第3話「トイチは怖いよ」
はいはい、毎度どうも。
公共バンク勇者様専用討伐ローン担当のトイチでございます。
はー、そうですか。
魔王との戦いに引き分け、引き分けでしたか。
それは残念、ご苦労様でしたー。
次の討伐資金確保の申し込みですね〜。
あ、これがギルドの証書。
チラッ、チラッ。
はい、受諾しました。
今回はおいくらに? え? あ、はいはい。承知いたしました。
討伐達成の際に、ギルドから支給される現金、建物、領地で全借金を相殺という事で。
ええ、承知いたしました。
討伐失敗で負けて敗者になった場合、これまでの借金総額が、あ、こちらになりますね〜。
現金一括が望ましいのですが、無理でしたらトイチの借金長期返済ローンもございます。
え? 引き分けの場合ですか?
えー、引き分けの場合、決済が次回に先送りになりますので、特に返済の心配はございません。
はい、引き分けオプション継続でよろしいですね。
書類をパラパラ。
これがギルドの証書、
これが勇者様の委任状、
で、ここに側近様のご署名を。
書き書き。
はい、これで契約成立です。
現金、今持って帰りますか?
あ、はいはい、こちらになります。
ズシリッ!
お気をつけてお帰り下さいませ。またのご利用、お待ちしていまーす!
側近ユニは、硬く誓うのであった。
「何が何でも、絶対に引き分けに持ち込むぞ!
程よいところで新人側近見つめてちゃっちゃと業務移譲すれば、自分は安泰!
そのあとは、ゆっくりスローライフ!」
吹く風が頬に当たる。何とも冷たい風であった。