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前世が最強賢者だった俺、現代ダンジョンを異世界魔法で無双する! 〜え、みんな能力はひとつだけ? 俺の魔法は千種類だけど?〜  作者: キミマロ
第二章 賢者とインフルエンサー

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第二十四話 向山ダンジョン

 新沢さんと食事をした数日後。

 俺たちはとある山間のダンジョンへと向かうべく山道を登っていた。

 ここに来るまでに、既に電車やバスを乗り継いで約四時間。

 カンパニーを出た時はまだ朝だったのに、もう昼前になってしまっている。

 

「流石、人が滅多に来ないって社長が調べた場所だけのことはありますね」


 どこまでも続く深い山を見ながら、たまらず呟く。

 以前に撮影のために訪れた筒井原ダンジョン。

 あそこも山間だったが、この向山ダンジョンはそれをさらに上回っていた。

 ダンジョンへと通じている道も、あちらは二車線だったのにこちらは一車線。

 しかも、見た感じすれ違うことすらできなさそうな狭い道だ。


「あともうちょっとで着くみたいよ。ダンジョン前にはカフェもあるみたい」

「カフェ? こんなところに?」

「ええ」


 そう言うと、神南さんは地図アプリを見せてくれた。

 すると確かに、『山のカフェ アルペン』と記されている。

 立地はまさにダンジョンの前で、徒歩一分と言ったところだろうか。


「カテゴリー3ともなると、昔はかなり厳重に監視してただろうからね。ダンジョン関連の人だけ相手にしてても営業は成り立ったんじゃないかしら」

「なるほど……。この辺は何もないですし、需要は独占出来ますからね」

「とはいえ、今は管理法が確立されたからごらんのありさまってわけだけど」


 やれやれとばかりに両手を上げて、道路を見回す神南さん。

 かれこれ三十分ほど歩いているが、その間、車が通ったのを見ていない。

 なかなかの過疎っぷりだ。


「あ、見えて来たわ。へえ、いい感じじゃない」


 やがて現れたのは、大きなウッドデッキのあるログハウスであった。

 その軒先には『カフェ アルペン』と書かれた一枚板の看板が掲げられている。

 へえ、僻地にある割にはなかなかおしゃれな雰囲気だな。

 明かりもついていて、まだちゃんと営業しているようだ。


「ここで休憩しましょ。咲もまだみたいだし」

「そう言えば来栖さん、まだ連絡来てないんですか?」


 このダンジョン攻略には、来栖さんにも来てもらうことになっていた。

 彼女もまた野次馬には困っていたようで、誘うとすぐに応じてくれたのだ。

 そして今日、向山ダンジョンの最寄り駅で待ち合わせをしていたのだが……。

 しばらく待っても来なかったため、先んじてここまでやってきたという訳である。


「あの子、朝に弱いからね。たぶん寝坊でしょ」

「だとしても、そろそろ連絡が来るんじゃないですか?」

「そうね。でも、心配しなくて大丈夫よ。あの子が約束をすっぽかしたことは一度もないから。まして、今回はカンパニーを通してるわけだし」


 お互いにカンパニーに所属する討伐者同士なので、その辺は会社を通じてきちんとしてある。

 遊びの約束のように、ポーンとドタキャンされてしまう確率は低いだろう。

 性格的にも、来栖さんはたぶんそう言うことはしないタイプっぽいし。


「ま、待つことしかできないんだしのんびりしましょ」

「そうですね」


 こうして俺たちはカフェに入ると、来栖さんをしばらく待つこととしたのだった。


――〇●〇――



「ん、なかなか行けるわね。このアイス」


 ソフトクリームを舐めながら、心底満足げな笑みを浮かべる神南さん。

 そんなにおいしいなら、俺も後で頼んでみようかな。

 そう思いながらコーヒーをすすると、こちらもなかなか美味だった。

 苦みと酸味のバランスがよく、不快な雑味がほとんどない。

 僻地にあるから少し舐めていたが、けっこうこだわっている店のようだ。


「こっちもいけますよ」

「ほんと? なら食べ終わったら追加しよっかな」

「じゃあ、俺はアイスクリームを追加で」

「……なにそれ、真似してる?」


 神南さんはふふっと吹き出すと、からかうような口調でそう言った。

 俺が慌てて首を横に振ると、彼女はさらに笑いながら言う。


「そんなに否定しなくてもいいじゃない。というか、こうやって話してるとなんかデートしてるみたいね」

「デ、デデ、デート!?」


 予想外の単語に、声が裏返ってしまった。

 するとたちまち、神南さんが呆れたように言う。


「なに動揺してんのよ。…………まさかあんた、その年でデートしたことないの?」

「あるよ! 那美と地元の商店街で何度も!」

「妹を勘定に入れるな! つーか、討伐者やってたら学校でモテたでしょ。それでも彼女とかいなかったわけ?」

「俺、覚醒したの学校卒業した後だから」

「そりゃ哀れね」


 ぐっ、正確に心をえぐるような一言を……!

 キレッキレな言葉に、俺はたまらず胸を押さえて呻いた。

 すると反応が予想以上だったのだろう、神南さんは苦笑しながら言う。


「だったら、私がデートの練習ぐらい付き合ってあげてもいいわよ? 仲間だし?」

「べ、別にいい! それは那美で間に合ってる!」

「那美ちゃんだって、早くお兄ちゃんに彼女が出来て欲しいって思ってるんじゃないの? あの子、お兄ちゃんを独占したいってタイプじゃないでしょ」


 確かに神南さんの言う通りだ。

 那美はお兄ちゃんは誰にも渡さないという気質ではない。

 むしろ、いい人を見つけて幸せになってほしいという兄思いのいい子だ。

 ぐぐぐ、ここはプライドを折って神南さんにお願いするしかないのか……?


「呆れた。これまでさんざん一緒にダンジョン攻略したのに、たかがデートぐらいで大袈裟過ぎよ」

「それは……」

「まあいいわ。それより、咲はどうしたのかしらね? 流石に妙だわ」


 そう言うと、神南さんはスマホを取り出して電話を掛けた。

 そしてしばらく待つものの、やはり来栖さんは出ないらしい。

 

「おっかしいわね。いくらなんでも起きてるはずだし」

「カンパニーの方にも連絡しますか」

「そうね」


 どうにか来栖さんに連絡を取ろうとする俺たち。

 しかしその日、彼女に連絡が取れることはなかったのだった――。


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