幻滅
「背が高くて華奢な子が好き」
貴方は言った。
あたしはそんな貴方の理想とは少しズレていて、背が低くて少し筋肉質だ。好きでなった訳じゃない。
それでもあなたを諦めきれなくて、あたしは必死に努力した。
それでも貴方はあたしを見てくれなくて、貴方を見ると必ずと言っていいほど、学年、否、学校で美人と有名なあの娘を見ている。確かにあの娘は背が高くて華奢だ。まさに今あたしが絵に描いてる子みたいに。
でもあの娘が好きなのは貴方ではなくて、少し嬉しかった。こんな風に思ってしまうなんて醜い心だと思った。それでもただ嬉しかった。あの娘に振られれば、あたしを見てくれるのかもしれない。
なんて思っていたらあの娘の好きな人に告白をされた。あの娘は別に友達でもなんでもない、と思う。あたしは
「ごめん。そういう風には見れないの。あたし、好きな人がいて。」
そう言った。
少し気まずい空気が流れて、その人は走っていった。
あたしは少し反省した。もう少し言い方があったような気がしたから。そんなことを考えていたらあの娘があたしのところによってきてあたしの頬を叩き
「なんで貴方なの。私の方が可愛いのに」
そう言った。あたしは幻滅した。この娘にじゃなくて、この娘の事が好きな貴方に幻滅したの。こんな、何もかも思い通りになると思っているこの娘に惚れている貴方に幻滅したわ。貴方が寄せている好意にもこの娘は気づいてるわ。気づいた上で気付かないふりしているのよ。それに気づかない鈍感な貴方に幻滅した。
翌日、学校へ行くとあの娘が泣いていた。先生はあの娘の肩を撫でながらあたしを睨んでいる。
「お前、何したかわかってんのか、」
先生こそ、あたし達に何があったのか分かっているのか、そう言ってやりたかった。が、この生徒という場に立っているからにはそんなことは言えない。あたしは何があったのか聞くと、あたしがあの娘を殴った。そうなっているらしかった。
幻滅した。あの娘ではなく先生に、そんな演技に騙されている先生に、幻滅した。
それから月日は流れ、貴方の誕生日が来た。あたしは今年も貴方にプレゼントを贈るの。それは必ずインテリア雑貨だ。だって消耗品だといつか消えてなくなってしまうでしょう?雑貨ならそれを見る度、あたしを思い出してくれるかと思って。今年は何を贈ろうかしら。久しぶりにお菓子作りでもしてみようかしら。さすがに張り切りすぎかしら?なんて考えていた。
結局プレゼントは手作りお菓子と置物にした。隠し味をちょっぴりと入れてあげたの。秘密だけれど。置物は可愛らしい兎の置物にしたわ。時々、貴方の仕草が兎に見えるの。どんな反応があるのか楽しみにしていた。
プレゼントを渡した次の日、あたしは掃除当番だった。教室のゴミ袋をゴミ捨て場まで持って行く。そんな当番だった。
ゴミをまとめて袋の口を結んでいる時、身に覚えのある袋が見えた。
あたしが貴方に渡したクッキーの袋だった。
あたしは幻滅した。貴方にじゃない。貴方が人から貰ったお菓子を食べもせずに捨てる。そんな奴と見抜けなかったあたしに幻滅した。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。私自身、恋愛未経験なので書くのが難しかったです。ですが、小説家を目指す者、苦手だから書かないなどという選択肢はないので書いてみました。少しドロドロとした恋愛小説を書いてみたつもりです。
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