表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世が最強賢者だった俺、現代ダンジョンを異世界魔法で無双する! 〜え、みんな能力はひとつだけ? 俺の魔法は千種類だけど?〜  作者: キミマロ
第二章 賢者とインフルエンサー

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/73

第二十七話 出発前の夜

 その日の夜。

 家のキッチンで、神南さんと那美が一緒に料理をしていた。

 戦いの前に美味しいものを食べようと言って、神南さんが押しかけて来たのだ。

 最近は神南さん、何だかんだとうちに来ることが増えている気がする。

 そのうち、居候にでもなってしまいそうな勢いだ。

 

「ふふふ、出来上がり!」


 鍋から大きなとんかつを取り出して、会心の笑みを浮かべる那美。

 おおー、今日はなかなか豪勢だな!

 綺麗なきつね色の衣が、何とも旨そうだ。

 

「こっちもできたわよっと」


 キャベツの千切りを終えた神南さん。

 彼女はそれをこんもりと山のようにお皿へ盛りつけた。

 全然自炊してないイメージだけど、けっこう上手いな……。

 綺麗に細切りにされたキャベツからは、包丁の扱いに慣れていることが伺えた。


「……何よその目は」

「神南さん、意外と料理できるんだなって」

「ダンジョン探索は長くなることも多いからね。料理ができないと、いっつも同じメニューを食べることになるもの」

「なるほど、それで」


 こうして話しているうちに、食卓に料理が並べられた。

 神南さんと那美も椅子に座って、みんなで手を合わせる。


「「「いただきまーす!!」」」


 まずは冷めないうちに、本日のメインであるとんかつを食べる。

 んんーー、こりゃいい!!

 衣がサクサクとしていて中のお肉がふわふわジューシー。

 噛めば噛むほど肉汁が出てきて、最高の味わいだ。

 どうやら薄い肉を何枚か重ねているようで、これが独特の食感とジューシーさを生み出している。


「うまい、最高だよ!」

「良かった! 神南さんに教えてもらったレシピなんだよ、これ!」

「へえ……」

「勝負事の前にはよく食べるからね。ちょっとこだわってるのよ」


 なるほど、とんかつで勝つという訳か。

 合理的思考の持ち主に見えて、意外とそういう験を担ぐようなこともするらしい。

 俺がへえっと思っていると、ここで那美がずいっと詰め寄ってくる。


「お兄ちゃん、明日はその山猫って人たちのところに行くんだよね」

「ああ、そうだよ」

「気を付けてね! 犯罪組織なんて、何をしてくるかわからないんだから!」

「もちろん! 必ず来栖さんを連れて、戻ってくるよ」


 俺はそう言うと、グッと親指を上げた。

 たとえ相手が誰であろうと、負けるようなつもりはない。

 いや、仮に負けたとしたって絶対に帰ってくる。

 お兄ちゃんとして、妹が帰れと言ったら絶対に帰るのが使命なのだ。


「ま、私も着いていくし新沢ってS級討伐者も参加するからまず大丈夫よ。性格は胡散臭い男だけど、実力は確かなはず」

「S級!?」


 世間知らずの那美でも、S級討伐者が凄いということは理解していたらしい。

 彼女は神南さんの方を見ると、びっくりしたように目を見開く。


「たまにニュースとかで聞く、あのS級!?」

「そ。おそらく今の私よりも強いはずよ」

「お兄ちゃんよりも?」

「間違いなく」

「自分には恐らくってつけて、俺の時は断言するのに悪意を感じるぞ」


 俺がそう言うと、神南さんは何のことだかとばかりに笑って誤魔化した。

 基本的にそんな悪い人じゃないけど、たまにこうやってからかってくるよな。

 何だか猫みたいな感じだ。


「それなら安心だね!」

「ええ。ただ、その山猫って組織もなかなか厄介そうだけどね。ちょっと調べてみたけど、結構有名な討伐者の誘拐とかもやらかしてるみたい」

「うわぁ……結構えぐいんだな」

「他に武器の密輸とかもしてるみたいね。最悪、アジトに行ったらマシンガン撃ってくるかも」


 イデア能力者だけでなく、現代兵器との戦いもありそうってわけか。

 俺の魔法なら対処はできるが、結構骨が折れそうだな。

 討伐者でも、素でマシンガンを受けたらダメージは入るのだ。

 機動服を着ていれば、ある程度は耐えられるはずだけど。


「ほんとに、大丈夫なの?」

「大丈夫だ。それに、俺たちが助けてあげないと今頃来栖さんは何されてるか分からないしな」

「その来栖さんって人は、どんな人なの?」

「ああ、那美はあったことないんだったっけ。小動物みたいな感じでさ、可愛らしい人だよ」


 俺がそう言うと、那美は何故かふむふむと考え込み始めた。

 その視線は何故か、神南さんの方へと向けられている。


「顔は可愛いの?」

「え? うーん、俺はそう思うよ」

「神南さんと比べてどう?」

「いやいや、なんでそんなことを!」

「だって、誘拐されてるのを助けるんだよ? ひょっとしたら、吊り橋効果で仲良くなっちゃうかも……!」


 興奮した様子で語る那美。

 来栖さんに迫られるところを想像した俺は、溜まらず顔が赤くなった。

 性格はちょっと癖があるが、あんなかわいい子に迫られたら悪い気はしない。

 桜坂先輩、マジ好きっすとか言われたら……なかなかいいな……。


「なにをいやらしい顔してんのよ」

「いや、別に何も!」

「ふぅーん……」

「神南さん、頑張らないと! お兄ちゃん流されやすいから、積極的にアプローチされたら落ちちゃうよ!」

「そうね……って、私は天人のことなんて狙ってないわよ!」

「またまた! 素直になりましょうよ!」


 ムキになって声を荒げる神南さん。

 一方の那美も、なかなか引き下がらない。

 あー、那美はいったん人の話を聞かない状態に入ったらほんと頑固だからな。

 こうして二人が言い争っているうちに、その日の夜は更けていくのだった。

【読者の皆様へ】

ブックマーク、評価はモチベーションアップにつながります!

ページ下部↓の【☆☆☆☆☆】から評価して頂けるとありがたいです!

また、カクヨム版もご愛顧いただけるとさらに嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
突入前の緩和のひとときととしてはほのぼので十分 この時点のまだ浅い関係で、身内の余計なお世話的ラブコメ要素をぶっ込まれると邪魔だなーと感じてしまう どうしても入れたかったとしても、匂わせ程度で良くない…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ