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前世が最強賢者だった俺、現代ダンジョンを異世界魔法で無双する! 〜え、みんな能力はひとつだけ? 俺の魔法は千種類だけど?〜  作者: キミマロ
第二章 賢者とインフルエンサー

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第七話 新人潰し

「今日もお疲れ様です! 二人で合わせて十五万円ですね!」


 翌々日。

 早めにダンジョンから戻ってきた俺たちは、いつものように魔石の買取をしてもらっていた。

 入鹿ダンジョンに向かうのは、今からちょうど二週間後。

 それまでは本格的なダンジョン攻略はせず、来栖さんを混ぜて調整と打ち合わせが主となる。

 ……調整中で日給五万円を超えるようになったのが、我ながらちょっと恐ろしい。


「さてと、今日は何食べようかしら」

「うち来ます? 那美が肉じゃがたくさん作ったって」

「お、いいわね! お邪魔するわ」


 同じマンションに住むようになってから、神南さんはたまにうちに来るようになっていた。

 どうやら、那美の料理が心底気に入ったらしい。

 二人分も三人分も作る手間は大して変わらないので、最近では那美の方が自主的に神南さんの分を用意していたりする。

 これもまた、以前のカツカツ生活からは考えられないゆとりだ。


「二人とも、ちょっと待つのです!」

「どうかしました?」

「ふふふふふ……実はお知らせがあってですね」


 何やら意味深な笑みを浮かべる鏡花さん。

 やがて彼女はタブレットを取り出すと、満面の笑みを浮かべて言う。


「なんと、詩条チャンネルの登録者が百人を超えました!」

「おお……! 何かあったんですか?」

「クルクルさんに名前を出してもらったおかげなのです!」


 そう言って鏡花さんが見せてくれた画面には、例のお知らせが乗っていた。

 クルクルこと来栖さんが、詩条カンパニーの協力を得て入鹿ダンジョン内部の撮影を行うというものである。

 本格攻略ではなくあくまで撮影が目的とはいえ、カテゴリー4のダンジョン。

 業界的にはかなりの大事だったらしく、あちこちで話題になっているようだ。

 つぶやきの表示回数とかお気に入りとか、いずれもとんでもない数字になっている。

 このお知らせを見た一部が、公式チャンネルへと流入したらしい。


「うわ……めっちゃバズってますね!」

「ふふ、うちのカンパニーがこんなに注目されるのは初めてなのです! 必ず撮影を成功させてもっともっと知名度を上げるのですよ!」

「はい!」

「と言っても、無理は絶対にダメですからね! いのちだいじに!」


 最後にそう付け加えるのが、鏡花さんらしいというか何というか。

 俺と神南さんは軽くアイコンタクトをすると、鏡花さんの期待に応えるべく頷く。

 するとここで、急に神南さんのスマホが鳴った。


「ちょっとごめん。あー、もしもし?」


 俺たちに軽く断りを入れて、電話を始める神南さん。

 漏れ出た声を聴くに、掛けてきたのはどうやら来栖さんであるらしい。

 その声はどこか焦ったような雰囲気で、ただ事ではなさそうだった。


「鏡花社長、ちょっと千鳥のチャンネル開いてもらえる?」

「千鳥?」

「そ、前に話したカンパニーの公式チャンネルよ」


 言われるがままにタブレットを操作し、指示されたサイトを開く鏡花さん。

 すると、どうやらちょうど生配信を行っているらしい。

 LIVEと表示されたボタンをクリックすると、たちまち白いスーツ姿の男が映し出される。

 どこかホストのような雰囲気を纏ったその人物は、記者会見か何かを開いているようだった。


『千鳥の特別動画チームは、このたび入鹿ダンジョンの攻略を撮影したいと思います』

「え、ええ!?」


 男の口から発せられる言葉に、俺と鏡花さんはたまらず驚愕した。

 どうして、選りにもよってこのタイミングで入鹿ダンジョンなのか。

 思考が停止しそうになる俺たちの一方で、神南さんは電話を切って渋い顔をする。


「やられたわね……。これが千鳥のやり方だそうよ」

「どういうことです?」

「受けそうな企画を見つけたら、すぐにそれを丸パクリして圧倒的な資金力で上を行く。そうやって、自分たちの邪魔になりそうなインフルエンサーは片っ端から潰してきたんですって」


 そりゃまた、えげつないやり方だなぁ……。

 うちのような弱小の企画をパクるなんて、大手のプライドが無いのだろうか?

 いや、むしろそこまで貪欲だったからこそ大手にまでのし上がれたのか?

 いずれにしても、これは厄介なことになったな……!


「でも、いくらバズったと言ってもどうしてこんな小規模な企画を……」

「千鳥としても、ここらである程度難易度の高いダンジョンを攻略したいと思ってたとこなんでしょ。安全な管理ダンジョンでの攻略に移行して以来、再生数が少し落ちてるとか」

「なるほど、確かに同じダンジョンだとどうしてもマンネリ化しますもんね」


 自前の管理ダンジョンを持てば、比較的安全に攻略と撮影が両立できるはずだ。

 しかし、それは同時に攻略のスリルが失われることを意味する。

 最初のうちは手を変え品を変え視聴者を飽きさせないようにしてきたのだろうが、恐らくそれにも限界があったのだろう。

 視聴者というのは、刺激を求め続ける生き物なのだから。


「ぐぐぐぐぐ……! だからって喧嘩吹っ掛けてくるなんて……!」

「むしろ、喧嘩するって意識すらないのかも」


 悔しいかな、相手の登録者数は一千万人超。

 来栖さんのフォロワー数を加味しても、はっきりいって次元が違う。

 向こうからしてみれば、戦いというより虫か何かを潰すような感覚だろう。

 けど、このままあっさり潰されるのも悔しいなぁ……。


「……とにかく、予定をちょっと早めましょう。千鳥より時期が遅くなることだけは避けなきゃ」

「そうですね!」


 こうして、入鹿ダンジョンへの突入日を一週間早めることにした俺たち。

 この判断が思わぬ結果へとつながることになるのだが……。

 この時はまだ誰も、気づいていないのだった。


 

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