第5話「オーディション開催」
普通の宿屋の一室。
勇者がぼーっとしている。
はぁ〜いつもの感じね、との表情を浮かべた側近ユニ、声をかける。
ユニ「勇者様、そろそろパーティのオーディションをしたいと思うのですが。」
勇者「うん、いいよ〜。てかこの間のパーティメンバー、報酬もらったらさっさと別パーティに参加してんだけど、
あれどう思う?」
ユニ「いやはや、なんとも。よくある風情で。世間の風は厳しって感じですかね〜。」
勇者「俺、こんなに魅力ある勇者なのに、どーしてかなー?」ハナホジホジ〜。
ユニ「で、パーティメンバーのオーディション、いつにしましょう?」
勇者「いつでもいいよ〜。」
ユニ「どこにしましょう。勇者と語る以上、ちゃんとした会場の方が良いかと。」
勇者「そだね〜。」
ユニ「ワタクシの方で決めてもよろしいでしょうか。」
勇者「うん、まかせた〜。」
ハナボジボジ〜。
日常。
いつもの日常。
こらえるのだ。
がんばるのだ。
いつもと同じ日常の繰り返しを続けていけば、職にあぶれることもなく、生きていける。
窓の外からぽかぽかとした陽気が室内に流れ込んで来る。
何を思ったか、剣をつかんだ勇者がふらりと立ち上がりドアに向かう。
ユニ「どちらへ?」
勇者「剣の練習をして来る〜。勇者たるもの日々の鍛錬を欠かせてはいけないし〜。」
ユニ「そうですね〜、いってらっしゃいませ。」
ひとり室内にぽっつーんと残った側近ユニ。
はあ。
ま、いいか。
とにかく魔王討伐パーティ選別のためのオーディションを行わなければ。
日時。
場所。
募集職種内容。
期間。
報酬。
労災保険。
生命保険。
日々の細々な雇用条件等々。
うーん、決めることがいっぱいあるけど、日時と場所以外は基本同じのコピペ感覚。
とくかく日時と場所以外を空欄にして、とにかくギルドに相談だ。
出待ち「きゃー!素敵〜!」
入り待ち「勇者様最高〜!」
追っかけ「私を見て〜!」
勇者「ふん! ふん! ふん!」
ユニが宿を出ると、うちの勇者が道筋で剣の練習をしているのが見える。
『勇者』という名前の職業だけで、勝手な妄想を抱いている『出待ち入り待ち追っかけ三姉妹』がキャーキャー言ってる。
ひどいわ。
陰で側近の私がどれだけ働いて準備している事か。
ま、いいか。いつものことだ。
この仕事があることで、自分は失業しなくて生きていける。
とにかく明日、ギルドに言って、早くオーディション会場決めなくては!