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前世が最強賢者だった俺、現代ダンジョンを異世界魔法で無双する! 〜え、みんな能力はひとつだけ? 俺の魔法は千種類だけど?〜  作者: キミマロ
第二章 賢者とインフルエンサー

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第三十七話 カニ料理!

「おおぉ、カニだ!!」


 その日の夕方。

 俺たちは来栖さんの歓迎会のため、市の中心街にあるカニ料理店へと来ていた。

 店の入り口の上に置かれた、どでかいカニの立体看板。

 その迫力に、俺はたまらず息を飲む。

 この店、すっごく有名だけど高くてとても手が届かなかったんだよなぁ。


「お兄ちゃん、ここで大丈夫なの?」


 那美が看板を見て震える。

 予想以上の高級店にすっかりビビってしまっているようだ。

 そうだよなぁ、うちはカニと言えばカニカマだもんな。

 本物のカニなんて、那美は産まれてから一度も食べたことがないかもしれない。

 いや、俺ももしかして食べたことがないのか?

 まだ父さんと母さんが生きていた頃、一度だけ食べさせてもらったことがあるようなないような……。


「……ヤバい、俺も急に怖くなってきた! カニ、食べたことないかもしれない!」


 食べたことがないと思うと、急に目の前のカニの看板が怪獣のように見えてきた。

 カニカマは美味しいけど、カニって本当に美味しいのか?

 みんな美味しいって言ってるけど、所詮は人の感想だ。

 案外、食べてみたらまったく口に合わないとかかも知れない。


「なにやってんだか。ほら、行くわよ」

「あ、ああ。神南さんは、この店には来たことあるの?」

「何回かね」

「すごーい!!」


 慣れた様子の神南さんに、尊敬の眼差しを向ける那美。

 すると神南さんは、俺を見ながら笑って言う。


「那美ちゃんも、お兄ちゃんに連れて来て貰えばいいんじゃない?小市民ぶってるけど、何だかんだ最近は稼いでるはずだし」

「いや、討伐者は不安定だから貯金とか投資とかしておかないと」

「桜坂先輩、そんなんじゃモテないですよ~?」


 俺の肩に手を置き、来栖さんが笑いながら言った。

 それに同調するように、七夜さんがふふっと微笑む。


「男は甲斐性、可愛い妹にたまには奢るべし」

「黒月先輩に言われちゃったら、反論できないじゃないですか」


 こうして自動ドアを潜ると、店内はとても広々としていた。

 正面には大きな水槽が置かれていて、日本庭園のようなスペースもある。

 

「ご予約のお客様ですか?」

「はい、19時からの詩条カンパニーです」

「詩条カンパニー様ですね。お待ちしておりました、どうぞこちらへ」


 着物の袖を持ち上げ、すぐに案内してくれる仲居さん。

 やがて通されたのは奥の和室であった。

 床の間には掛け軸が掛けられていて、かなり高級感がある。

 この間の焼肉店とはまた違った路線で、いいお店だなぁ。


「久々のカニ、めっちゃ楽しみです!」

「どうぞどうぞ、たくさん食べてくださいね!」

「金出すのは社長じゃなくて俺たちだけどなー」


 微妙に不満げな顔をする樹さん。

 すぐさま鏡花さんはあははと笑って誤魔化した。

 すると今度は、神南さんが何やら警告するように言う。


「たくさん食べて良いとか言わない方がいいわよ」

「どういうことだ?」

「見てればわかるわ」


 そう言っていると、仲居さんが大きなカニを運んできた。

 おー、すっごいな!

 甲羅の部分だけで、俺の顔よりデカそうだ。

 足も当然ながら太く立派で、かなり食べ応えがありそうに見える。


「おー、一匹丸ごと!」

「カットもいいですが、この方が楽しいかなと」

「社長はよくわかってる。カニは黙々と自分で身を出すのがいい」


 フォークのような器具を使って、カニのみを取り出す俺たち。

 しばし、言葉のない時間が続く。

 やがて綺麗に身を取り出した俺は、それをカニ酢につけて口に入れた。

 すると――。


「おぉ……これが本物のカニ!!」

「うまぁ……!!」


 初めてのカニは、身が柔らかくほぐれて独特の甘みと旨みがたっぷりだった。

 カニ酢との相性も抜群で、濃厚な味が酸味でしっかりと引き締まる。

 カニカマも美味しいけど、本物のカニはやっぱり格別だなぁ……!

 このほろりとした食感がたまらない。

 那美もカニを食べながら、恍惚とした表情をしている。


「やっぱカニ最高っすね!」

「あ、もうなくなっちゃった!?」

「はえーな、おい!」


 いつの間にか、あのでっかいカニが食べ尽くされていた。

 これが、神南さんの言ってた見てればわかるの意味か……!

 どうやら咲さん、見た目に似合わずなかなかの大食いのようである。

 

「次はカニ刺し下さい!」


 咲さんの注文に応じて、今度は半分に割られた生のカニが出てきた。

 へえ、カニって生でも食べられるのか……。

 これまた初体験の俺と那美は、ゆっくりと足を口に運ぶ。

 すると――。


「んん、うまい!」

「こっちの方が好きかも……」


 弾力のある身がぷりぷりとしていて、さらにとろけるような甘さ。

 こりゃ、茹でたカニとはまた別のおいしさがあるな。


「カニ刺しはカニ味噌をつけて食べるのがおすすめなのですよ」

「へえ……! ん、こりゃすごい!」


 鏡花さんの言ったとおりにすると、再び味わいが変わった。

 カニ味噌の苦みが独特のコクと奥深い味わいを引き出す。

 そりゃ、みんなカニが大好きなわけだ。


「美味しいな、那美!」

「うん、連れて来てくれてありがとう!」

「お礼なら来栖さんに言ってくれ。今日は彼女の歓迎会だから」

「わかった。来栖さん、ありがとうございます!」

「いやいや、こんなかわいい子ならこっちも大歓迎ですって!」


 那美に頭を下げられ、照れくさそうに笑う来栖さん。

 そうしたところで、ふと那美が言う。


「しかし、お兄ちゃんの周りってだんだんと女の子が増えてない?」

「そうかな?」

「そうでしょ。神南さんに続いて二人目だよ」


 言われてみれば、詩条カンパニーの男女比はだいぶ女性に偏っている。

 まあでも、これぐらいならまだよくある範囲じゃないかな?


「言っとくけど、ハーレムには反対だよ。揉めるから」

「ぶっ!? いきなり何を言うんだよ!」


 那美の予期せぬ一言に、俺はたまらず吹き出してしまうのだった。

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