表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世が最強賢者だった俺、現代ダンジョンを異世界魔法で無双する! 〜え、みんな能力はひとつだけ? 俺の魔法は千種類だけど?〜  作者: キミマロ
第二章 賢者とインフルエンサー

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/73

第三十六話 戦う決意

「詩条に入りたい、ですか」


 来栖さんの申し出に対して、鏡花さんは何とも言えない顔をした。

 あれだけ人手不足で困っていると言っていたのに、意外な反応だ。

 てっきり、俺の時のように「ありがとうございますです!」ってなるかと思ったのに。


「うちは小規模ですけど、一応は攻略系のカンパニーですよ? 大丈夫ですか?」

「……はい!」


 しっかりとした口調で返事をする来栖さん。

 その表情は何かを決意したように精悍なものであった。

 ……しかし、攻略系って何だろう?

 俺が首を傾げると、神南さんが呆れたような口調で言う。


「カンパニーの分類よ。ダンジョンの攻略を主な収入源としているカンパニーが攻略系。ほぼすべてのカンパニーがそうだから、わざわざ言われることは少ないけどね。咲が所属してた明星企画ってのがちょっと特殊で、インフルエンサー系の芸能事務所みたいなとこだったのよ」

「そんなカンパニーもあるんですか」

「芸能人化してる討伐者って、結構いるからね。派手なイデアは映えるし」


 そう言えば、ネットで有名な討伐者の人とかも結構いたなぁ。

 代表例は千鳥の人たちだろうか。

 あのカンパニーはちゃんと攻略もしていたけれど、明星企画というのはより芸能方面に特化したところだったらしい。


「でも咲、ほんとにいいの? 戦うの苦手って言ってたけど」

「……逃げられないこともあるって、今回の一件で分かりましたから。だったら、向き合っていこうって決めたんです」


 いかに逃げようとしたところで、向こうから来てしまうのは避けられないものな。

 今回の誘拐事件で、来栖さんは改めてそのことを痛感したようだ。

 ……俺も前世で厄介ごとをいろいろと避けようとして来たから、最終的にそこに至るのはよくわかる。

 結局、力を付けないことにはどうしようもないことというのがあるのだ。


「…………明星企画の社長さんには、もう話はしてあるのです?」

「社長には、病院の検査が終わってすぐに話しました」

「なんて言われたんです?」

「言うだろうと思ったって」

「あの社長さんらしいのですよ」


 うんうんと頷く鏡花さん。

 やがて彼女は、大きく深呼吸をして言う。


「わかりました。後で書類を渡すので、まずはそれをきっちり読み通してほしいのですよ」

「それって……!」

「転籍を認めます。ようこそ、詩条カンパニーへ」


 一転して、柔らかく穏やかな表情を浮かべた鏡花さん。

 すぐさま来栖さんは深々と頭を下げる。


「ありがとうございます!」

「いえいえ、こちらとしても助かるのですよ。SNSに強い人が不在でしたからね」

「任せてください! 詩条カンパニーを盛り上げまくりますよ!」


 腕まくりをして、気合を入れる来栖さん。

 よしよし、これで詩条カンパニーも安泰だな。

 強力なSNS担当者も出来たことだし、人の応募も増えそうだ。


「さっそく、カンパニーの公式アカウントを任せるのですよ! 来栖さんは動画チャンネルもできますか?」

「はい、そっちもかじってます」


 そういうと、来栖さんは『クルクルの秘密基地』なるチャンネルを見せてくれた。

 流行りのショート動画を中心に投稿しているようで、既に登録者も五万人もいる。

 メインがつぶやきサイトでの写真投稿と考えると、なかなか大した数字だ。


「ほぉ、なかなかの戦闘力ですね!!」

「ショートで伸ばした数字ですけどねー、あはは」

「そんな有望な新人さんには……」


 そう言うと、鏡花さんは一拍の間を置いた。

 お、このながれはもしかして……。

 俺たちがちょっと期待を込めた目で鏡花さんを見ると同時に、彼女は勢いよく言う。


「先輩が、焼肉を奢っちゃうのです!」

「……何で先輩なのよ?」


 たまらず神南さんが声を上げた。

 俺もあちゃーとずっこけそうになる。

 いやいや鏡花さん、前は高い焼肉を奢ってくれたじゃないか。

 普段は節制して、使うべきところでパーッと使うのが信条だったんじゃないのか?

 俺がそんなことを思っていると、鏡花さんは申し訳なさそうに手を合わせる。


「えー、本来は私が奢るべきところなのですが。ここ最近、みんなの出勤が乱れがちで財政が苦しいのですよ」

「入鹿ダンジョンに潜ってから、けっこう大変でしたもんね」

「そうなのです。あのせいで、黒月さんもちょっと会社を休んじゃって」

「え? そうなんですか?」


 自分たちが休んでいたせいで、そのことには気づいていなかった。

 ひょっとして、新沢さん関連で何かあったのだろうか?


「はい。その、美人討伐者ってことで一部で人気が出ちゃったみたいで」

「あー……。ネット民に見つかったのね」

「ええ。もともとおにぎりチャンネルとかやってましたしね。黒月さんと今泉さんのペアはうちの収益の柱なので、休みがちになったのがかなり痛くて」


 とほほとばかりに、肩をすくめて小さくなる鏡花さん。

 むむむ、なかなかうちのカンパニーはうまくいかないなぁ……。

 何か、手っ取り早く財政難を解決する方法はないものか。

 いやでも、簡単にお金を稼げたら苦労しないしなぁ……。


「しゃーない、今回は私が奢るわ」

「ありがとうございます!」

「それと、カテゴリー3の本格探索もしましょ。咲も増えたことだし」

「ええ、そうだね!」


 こうして俺たちの今後の方針が、おおよそ定まるのだった。


読んでくださってありがとうございます!

おもしろかった、続きが気になると思ってくださった方はブックマーク登録や評価を下さると執筆の励みになります!

下の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にしていただけるととても嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ