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前世が最強賢者だった俺、現代ダンジョンを異世界魔法で無双する! 〜え、みんな能力はひとつだけ? 俺の魔法は千種類だけど?〜  作者: キミマロ
第一章 賢者覚醒編

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第二十話 決戦前のひととき

「うお、那美のやつずいぶん気合を入れたなぁ」


 掘削作業に入って数十分。

 時刻はちょうど正午となり、警戒担当を除く討伐者たちは食事を取り始めた。

 特に指示があったわけでもないのだが、時間になると行動してしまうのは日本人の性だろうか。

 俺も那美から受け取っていた包みを開くと、中から大きな重箱が出てくる。

 今日は大事な仕事だと事前に伝えていたので、那美の方でも気合を入れてくれたらしい。


「すげえ弁当だな? 彼女か?」


 俺の弁当箱を見て、樹さんが興味深そうな顔をして近づいて来た。

 その手には、コンビニのサンドイッチが握られている。


「違いますよ、妹のです」

「ほほぅ、妹か。いい趣味だな……」


 妙にいい笑顔をする樹さん。

 いやいやあんた、その言い方には絶対含みがあるだろ。


「何を言ってるんですか。俺と那美には何にもないですよ」

「冗談だよ、冗談」

「今泉さんが言うとそう聞こえない」


 ここで七夜さんも参戦してきた。

 彼女の手には、手作りと思しき大きなおにぎりが握られている。

 ……本当にデカいな、コンビニで売ってる奴の五倍ぐらいはないか?

 小さな顔に対しておにぎりが大きすぎて、バグか何かのように見える。


「よぅ、楽しそうだな!」


 こうして皆で和気藹々と話していると、何故か赤井がこちらへやってきた。

 あれ、ナイトゴーンズは食事休憩をとっていないのか?

 すぐに掘削機の方へと視線を向けると神南さんが一人で黙々とサラダチキンを食べていた。

 ……食生活まで微妙に意識高いんだな、神南さん。


「何でナイトゴーンズのメンバーがこっちに?」

「神南さん、ちょっとピリピリしてて話しづらくって」

「それで、知り合いの俺のとこへ来たってわけか。でも、そんなに仲良くなかっただろ」

「そう堅いこと言うなって。ほら、土産もある」


 そう言って赤井が取り出した紙のパックには、唐揚げがぎっしりと詰まっていた。

 これって確か、最近ちょっと有名な専門店のやつだな。

 パックに描かれている鶏のマークに、俺はちょっと見覚えがあった。


「お! 俺、ここのやつ好きなんだよなぁ!」

「機械の熱で温めて来たんで、熱々っすよ」

「私も好き、ちょうだい」

「もちろん! どうぞどうぞ!」


 これが体育会系のコミュ力か……!?

 土産の唐揚げを持ってきたことによって、実にすんなりと受け入れられる赤井。

 前世でも現世でもコミュ障の俺には太刀打ちできない技だな……。


「桜坂も食うか? うめえぞ?」

「……俺はいいよ、那美の弁当があるから」


 何となく、俺は赤井の唐揚げは食べなかった。

 こういうノリの悪さが、俺が陰キャと呼ばれるゆえんだろう……。

 いいんだ、俺には那美の弁当があるからな!

 すると、俺のノリの悪さが気に障ったのか赤井は一瞬不機嫌そうな顔をする。


「……ならいいけど。それよりお前、大活躍だったな」

「そうか?」

「ああ! コウモリの群れを一発で全滅させただろ? その後もアリの群れを足止めしてたし。神南さんも感心してたぜ」


 へえ、あのプライドの高そうな神南さんが。

 ちょっと予想外である。

 ああいう人って、基本的に自分以外を絶対に認めなさそうだし。


「能力を二種類使ってたけど、岩の槍を出した方はアーティファクトか?」

「まあそんなところかな」

「雷の方は、あれが最大出力?」

「もっと出せるよ。というか、やたら細かく聞いてくるな」

「ははは、十八歳で覚醒したイデアってのがどんなのか気になって」


 あー、そういうことか。

 そりゃ、十八歳で覚醒したイデアなんて普通じゃなさそうだからな。

 現役の討伐者ならば、聞いてくるのも無理はないだろう。

 しかし、ここで素直に教えるわけにもいかない。


「わかるけど、そう簡単に全部は教えられないって。むしろ、赤井の方こそどうなんだよ?」

「俺の方こそって?」

「お前のイデア、どんなのだよ? 凄いとは噂になってたけど」


 高校の同級生であるが、俺は赤井がどんなイデアの持ち主か知らなかった。

 ただ、噂で凄いイデアに覚醒したらしいとだけは聞いている。

 学校中で噂になるイデアとは、果たしてどのようなものだったのか。

 すると赤井は、どこか気恥ずかしそうに言う。


「あー、俺のはな……。治癒の能力なんだ」

「治癒?」

「そ、あらゆる薬を出して治療ができる」


 なかなか便利そうな能力だなぁ。

 あらゆるということは、種類もかなり豊富なのだろう。

 しかし、自身のイデアについて語る赤井の顔はどことなく不満げだった。


「気に入らないのか?」

「まあな。俺も神南さんみたいなカッコいい能力が良かったよ。だいたい、俺って治癒って柄じゃねーだろ」

「イデアは人の願望を表すもの。あなたの能力が治癒なのにも意味はあるはず」


 ここで七夜さんが会話に割って入ってきた。

 討伐者としての歴が長いだけあって、なかなかに含蓄のある言葉である。

 しかし、赤井はどうも納得しきれないような顔をする。


「うーん、まあそうっすけど……」


 そう言うと、神南さんの方を見る赤井。

 羨望、嫉妬、憧憬……。

 その眼の奥では、様々な感情が渦を巻いているようだった。

 高校の時は、能天気な勝ち組ぐらいにしか思っていなかったけど……。

 赤井は赤井で、いろいろな悩みを抱えているんだな。


「……ん?」


 こうして昼食を終えたところで、樹さんが少し妙な顔をした。

 先ほどまでのどこか気だるい雰囲気から一変して、彼は姿勢を低くすると耳に手を当てる。

 

「……何か近づいてきてるな」

「モンスターですか?」

「ああ、それもかなり多い。息遣いが聞こえる」


 おいおい、どんだけ地獄耳なんだよ……。

 もしかして、さっきの俺と七夜さんの会話とか全て聞かれてたか?

 そんなことを思っていると、洞窟の奥から無数の唸り声が聞こえてくる。


「……なんて数だよ」


 やがて姿を現したモンスターの群れ。

 さながら濁流のようなそれを見て、俺はたまらず息を呑むのだった。

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