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前世が最強賢者だった俺、現代ダンジョンを異世界魔法で無双する! 〜え、みんな能力はひとつだけ? 俺の魔法は千種類だけど?〜  作者: キミマロ
第二章 賢者とインフルエンサー

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第二十一話 とあるお店にて

「なかなかええやろ、この車」


 革張りの座席をポンポンと叩きながら、自慢げな顔をする新沢さん。

 流石はS級討伐者というべきか。

 移動のために彼が用意した足は、なんとリムジンであった。

 こうして、全身が沈むようなふかふかのシートに揺られること数十分。

 俺たちの街を出た車は、そのまま大阪方面へと向かう。


「おおぉ、すっごい!」


 やがて車窓の向こうに、大阪の高層ビル群が見えてきた。

 ダンジョンによってほぼ壊滅状態となった東京に代わり、大阪が日本の首都となっておよそ三十年。

 急速に発展を続けた大阪は、今ではかつての東京を凌ぐ都市になったと言われる。

 その街並みは非常に近未来的で、林立する高層ビルの数は数百以上。

 都市の中心部に向かって、さながら灰色の丘のようになっていた。


「わざわざ大阪まで来るなんて。よっぽどおいしい店があるんですか?」


 ここで神南さんが、ちょっと嫌みっぽい感じに尋ねた。

 ただ食事をするために何十分も車に乗せられたのが、お気に召さなかったらしい。

 すると新沢さんは、自信ありげに笑う。


「わいが関西に来た時の行きつけや。期待しとってええで」

「おぉ、S級冒険者の行きつけなら期待が持てそうなのですよ!」


 キラキラと目を輝かせる鏡花さん。

 この人も何だかんだ、美味しいものには目がないよなぁ。

 そんなことを思っていると、車は高速を降りて市街地の中へと入っていく。

 そして整ったビル群を抜けて、そのまま下町のような場所へと到着した。


「ここや」

「えっ?」


 リムジンが止まったのは、酷く古びた店の前だった。

 ところどころ塗装のはげた外壁に、これまた錆びのひどい看板が掲げられている。

 ――お好み焼き”はなちゃん”。

 それが、この店の屋号のようだった。

 看板の右下に『天下一品!!』などと書かれているのがこれまた古い。

 これ、平成時代どころか昭和時代の生き残りなんじゃないか?


「……あの、ほんとにここですか?」

「せやで。ここの豚玉が絶品なんよ」


 そう言うと新沢さんは勝手知ったる様子で店の暖簾をくぐった。

 間違いなく、このお店であるらしい。

 高級店を期待していたであろう鏡花さんのテンションが、露骨に下がる。


「うぅ、けっこう期待してたのですよ……」

「まぁまぁ、いいんじゃないの? 美味しいご飯ぐらい、そのうち連れて行ってあげるわよ」

「社長のプライドとして、社員に奢ってもらうわけにはいかないのです!」

「お呼ばれに期待してる割に、そう言うところはきっちりしてるのねえ」


 呆れたような顔をしつつも、暖簾をくぐる神南さん。

 その後に続いて、俺と鏡花さんもまた店の中へと入る。

 店内はカウンターが数席と座敷があり、画質の粗い水着ポスターが張られていた。

 これまた、何とも年季の入った雰囲気だ。


「こっちこっち!」


 座敷の奥にドカッと胡坐をかいていた新沢さんが、手招きをする。

 俺たちもすぐに座敷に上がると、座布団の上に腰を下ろした。

 こうして畳の上に座ると、前のアパートを思い出すなぁ。

 あの家も、今時珍しい和室だったからね。


「今時珍しい感じなのですよ」

「せやろ? 日本人はやっぱ畳と座布団やわ」

「……私は椅子の方が楽だけど」

「神南ちゃんは今時の子やなぁ」

「それより、本題は何ですか?」

「そうですね、ここまできたことですし」


 ここまで食事に誘ったのだから、何かしら狙いはあるだろう。

 俺と神南さんは、さっさとそれを言うように促した。

 すると新沢さんは、待て待てと首を横に振る。


「もっと場が温まってからや。はなちゃん、ビール!」

「はーい!」


 厨房から返事がして、四十代後半ほどに見える女性がビールを運んできた。

 彼女が店名にもなっている”はなちゃん”であろうか?

 中年の女性らしくふっくらとしているが、昔は美人だったであろう面影が見える。


「社長さんもビール飲むか?」

「私はハイボールがいいのですよ」

「んじゃ、ハイボールよろしくぅ!」

「私はウーロン茶で。桜坂君は?」

「俺もそれで」


 オーダーをすると、すぐに追加の飲み物が運ばれてきた。

 こうして全員分の飲み物が揃ったところで、新沢さんがご機嫌な様子で言う。


「乾杯!! ぷっはぁ!! たまらんのぅ!!」


 乾杯と同時に、勢いよくビールを飲み干してしまう新沢さん。

 そうしたところで、今度はお好み焼きが運ばれてくる。

 鰹節とソースの香りが、ふわっと漂ってきた。

 おー、こりゃおいしそうだ!

 

「んっ! 確かにこれは……ふわふわなのですよ!」

「へえ、美味しい!」


 実にいい笑顔をする鏡花さんと神南さん。

 すぐさま俺もお好み焼きを食べると、たちまちその美味しさに魅了される。

 これは恐らく、山芋が入ってるな。

 豚肉も実にジューシーで、生地との相性がいい。

 なるほど、これは行きつけにするのもわかる。


「最高やろ?」

「はい!」

「喜んでもらえて、良かったわぁ!」


 すっかりご機嫌な新沢さん。

 彼とともに、お好み焼きを食べ続けることしばし。

 場の雰囲気がすっかり和んだところで、ふと新沢さんが言う。


「さて……場が温まってきたところでや。桜坂君は、ダブルイデアって概念を知っとるか?」


 にわかに核心へと迫ってきた新沢さん。

 彼の発したダブルイデアなる単語に、俺はたちまち顔を強張らせてしまうのだった。

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