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前世が最強賢者だった俺、現代ダンジョンを異世界魔法で無双する! 〜え、みんな能力はひとつだけ? 俺の魔法は千種類だけど?〜  作者: キミマロ
第一章 賢者覚醒編

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第十五話 再会

「いよいよ今日か……」


 ミスリルのナイフを拾ってから、およそ二週間。

 とうとう合同討伐の日がやってきた。

 この日に備えて、蕨山でいろいろと訓練はしてきたつもりだ。

 しかし、今回向かうダンジョンは初めてのカテゴリー2でしかも見知らぬ人たちと連携する。

 できるだけ迷惑かけないように頑張らないとなぁ。

 詩条カンパニーみたいな中小企業にとって、外部からの評判は重要だ。


「お兄ちゃん、緊張してるね」


 普段とは違う俺の様子を察して、那美が不安げに声をかけてきた。

 討伐者というのは、稼げると同時に大きな危険を伴う職業である。

 毎日のように大丈夫と言い聞かせているが、それでもやはり心配の種は無くならないのだろう。

 俺は表情を緩めると、できるだけ落ち着いた声で言う。


「大丈夫、今日の合同討伐は普段より安全なぐらいだよ」

「そうなの?」

「ああ。戦力は過剰なぐらいらしいから」


 これについては、まったく嘘ではない。

 今回の合同討伐は、のちに高難易度ダンジョンを攻略するためのいわば前哨戦のようなもの。

 顔合わせや各カンパニーの連携を確認するための物だと聞いている。

 そのため、想定されるダンジョンの難易度に対してかなり多めの戦力が集まるのだとか。

 しかし、そう言ったところで那美の表情は煮え切らない。


「ふぅん……。ならちょっとは安心かな……」

「これが終わったら大金が入るからな。そしたら、とうとうこのボロい我が家ともおさらばだ」

「え、本当!?」


 露骨に那美の顔色が変わった。

 そりゃそうだ、うちはお世辞にもいい住まいとは言い難いからな。

 六畳一間の三点ユニットバスで、しかも洗濯機は外置き式。

 さらにちょっと天気が悪くなると、すきま風でガラス戸がガタピシと鳴る。

 こんな昭和時代の生き残りのような物件、年頃の女の子にはさぞつらかっただろう。

 セキュリティなんて、概念すらない感じだしな。

 台所にしたって、いまどき珍しい一口コンロで非常に使いにくい。


「なら私、今度は1LDKのマンションに住みたい!」

「いいぞ。1LDKどころか2LDKに住ませてやろう」

「そ、そんなすごい贅沢していいの!?」

「ああ。もちろんだ」

「お兄ちゃん大好き!!」


 ぎゅっと抱き着いてくる那美。

 俺はその頭を軽く撫でてやると、改めて気合を入れ直す。

 那美のためにも、今日の合同討伐は必ず成功させないとな。

 

「じゃ、行ってくる!」


 こうして俺は、家を出てまずはカンパニーへと急ぐのだった。


――〇●〇――


「何だか基地みたいになってますね」


 詩条カンパニーの社屋で七夜さんと合流し、彼女のホバーバイクで疾走すること小一時間。

 俺たちは目的地である初ヶ瀬ダンジョンへとやってきた。

 合同討伐の準備なのだろうか?

 軍隊が使うような天幕がいくつか設置されていて、装甲車なども出入りしている。

 平穏な住宅地らしい周囲と風景のギャップが凄いことになっていた。


「新しいダンジョンはだいたいこんな感じ。そう言えば、初めてだった?」

「ええ、うちの近くにもダンジョンが出来たことないですし」

「カテゴリー2だから、ここはまだマシな部類。カテゴリー3を超えると戦車が出てくる」

「え、戦車でダンジョン攻略するんですか?」

「違う。万が一、モンスターが外に出てきた時に移動する壁として使う」


 なるほど、そういうことか。

 もしもそんなことになったら、怪獣映画みたいな絵面だなぁ……。

 それだと人間は蹂躙される側なので、ちょっと勘弁してほしいが。

 俺がそうしてチラチラと国防の人たちを見ていると、七夜さんがポンポンと肩を叩く。


「……あんまりじろじろ見ない方がいい」

「どうしてですか?」

「国防は私たちのことを良く思ってないから」

「え、そうなんですか? 協力することもあるのに?」

「連中は民間人が武力を持つのを嫌がってる。政府を動かして、強引に討伐者を全員軍属にするって法案を通そうとしたこともあったとか。結局、潰れたけど」


 へえ、そんなことまであったのか……。

 前世のヴェノリンドでも、冒険者嫌いの軍人とかはけっこういたなぁ。

 軍というのは、国家が有する最大の暴力装置である。

 それを超え得る力を民間人が有するのは、やはりそれなりに軋轢を生むのだろう。


「……そろそろ時間だけど、今泉さんがこない」


 やがて指定されていた天幕の前に着いたところで、焦れるように七夜さん。

 今泉さんというのは、今回の合同討伐に参加する予定のもう一人の討伐者である。

 今泉樹、三十二歳。

 鏡花さんの話では、黒月さんと並んでうちのカンパニーの稼ぎ頭らしい。

 親しみやすい男性だと聞いているが、いきなり遅刻されるのはちょっと予想外だ。

 すると――。


「よっ、ちょっと遅くなった!」


 やがて機動服を着た痩身の男性が俺たちに近づいて来た。

 この人が今泉さんだろうか?

 さっぱりした短髪と日に焼けた肌が、歴戦の猛者と言った風貌だ。

 ただしその表情は人懐っこく、鏡花さんの言っていたように親しみやすい。

 何となく兄貴とか呼びたくなるような雰囲気だな。

 前世の冒険者にもたまにいたタイプだ。


「君が期待の新人君か?」

「期待されてるかは分かりませんが、新人の桜坂天人です」

「俺は今泉樹(いまいずみいつき)。気軽に樹先輩とでも呼んでくれ」

「はい、樹先輩!」

「それで黒月とはうまくやれたか? 俺が研修しても良かったんだが、あいにく俺のイデアは補助向きでな。不愛想なこいつに任せることになったんだよ」

「不愛想は余計、大きなお世話」


 不機嫌そうにそういうと、七夜さんは樹さんの足を踏もうとした。

 しかしそれを、樹さんはするりと避けてしまう。


「ははは、まあとにかく行こうや。他の連中もそろそろ集まってるだろ」

「……それもそうですね。絡んでいる時間が無駄でした」


 ふうっとため息をつきながらも、樹さんに続いて天幕の中に入る七夜さん。

 俺もその後に続いて移動すると、すでに多くの討伐者が集まっていた。

 ざっと二十人ほどはいるだろうか?

 高難易度ダンジョン討伐への足掛かりというだけあって、かなりの規模だな。

 こうして俺が周囲を観察していると、思わぬ顔が目に飛び込んでくる。


「あれ、赤井?」

「え? おぉ、桜坂じゃないか!」


 俺の数少ない昔の知り合いの中で、唯一の討伐者である赤井。

 高校の同級生である彼と偶然にも再会したのだった。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 七夜さんが樹さんの足を踏もうとして、七夜さんがするりと避けると書かれてます。 避けるのは樹さんでは?
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