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前世が最強賢者だった俺、現代ダンジョンを異世界魔法で無双する! 〜え、みんな能力はひとつだけ? 俺の魔法は千種類だけど?〜  作者: キミマロ
第一章 賢者覚醒編

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第二十二話 血染めの支配者

「迷宮主の仕業か?」

「まさか! まだ小さい穴が出来ただけだ!」

「遠距離系の技とかじゃないか?」

「穴の深さは百メートルもあるんだぞ!」

「落ち着いて!! 全員、臨戦態勢!」


 状況が混乱する中で、神南さんが急いで指示を発した。

 彼女自身も剣を抜くと、慎重に掘削で出来た穴へと近づいていく。

 まだ直径三十センチほどしかないそれであるが、異様なまでの存在感を放っていた。

 今にも、黒い底から何かが這い出してきそうだ。


「……魔力?」


 穴の底から、冷たい何かが溢れ出してきていた。

 魔力だ、それも強い闇の属性を帯びている。

 もはや瘴気と言っても過言ではないそれは、人間にはかなり有害なものだ。


「気を付けて! 穴から変なものが出てます!」

「変なものって?」

「ガスみたいな!」


 俺の警告を聞いて、神南さんの表情がますます険しくなった。

 彼女は様子を見守っていた討伐者たちの方へと振り返ると、大きく手を上げて指示を出す。


「……間違いなく何か来るわね。出てきたところを最大火力で潰すわ、攻撃系のイデアを持っているメンバーは前に出て!」


 神南さんの指示で、数名の討伐者たちが穴を取り囲むように移動した。

 俺もまた、それに加わっていつでも魔法が撃てるように魔力を高める。

 さて、蛇が出るか鬼が出るか……。

 緊張感が高まり、静寂が満ちる。

 もともとが洞窟ということもあって、周囲から不気味なほどに音が消えた。

 自分の心臓の音が聞こえてきそうなくらいだ。

 そして――。


「来た」


 樹さんが短く声を発すると同時に、赤い霧が穴から噴出した。

 これは……コウモリの群れか!?

 密集して荒れ狂うその姿は、巨大な一個の生物のようである。


「攻撃開始!!」

龍の息(ドラゴンブレス)!!」

「大水葬!!」

針鼠の怒り(ニードルバースト)!」


 神南さんが合図をすると同時に、次々と攻撃が打ち込まれた。

 俺も負けじと、ライトニングを最大出力で放つ。

 休憩して魔力を回復しただけあって、その威力は下級魔法ながら中級魔法並みになっていた。

 稲妻が轟き、コウモリの群れは見る見るうちにその数を減らしていく。


「……終わりよ! 光焔の刃!!」


 最後に、神南さんが残ったコウモリを焼き尽くした。

 一時は何が出てくるかと焦ったが、結局、それまでと大して変わらない相手だったな。

 けど、あの不気味な魔力は一体……。

 コウモリが発していたにしては異質過ぎるそれに、俺はどうにも違和感を抱いていた。

 念のため、感覚を研ぎ澄まして穴の奥の魔力を探る。

 すると――。


「これは……! 第二波が来ます! もっと数が多いです!」

「まだ来るのかよ!」

「コウモリ地獄か、ここは!」


 いくら雑魚と言えども、何回も来られたら流石に面倒である。

 討伐者たちの顔が露骨に曇るが、彼らもプロ。

 すぐに気を取り直すと、再び攻撃を仕掛ける準備に移る。


「来たぞ!」


 再び、穴の底から湧き上がってくるコウモリの群れ。

 先ほどよりもさらに数を増したそれは、さながら赤い霧のよう。

 そこへ再び、討伐者たちが一斉攻撃を仕掛ける。

 炎、針、光の矢、暴風雨……。

 あらゆる種類の攻撃が殺到し、瞬く間にコウモリはその数を減らす……。

 かと思われたのだが。


「効いてない!?」

「なんだ、こいつら……!! うわっ!?」


 コウモリを容易く蹴散らすはずの攻撃。

 それがまったくと言っていいほど効果を上げなかった。

 赤い霧がたちまち前線に居た討伐者たち数名を呑み込み、声にならない叫びが聞こえる。

 これは……何が起きている?

 あのコウモリたちは特殊なバリアでも張っているのか?

 にわかに混乱する俺たちの耳に、どこからか声が響く。


「我、痛みを知る者。同じ痛みは二度と通用せぬ」

「……誰? 姿を現しなさい!」


 闇から響く声に、神南さんが勇ましく問いかける。

 それに応えるようにコウモリの群れが唸り、捻じれ、やがて小さく収束していった。

 この魔力の大きさと特性は……!

 俺はとっさに前世で遭遇したある死霊系モンスターを思い出した。

 アノロンドにはいなかったはずの大物だが、そこはやはりダンジョンと異世界の違いだろうか。

 まったく、面倒な形で違いが表れてくれたもんだ!


「我はフェムドゥス。血の支配者にして痛みを知る者」


 やがて完全に人型となったそれは、大きな漆黒の翼を広げた。

 闇に溶け込むようなそれと、口元に輝く牙は間違いない。

 

「吸血鬼か。それもなかなか位が高いな」


 ……これは、魔法の縛りはちょっと厳しいかもなぁ。

 吸血鬼は全体的に能力が高い上に、非常にタフだ。

 流石に上級魔法を使わないと、倒れてくれないだろうな。

 俺がそう思ったところで、討伐者たちから悲鳴じみた声が上がる。


「人型!? カテゴリー2のはずだろ!」

「明らかにやべえぞ、おい!」

「ビビるな、俺が仕留める!!」


 そう言って前に出てきたのは、先ほどブレス攻撃を仕掛けた討伐者であった。

 名前は竜ケ崎さんだったか。

 彼は大きく息を吸い込むと、口の前に巨大なエネルギーの塊を形成する。


龍の息(ドラゴンブレス)!!!!」


 膨大なエネルギーが奔流となって襲い掛かった。

 白い光が洞窟の壁や床を照らし出し、眼を開けていられないほどだ。

 こりゃ、さっきよりもさらに威力が増してるな!!

 並のモンスターなら、一撃で蒸発して消え去ってしまいそうだ。

 しかし――。


「同じ痛みは通用せぬ」

「なにっ!?」


 光が収まると、そこには何事もないかのように佇むフェムドゥスの姿があった。

 あれだけの攻撃を受けたというのに、かすり傷一つついていない。

 いくら吸血鬼がタフだと言っても、あまりにも異様な姿だった。

 一方、力を使い果たしたらしい竜ケ崎さんは変身が解けて人の姿へと戻ってしまう。

 そして――。


「おぐぁっ!!」


 コウモリの群れが、竜ケ崎さんの身体を呑み込んだ。

 俺はとっさにライトニングを放つが、雷は何かに阻まれるようにかき消されてしまう。

 まさかこいつは……。


「同じ技は二度と通用しない。チートじゃねえかよ」


 イデアを一つしか持たない討伐者たちにとっては、ある意味で最悪の能力を持っているようだった。

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