や種族、主な戦闘方法などを確認しながら書いていく。


少しして、全て書き終わったセレネはペンを置いた。

そして、書類を受付嬢の方に向けて差し出す。


「それでは確認させていただきます。名前、セレネ様。種族、人間……はい、確認が終わりました。それでは次に、冒険者証の作成を行います」


そう言うと、受付嬢は占いでよく使う様な水晶玉をどこからか取り出した。

そして、水晶玉の土台の部分に資料を差し込む。


「こちらは、個人の魔力を登録して、本人以外の使用が不可能となるカードを生成することが出来る魔導具となっています。それでは、こちらに手を置いてください」


(えーと、魔力? それに、魔導具? 急にファンタジー要素が……)


唐突な情報量の多さに、セレネは困惑して思わず水晶玉を睨みつけてしまう。

それを見た受付嬢が、どうしたのかと声をかける。


「セレネ様、どうかされましたか?」


「……魔力について、教えて」


セレネのその反応を聞いた受付嬢は、少し訝しんだ後、納得した表情を浮かべた。


「もしかして、異邦人の方ですか?」


「ん、そう」


「それで魔力にあまり……かしこまりました。それでは魔力についてご説明させていただきます。魔力とは、私たちの体の中に存在するエネルギーです。これは、空気中にある魔素、というものを体内に取り込んで変換することによって生じています。ここまでは大丈夫ですか?」


(魔力、は……元々が魔素で、それを体内で変換……なるほど……)


セレネは受付嬢の問いかけにこくりと頷く。


「それでは続けますね。魔力の利用の代表的な例は、魔術の行使です。しかし、魔力は生きていく上で不可欠となるものです。実際のところ、魔力は全ての行動で使用するため、不足した場合には体が動きにくくなったり、最悪の場合、気絶することもあります。冒険者の方々の中で1番と言って良いほど多い死亡原因は、魔力の不足、枯渇です。魔術を行使する際は、自身の魔力の残量に最大限の注意を払ってください。って、異邦人の方々は死亡した場合でも、復活することが出来ましたね。失念していました。それでも、事故が起きない様に気を付けてください」


受付嬢は説明の途中、どこか憂いのある表情を浮かべたが、すぐに仮面を被ったような表情に戻った。


「それと……魔力を保有するのは、全ての生物です。つまり、魔術を行使してくる魔種も、いるということです。そのことをどうかお忘れなく。以上で、魔力についての説明を終わらせていただきますが、よろしいでしょうか?」


「……大丈夫」


(魔種が魔術を……つまりは初見殺しには気を付けろ、的な感じなのかな……)


「それと、魔導具についても簡単にご説明致します。魔導具とは、魔力を用いることで動かすことが出来る機械などの総称です。主に、攻撃手段や防御手段のアイテムとして、多くが利用されています。例を挙げると、魔力を流すことで火を放つことのできる剣や、結界をその場に作り出すことのできるペンダントなどがあります。そして、そのほとんどが古代の遺物や、ダンジョンなどから入手出来た異物――アーティファクトと呼ばれるものになります」


受付嬢は水晶玉に軽く目を向けた後、再び話し出した。


「ここにある、この魔導具もアーティファクトの1つ……ではなくそのレプリカです。こちらは、数千年ほど前に遺跡から発掘されたアーティファクトを、現代の技術で再現した物となっています。とはいっても、このレプリカが作成されたのも数百年前なので、同じアーティファクトのような物ですね。今でもこの魔導具は、どこのギルドでも重宝されています。っと、少し話が脱線してしまいました、申し訳ございません」


話に一区切りが付いた後、受付嬢は求められていない話をしてしまったと、セレネに頭を下げる。


「大丈夫。面白かった」


セレネはそれだけを呟くように伝えた。

その返事を聞いた受付嬢は、どこか安心した表情を見せた後、すぐに顔を引き締めてから軽く咳払いをした。


「それでは改めて、こちらの魔導具に手を置いてください」


セレネは、言われた通りに手を軽く乗せる。

すると、手のひらから何かが水晶玉に流れていくのを感じ取った。


少しすると、小さな機械音が聞こえたかと思うと、水晶玉の土台の部分からカードが出てきた。

受付嬢はそのカードを手に取ると、確認してからセレネに差し出した。


「こちらがセレネ様の冒険者証となります。冒険者であることの証明以外にも、身分証明書にもなるため失くさないようにお願いします。次に冒険者ギルドについてのご説明を致しますが、聞いていかれますか?」


カードを受け取ったセレネは、「ええ」と答えた。


「それでは冒険者ギルドについて――」

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