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前世が最強賢者だった俺、現代ダンジョンを異世界魔法で無双する! 〜え、みんな能力はひとつだけ? 俺の魔法は千種類だけど?〜  作者: キミマロ
第二章 賢者とインフルエンサー

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第八話 入鹿ダンジョン

「お待たせしましたー!!」


 入鹿ダンジョンへと向かう当日。

 俺たちはダンジョン最寄りの駅で待ち合わせをしていた。

 改札を出てすぐのロータリーで神南さんと立っていると、すぐに来栖さんがやってくる。

 この間と同様、背中には大きなザックを背負って既に機動服を着ていた。


「……あんた、街中でもそれ着てるの?」


 ダンジョンの最寄りと言っても、そこそこ大きなターミナル駅である。

 駅前には家電量販店があり、人通りも多い。

 そこで機動服を着ているのは、いかにも場違いであった。

 しかし、来栖さんは悪びれることなく言う。


「今日はいろいろ持ってきましたから。重くって、これ着てないときついんですよ」

「流石に気合入ってるわね。けど、それだといざという時に困らない?」

「増強薬を持ってきたので、いざという時はそれで対応します!」


 そういうと、懐からアンプルのようなものを取り出す来栖さん。

 確か、一時的に身体能力を向上させる薬だっけ。

 一本十万円近くする上に、副作用の筋肉痛が強烈なためあまり好まれないとか。

 わざわざこれを持ち込むとは、やっぱり来栖さんも相当に気合入ってるな。


「じゃ、タクシー呼んでいきましょうか」

「はい!」


 神南さんはスマホを取り出すと、アプリでタクシーを呼び出した。

 するとちょうどいい位置にいたのか、すぐに黒い車体がロータリーへと滑り込んでくる。

 今の時代、ほとんどのタクシーは自動運転で市内を巡回している。

 アプリで呼べばいつでも来てくれるので、こういう時にはとても便利だ。


「よいしょっと。うわぁ、緊張するなー!」

「遠足前みたいな顔してますね」


 緊張感よりも、興奮の方が勝っているのだろう。

 来栖さんは子どものように目をキラキラと輝かせていた。

 そんな彼女に対して、神南さんが少し脅かすような口調で言う。


「……そんな様子でいられるのも、今のうちだけよ」

「何か意味深ですね?」

「ダンジョンの外を見たら、すぐわかるわ」


 ダンジョンの中ではなく、外?

 ダンジョン内部へと繋がるゲートは、カテゴリーにして比例して大きくなる。

 カテゴリー4ともなると、よほどそれが大きくて威圧感があるのだろうか?

 来栖さんもいまいちピンと来ていないのか、首を傾げている。

 しかし、俺たちの疑問はほどなくして氷解することとなった。


「箱?」


 タクシーに乗って、走り続けること十分ほど。

 市街地を抜けたところで、視界の先に大きな直方体のようなものが見えてきた。

 近くにある建物との対比からして、ざっと高さ百メートルぐらいはあるだろうか。

 巨大な灰色の塊であるそれは、得体のしれない迫力を帯びている。


「あれが……入鹿ダンジョン?」

「そう。正確に言うとそれを覆う外郭ね。数万トンのコンクリートと複数の隔壁でダンジョンを隔離してるの」

「何だか墓標みたいですね」


 どこか陰鬱な色を纏った独特の外観を見て、俺はそう評さずにはいられなかった。

 来栖さんも、先ほどまでとは言って緊張した面持ちになる。


「昔の人にとって、ダンジョンは未知と恐怖の象徴。だからそれを少しでも封じ込めるために、あんな巨大な施設を作ったって考えると身に摘まされるものがあるわ」

「だから、さっきあんなこと言ったんですね」

「そう。私も初めてカテゴリー4を見た時は、怖くなったから」


 過去のことを思い出しているのだろうか。

 窓の外を見ながら、どこか遠い目をする神南さん。

 彼女のそんな様子を見て、来栖さんが少し遠慮しながらも尋ねる。


「先輩は前にも来たんですか、カテゴリー4に」

「壮行会みたいなもので、見ただけだけどね」


 そうこう話しているうちに、タクシーは外郭の傍に設けられた駐車場へと滑り込んだ。

 そこには事務所のような建物があって、すぐに警備員らしき人物が俺たちへと駆け寄ってくる。

 カテゴリー4ともなると、安定期に入っても常に人が常駐しているようだ。


「所属と名前を教えて」

「詩条カンパニー、神南紗由よ」

「同じく詩条カンパニー、桜坂天人です」

「明星企画、来栖咲です」


 俺たちの情報を聞くと、すぐに手元の端末で検索をする警備員さん。

 データベースに該当する討伐者が載っているか、きちんと照合しているらしい。

 やがてそれが終わると、ふうっと息をついて言う。


「確認できたよ。門を開くから、ちょっと下がってて」


 外角に設置された巨大な金属製の扉。

 それが独特のモーター音とともに重々しく開いた。

 中は薄暗い通路となっていて、奥にまだ隔壁があるのが見える。


「緊張するわね」

「ええ」


 こうして俺たちが外郭の中へと足を踏み入れようとしたところで。

 駐車場の方から、ガヤガヤと人の声が聞こえてきた。

 この場所の雰囲気とはおよそ似つかわしくない騒々しさである。

 何事かと思って振り返ると、大きなマイクロバスが止まっている。

 その側面に書かれた金色の鳥を模したマークを見て、たちまち来栖さんが顔をしかめた。


「げ! あのマーク、千鳥ですよ!」

「ほんとですか?」

「ええ! あの憎たらしい公式チャンネル、何度も見ましたもん!」


 おいおい、まさかよりにもよってダンジョンに潜る日が被るなんて……。

 俺がやれやれと額に手を当てると、来栖さんがハッとしたように言う。


「……ひょっとして、私のSNSのから撮影日を割り出したのかもしれないです! 今日、定期投稿を休むって事前に呟いていたので!」

「それよ! あいつら、わざと被せてきたんだわ!」


 たちまち、バスに向かって避難の眼を向ける神南さん。

 そうしていると、中から白いスーツを着た男が降りてくる。

 そのどこか気障っぽい顔は、千鳥の配信で見覚えがあった。


「おや、君たちも今日だったのか? 悪いね、被ってしまって」

「被らせたんでしょ?」

「それは言いがかりというものだよ。まあセレブ喧嘩せずというし、仲良く行こうじゃないか。……おっと、君たちはセレブじゃなかったかな?」


 そう言って、高笑いをする男。

 こりゃ、まためんどくさいことになったなぁ……。

 神南さんの眉間に皺が寄ったのを見て、俺はたまらず額に手を当てるのだった。

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