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前世が最強賢者だった俺、現代ダンジョンを異世界魔法で無双する! 〜え、みんな能力はひとつだけ? 俺の魔法は千種類だけど?〜  作者: キミマロ
第二章 賢者とインフルエンサー

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第十四話 VS魔獣

「た、助けてくれ!! 礼なら後でいくらでもする!!」


 やがて俺たちの姿を発見した男が、こちらに向かって思い切り声を張り上げた。

 服装が違っていたので、一瞬、誰だかよくわからなかったのだが……。

 よく顔を見れば、先ほど俺たちに話しかけてきた人である。


「機材を捨てて、急いで!」

「ダメだ! これには貴重な撮影データが入ってる!」

「なに馬鹿なこと言ってんのよ!!」

「グオオオオオォ!!!!」


 新たに現れた俺たちを威嚇するように、キマイラが雄叫びを上げた。

 こりゃ、とても言い争っているような場合じゃないな……!

 キマイラの体高は、軽く三メートルほどはあるだろうか。

 獅子と山羊の頭を持ち、胴体は尻尾は蛇。

 様々な生物を掛け合わせたようなその姿は、鳥肌が立つような嫌悪感がある。

 さらにその鳴き声は、生物らしからぬ機械的で気持ちの悪い音だった。


「ちっ! こいつらほっといてやるしかないわね」

「あいつ、こっちに飛び掛かってきますよ!」


 来栖さんがそう言った瞬間、キマイラの身体が大きく飛び上がった。

 四足獣特有の驚異的な跳躍力で、たちまち前にいた千鳥の討伐者たちを越えていく。

 こいつ、俺たちを狙ってるな!!

 すぐさま神南さんが前に出て、剣を構える。


「左!!」

「グオオオォ!!」


 来栖さんがそう言った瞬間、キマイラの左足が振り下ろされた。

 ――ドンッ!!

 乾いた音とともに、石畳が吹き飛ぶ。

 体重に物を言わせたその威力は、人間が喰らったら一撃ですり潰されてしまいそうだ。


「ライオン!」


 続いて、獅子の顔が神南さんに喰らいつこうとした。

 神南さんはかわすと、すれ違いざまにキマイラの首に向かって剣を叩き込む。

 しかし、浅い。

 黒い石で出来た頑強な肉体は、炎を纏った剣すら弾き返してしまう。


「蛇!!」


 攻撃を弾かれて、わずかながら動揺する神南さん。

 彼女を狙って、今度は尻尾の蛇が鞭のように振るわれる。

 ――早い!

 来栖さんからの警告もあったが、神南さんの動きがやや出遅れた。

 俺はすかさず風魔法を放ち、尻尾の軌道がどうにか逸れる。


「ありがと!」

「いいえ! けどこいつ、あのガーゴイルよりよっぽど厄介ですよ!」

「そうね、めちゃくちゃ硬い!」


 いったんキマイラから距離を取ると、剣を確認する神南さん。

 幸い刃こぼれなどはないようだが、彼女の剣で斬れないとは相当である。

 鉄をも溶かす高熱を纏った神南さんの剣は、これまでほとんどの物を容易く両断してきたのだ。


「むぐぐ、見た感じでは弱点とかも特になさそう!」

「単純にデカくて硬くて力があるって感じですか……。シンプルなだけに厄介ですね」

「あんた、強力なイデア……じゃなかった、アーティファクトとか持ってないの?」


 解決策を求めて、神南さんは俺へと眼を向けてきた。

 ……外気法を使って上級魔法を叩きこめば、恐らくは倒せるだろう。

 問題は、かなりの機動性を誇るキマイラをどうやって足止めするかだ。

 上級魔法を放った瞬間、先ほどのようにジャンプされてはたまらない。


「当てれば倒せる奴はありますけど……」

「足止めが必要ってこと?」

「ええ」

「足の一本でも落とせればいいのだけど……」


 神南さんの能力だけではいかんともしがたいのだろう。

 彼女はキマイラと見合いながら、思い切り渋い顔をした。

 するとここで、来栖さんがふと何かを思いついたように言う。


「そうだ! 千鳥の代表の人、氷結系のイデアですよ!」

「それ、うってつけじゃない!」


 すぐさま、キマイラの向こうへと眼を向ける俺たち。

 すると呆れたことに、千鳥の討伐者たちはキマイラがこちらへ来たのをいいことに機材を抱えて逃げようとしていた。

 ……おいおい、これじゃ当て逃げみたいなもんじゃないか!


「ちょっと待ちなさい! 逃げようったって、そうはいかないわよ!」


 キマイラが破壊した石畳の残骸。

 それを拾い上げた神南さんは、野球選手さながらの見事なフォームでぶん投げた。

 ――ドゴンッ!!

 まっすぐな軌道を描いた瓦礫は、たちまち走っている討伐者の背中に直撃した。

 衝撃で瓦礫が砕け散り、たまらず男は前のめりになる。

 見ているこちらが少し心配になってしまうぐらいの威力だ。


「な、なんということをするのだ……!!」

「それはこっちのセリフよ! モンスターのなすりつけは重罪でしょうが!」

「は、法律には違反していない!!」

「そういう問題じゃないでしょ!」


 続けてもう一発、瓦礫を投げつける神南さん。

 すると流石の男も観念したのだろう、半ば自棄になったように言う。


「……わかった! 奴を凍らせてやろう、だがその足止めは既に何度か失敗しているぞ!」

「十分、わたしに考えがある!」


 そういうと、剣を手にキマイラの周囲を走り始める神南さん。

 彼女の動きが目障りになったのだろう、キマイラは再び雄叫びを上げると攻撃を再開する。


「左、右、左!!」

「ふっ!!」


 来栖さんの指示が飛び、それに従って神南さんがテンポよくキマイラの攻撃を回避する。

 その隙を見て、男が弓を構えるような姿勢を取った。

 たちまち冷気が凝縮し、氷で出来た長弓が出現する。

 氷結のイデアって、こういうことか……!!

 男はそのまま狙いを定めると、これまた氷で出来た弓を放つ。


「グオオオォ!!」


 氷の矢が当たって、キマイラの身体の一部が凍り付いた。

 しかしキマイラの力によってすぐに氷は砕かれ、まったく動きを制限できない。

 するとここで、神南さんが叫ぶ。


「左足!! そこ狙って!!」

「ああ!」


 神南さんの指示に従って、男は左足に矢を当てた。

 その狙いは正確で、イデアを使いこなしていることが伺える。

 必死に逃げていた割に、けっこう実力はあるようだ。

 そして――。


「はああぁっ!!」


 氷に向かって、炎の剣が振り下ろされる。

 ――ピシッ!

 次の瞬間、キマイラの外皮にひびが入ったのだった。


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