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前世が最強賢者だった俺、現代ダンジョンを異世界魔法で無双する! 〜え、みんな能力はひとつだけ? 俺の魔法は千種類だけど?〜  作者: キミマロ
第二章 賢者とインフルエンサー

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閑話 予兆

 詩条カンパニーの面々がカニ料理を満喫していた頃。

 新沢在一は横浜にある炎鳳の本部へと戻ってきていた。

 彼はビルのエントランスに入ると、すぐさま受付の女性に呼び掛ける。


「鏑木君、これからアポ取れるか?」

「鏑木社長ですか?」

「せやせや。この間、勝手に社長室に入ったら事前にアポ取れってうるさく言われてなぁ。せやからこうしとるってわけや」


 新沢の顔を知っていた受付の女性は、すぐさま予定を確認した。

 しかしあいにく、鏑木の今夜の予定はすべて埋まっていた。

 そもそも、東日本最大のカンパニーの社長である。

 今日会いたいと言って、すぐに会える人間ではないのだ。


「社長はこれから会食の予定がありまして……」

「んなもんキャンセルや、どうせ相手は実権もない政治家やろ?」

「そう申されましても……」

「……どうした?」


 ここで、エレベーターから鏑木が降りてきた。

 彼は受付の女性に絡んでいる新沢の姿を見つけると、すぐに話しかける。


「ちょうどええとこに! 鏑木くぅーん、ちょっと顔かしてや」

「聞いていると思うが、私はこれから会食の予定だ」

「与党の先生方やろ? どうせ、連中が経費で酒飲みたいだけやがな。こっち優先しとくれや」

「私の時間を取るだけの理由はあるのか?」

「おもろいチップを拾った」


 チップという単語を聞いて、鏑木の目つきが変わった。

 彼はすぐさま受付の女性に告げる。


「空いている会議室はあるか? できればクラス3以上だ」

「それですと……22階の第6会議室が開いています」

「そこを二時間押さえろ、誰も入れるな」

「はい!」

「それから、会食の方もキャンセルを」

「かしこまりました」


 こうして鏑木は、すぐさま新沢とともにエレベーターに乗って移動した。

 そして目的の会議室へとたどり着くと、すぐさまドアを閉める。

 微かに空気の抜けるような音がして、部屋はほぼ完全に密閉された。

 

「この部屋は防音で窓もない。安心して話せる」

「なかなかの警戒ぶりやないの」

「当然だ、物が物だからな」


 そういうと、鏑木は早く出せとばかりに掌を差し出した。

 新沢はポケットに手を入れると、宝石箱のような小さな箱を取り出す。


「この中や」

「どれ……これか」

「見た目は普通のチップと変わらん。でも、調べてみればすぐにヤバいもんだってわかるはずや」

「すぐに研究班にやらせよう。しかし、これがあるということは……例の兵器がすでに動いていたのか」


 鏑木の問いかけに、新沢はゆっくりと頷いた。

 そして、やれやれと肩をすくめて言う。


「俺もびっくりしたで。完成までにはあと二年か三年はかかるって言われてたっつーのに」

「ここにきて技研の開発速度が急速に上がっているようだな」

「連中も焦っとるのかもしれへん」

「だが何のために? あのような倫理に反する兵器、開発してもすぐに表には出せないだろう」


 ダンジョン出現前と比較すると、日本人の倫理観は大きく変容していた。

 国がより強力な兵器を保有することに対して、国民の大半は肯定的なのだ。

 自らの生活を守るためにはやむを得ないと考えているのだろう。

 しかし、人の脳細胞から生み出した人工知能を使った殺戮兵器というのはあまりにも冒涜的。

 世論形成なども含めて、容認されるまでに相当な年月がかかるはずだ。

 ゆえに、開発を急ぐ必要性もあまりない。


「これは推測やが……。近いうちに、どこかが溢れるかもしれへん」

「国防がそれを予測して、対抗するために兵器を作っていると?」

「せや。ダンジョンが溢れて国民の生活が脅かされたところで、例の兵器を投入して事態を解決する。理想的な展開や」

「それはそうだが、まずダンジョンが溢れることをどうやって予測する? 最近ようやく、数分前に検知できるようになったらしいが」


 ダンジョンからモンスターが溢れ出すスタンピード。

 これを予測する技術は非常に難易度が高く、つい数か月ほど前にようやく、ごく微細な電磁場を検知することで直近の予測が可能となったばかりだ。

 国防がすべての技術を一般に開示しているとは思えないが、それにしてもはるか以前からの予測となればあまりにも高度な技術である。


「それについてはわからん。けど、アーティファクトっちゅうものもあるからな。今の世の中、ありえへんってことがありえへん」

「それもそうか」

「せやから、備えだけはしとかんとな」

「わかった。今のうちに『辰屋』とも話を進めておく」


 辰屋というのは、東日本において第二の勢力を誇る大手カンパニーである。

 少数精鋭主義の炎鳳に対して、とにかく人を増やす方針の辰屋は組織力においては大きく炎鳳に勝っていた。

 

「ところで、例の少年の方はどうだったんだ? もともとはそっちを見極めることが目的だっただろう」

「わからん。強いていうと、今のところ敵ではないことぐらいやな」

「お前がわからない? どうせ、はなちゃんに連れて行ったんだろう?」

「それでもわからへんかったんや」


 新沢の話を聞いて、鏑木はほうと驚いた顔をした。

 新沢が人の正体を見極められなかったことなど、滅多にあるものではないのだ。


「ゆっくり時間をかけて、徐々に化けの皮剥がしたるわ」

「……まるでストーカーだな」

「鏑木君も興味あるくせに、散々な言い方やで」


 やれやれと嫌みっぽくため息をつく新沢。

 するとここで、鏑木が思い出したように言う。


「そう言えば、黒月はどうだった? 元気にしていたか?」

「相変わらず不愛想やったで。ま、元気やったわ」

「そうか。異変がないならばいいんだ」


 そういうと、満足げに頷く鏑木。

 彼はそのまま、ゆっくりと会議室を後にするのだった――。


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あっという間に話し終わってしまった 2時間押さえられた会議室「……」
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