12;何のために
「貴様ら、どういうつもりだ?こんな結界で我らを殺したつもりか?」
目と鼻の先にこの現況を作りだした張本人がいた。その男の身なりは、闇と同化するような黒い狩衣。立烏帽子に袴と一般的なそれに、完全に顔を覆い隠し六芒星の印が入っていた。酒羅丸は確信していた。この様な姑息な手段を取ってくるのは、ある陰陽師が統括する異質な集団。絶対正義の名の下に暗躍する特殊部隊一団であると。
「それは、どうであろうな?我らの任務は貴様らをここへ閉じ込めること。それが成された今、我々の勝ちであるぞ?」
「我が、この結界なぞ破れないと思っておるのか?」
酒羅丸はゆっくりと結界の方まで足を運んだ。そして全身全霊を込めて右腕を結界に振りかざしたのであった。しかし、酒羅丸の全力の攻撃であっても、その結界を壊すに至らなかった。壊れたのは酒羅丸の右腕であった。結界に触れた瞬間にバラバラに消し飛んでいたのだ。
「なるほど、これはかなり強力であるな」
酒羅丸の右腕は徐々に回復していた。
「五人がかりで展開しているのだ、簡単に壊れてしまっては、我々の面目も立たんよ」
「貴様ら、たった十名で攻めてきたのか?」
「さぁな・・・十名かもしれんし、そうで無いかもしれん」
その陰陽師の男は質問に受け答える気など更々無さそうに返答をする。
「まぁ、私の術の中でゆっくりしていかれよ。手土産に食料を人数分用意してあるぞ。ん?貴様ら二十六体しかいないでは無いか。誰か置いてきたのか?まあ良い、話し合って誰がお代りするか仲良く決めるが良い」
「貴様らの手厚い歓迎感謝するぞ」
そう言うと、酒羅丸はその場から立ち去り再び村の中央へ戻っていた。他の鬼達も酒羅丸の後を付いてきている。
「貴様ら、腹が減っておろう、とりあえず喰ってきても良いぞ。作戦もその後だ」
酒羅丸は一旦、周りを払わせた。考える時間が欲しかったのだ。
「ご丁寧に結界を張ってくれ人間達も逃げられないでいる・・・喧嘩はするなよ。仲良く食してこい」
酒羅丸はそう言うと両手を組み胡座をかいて座り込んだ。陰陽師の一団がこの様な戦法をとってきたのは、酒羅丸にとって初めての経験であった。
(先ずは、あの村人達・・・完全に撒き餌扱いであったな・・・千里眼で何も違和感無かったのは、完全に一般人であったからこそだ。そして、視認した途端、術士の確認。度重なる失敗で数体は我の命令を無視して飛び込んでくると読まれておったのだろう。完璧な手際であった。そして、仲間が殺されたからには我らも、そこへ向かわざるを得まい・・・しかし、ここでも油断があったか・・・普通の村人とたかが術士五名と・・・二名取りこぼしたが、やつらも捨て石であっただろう。そして全員で無様に着地。戦闘態勢を整えさせその隙に術の発動か・・・完全にこちらの動きが読まれているな、奴らの手のひらで転がされているということか・・・素晴らしい・・・)
酒羅丸は今回の襲撃の考察をしていた。その手際・手腕・覚悟を目の当たりにし、思わずニヤリと微笑んでしまうほどであった。この現状をどう打破するか心躍っていた。
「如何でしたか?」
食事を終えた権左兵平が戻ってきた。
「酒羅様、食事はされないので?」
「我は、もう喰った。殺した術士二名をそのまま喰らっていたわ。戦闘態勢を取らせている合間にの・・・我らの特性を良く理解した上での良い襲撃であったよ」
「ほほ・・・そのようですな」
「他の奴らは?」
「取りあえずは、皆空腹はしのげたみたいで落ち着いております。今は余りを誰が食べるかでちょっと・・・」
「まぁ、それは日常だ。しかし、この現状が続くのはまずいな・・・」
酒羅丸がやや頭を抱えながらため息をつきながら言った。
「そうですな・・・気の短いやつらが、このまま大人しくしてくれている訳が無かろうて。この様な戦法は初めてで、食料まで用意しておるとは・・・奴らは何を望んでおるのか・・・」
権左兵平も長い経験則の中からも未だかつて無い攻撃に困惑していた。そして何より鬼達が飽きて好き勝手な行動をし出さないか心配であった。
「そうだな・・・恐らく、我らを籠城させそのまま長期戦であろう」
「いや、あの結界は持っても二~三日であろうと考えております。酒羅様の攻撃さえも耐えうるこの強度、五人がかり・・・恐らく、徹空徹護かと」
「何だ?それは?」
「人間達の結界の中で最強の盾を誇る結界術です。それは、如何なる攻撃も通さず防いでしまいます。しかし、術者はそこから一切動けず術を展開し続ける事。また、対象となる相手に対し一切の攻撃も禁じられている事にあります。正に防御一体の障壁です」
「なるほど、それで奴らは何も仕掛けて来ぬのか。そして、動けぬのであれば、確かに持って二~三日が精神的・体力的にも限界であろう」
「そうです」
権左兵平は深く頷いた。
「今、奴らに攻撃の意思はないな。結界の種類と・・・わざわざ食事を用意させ一旦落ち着かせたのもそれを物語っておる。我らにとって二~三日など長期戦その物だ。恐らく、仲間が集結し完全包囲後の総攻撃か・・・日照りでの日炙りか・・・入れ替わり術者が変わり我らの内乱か・・・その全てか・・・その範囲内であろう」
「でしょうな」
「さて、どうしたものか・・・」
酒羅丸は頭を悩ませながら、目を閉じ、術を唱えている。すると真下に黒く渦のような次元の穴が出現した。しかし、そこに手を通そうとするも弾かれ驚いた。
「空間転移も遮断するか・・・凄い術であるな」
酒羅丸の力全てを遮断する程の力は酒羅丸にとって初めての経験であった。いや、これは一種の封印に似ていた。その為少し懐かしい感じと、自身の命の危機を感じ嬉しさで打ちひしがれそうになっていた。そして、何度も弾かれる空間転移を楽しそうに何度も繰り返していた。
「酒羅様、遊んでいる場合ではござらんぞ」
酒羅丸はハッと我に返った。少し恥ずかしそうに返答をした。
「まぁ・・・取りあえず二日だ・・・奴らの作戦に乗ってやろうでは無いか。このまま緊張しておくのも奴らの思う壺だ。のんびりさせて頂こうではないか」
「それもそうですな」
「そうと決まれば、今からこの内側に我も天道の淵を展開しておく。日に焼かれるわけにはいかぬしの・・・日炙りを所望しているのならそれが叶わぬとなると何か動きがあるかもしれぬしの・・・我らが少しでも落ち着くようにここを一旦鬼ヶ島とする」
いつもの詠唱を唱えた後、辺りは霧がかかり更に薄暗く不気味になった。鬼ヶ島の山頂は気場でその力を利用する事によって広大な範囲の結界となるが、術士の結界範囲内程度の広さであれば酒羅丸単体の力で十分な結界を張ることができた。
「食事を終えた者より我の元へ集結せよ」
酒羅丸が再び全員に拈華微笑の術で全員を呼び寄せ、鬼達がぞろぞろと集結しだした。
(さて・・・どう説明したものか・・・頭が弱いのが多いからの・・・全く・・・二日であれば何とか持つとは思ったが、飽き性故に・・・本当に二日持つか心配になってきたぞ)
「酒羅様~せめてもう一体は食べたい~」
酒羅丸が心配をしながら考え込んでいるが、呪璃がまた空気を読まずに、ふらふらしながら歩み寄ってきた。
(こやつは言いくるめられるが・・・刃射場の一派はこのまま何も無しでは納得いかんだろうな)
酒羅丸は呪璃に目をやりながら、刃射場を慕う鬼達の元を眺めていた。
「我の読みが甘かった・・・刃射場も死なせてしまった・・・」
酒羅丸は素直に弔うべきだと感じていた。また、刃射場一派がどの様に思っているかも知る必要があり、これ以上の混乱の火種は消す必要があった。
「いえ・・・酒羅丸様は悪くありません。戦闘態勢を言いつけられていたにも関わらず不用意に飛び込んだ刃射場の落ち度。全員がそう思っています」
刃射場の相棒とも言える仞という青鬼が落ち着いて答えた。
(何故、この様な冷静な鬼があの馬鹿の下に付いているのだと不思議でならん。恐らく正反対が故に引き合わせていたのであろう。常に二人一組で不足しているところを補い合っていたからの。今回の刃射場の死に一番責任を感じているのは奴であるかもな。ここは奴を抑えれば大きな混乱にはならんであろう)
「いや、貴様は良く抑止してくれた。奴がいなくなってしまった分は貴様が、下の者を纏め上げ、この様な悲しみは起こさぬよう尽くしてくれ」
「御意・・・」
酒羅丸の言葉に感銘を受け、跪いて頭を下げた仞であった。
「呪璃も腹が減って事足りぬであろう。鬼ヶ島帰還の際は我が全員に手土産を用意してやる故、皆もそれで落ち着かれよ」
次に呪璃に目をやり(流石に無視する訳にはいかなかったので)言葉をかけた。もし、腹が減ったと暴れられても困るので一応、保険をかける酒羅丸であった。そして、この現状、意味が分からない不安を落ち着かせるために続けて言った。
「大体の・・・事の顛末は把握できたぞ。帰島の際に以前の夜行失敗含め全ての問題を解決してみせよう。一旦は食事ができたのだ、これで良しとしようではないか」
「そうですね・・・人間達の断末魔も聞きながらの食事はやっぱり美味しかったなぁ・・・子どもは・・・居なかったけど・・・」
空腹は免れたようで意外に鬼達は落ち着きを見せていた。ただ趣向通りの食事ができていないのもまた事実であった。
「貴様も喰えたか?」
酒羅丸は仞にも気を遣い、声をかけた。刃射場に気を遣い食事を怠っているのでは無いかと心配した。この機を逃せば、二ヶ月近く食事をしないこととなる為であった。
「はい・・・お心使いありがとうございます。刃射場の為にも喰わねばと・・・それに、あの術士達を全力で喰い殺さなくてはならぬので」
「そうか」
酒羅丸は少し安心して返事をした。
「酒羅様~鬼神様って何なの?」
呪璃が今回の食事の際に、人間達がしきりに口にしていた言葉にふと疑問を感じていた。
「呪璃も聞いたか?私が喰った人間も鬼神様がどうのこうの言っておったぞ」
それは仞も食事の際に聞いており、自分が食した人間以外も言っていたのだと驚いた。
「そう!私のところは、話が違う!これは本当の鬼では無いか!って外に叫んでた。あの悲痛の叫びが良いんだけどね」
「やはり、お主ら全員喰った人間が鬼神様とやらと言っておる様じゃの・・・酒羅様どういう事です?」
鬼神様という単語が聞こえ権左兵平も会話の中に参加してきた。この際、これの正体が何であるのかはっきりと聞きたかったのであった。
「なに・・・最近の人間達の流行じゃよ。恐らく、あの撒き餌共は自殺志願者だ。この術者共に鬼神様に会わせてやろうとでも言われて騙されて連れてこられたのであろう」
しかし、その正体については言及しない酒羅丸であった。それより、この戦法に対しやや不快感を示す酒羅丸であった。
「全く・・・どっちが鬼か分からぬの」
自殺志願者とはいえ、同胞達の命をここまで粗末にする神経が酒羅丸には理解できなかった。数が絶対的に勝るが故の戦法か・・・しかし、理解できなかった。
「そこまでして奴らは何を目論んでいるのです?」
仞も同様に、不快感を示していた、そしてそこまでの命を代償にしてまでこの現状は何を目的としているのか全く理解できなかった。
「恐らく、奴らの狙いは足止めであろう。奴らもいよいよ本腰をあげてきたわけだ。今のうちに我らを取り囲み陣形を整え攻め込んでくるはずだ」
現状考えられるのはこれが、一番確率が高いと考えられる。鬼の気を引き締めさせるためにも周知しておく必要があった。
「では、今すぐ戦闘態勢を?」
「いや、奴らは少数精鋭・・・失敗したら切り捨てるのであったのだろう。我らの足止めが成功し次の策が動くはずだ」
酒羅丸の言葉に他の鬼達も頷きながら大人しく聞いていた。
「そして、天道の淵を展開しておるが、我らが弱まる時間帯を突いてくるはずだ。わざわざ夜に仕掛けて来ぬであろう。それこそ我らを逃がしてしまう危険だってある。よって、明日か明後日の昼に事態が動くと考えられる」
「なるほど・・・しかし、それまで時間がかなりありますね・・・」
他の鬼達の言葉を全て仞が代わりに答えてくれる形であった。深く考えるのが面倒だ、そもそも考える頭が無い鬼ばかりであったため、仞のような存在は他の鬼達から言いように使われる傾向にあった。
「久々の戦だ・・・その前章戦といこうでは無いか。それに、刃射場の弔いも兼ねてやらねば無かろう。ここは酒造の村だ。村中の酒を皆で飲み尽くしてやろう。一応・・・確認はしたが聖水等は混じってはおらぬぞ」
対応を仞に任せながら、ややつまらなそうにするその他大勢であったが、酒羅丸のこの一言に目の色を変えて聞き入っていた。流石に明日か明後日の昼まで戦闘態勢で膠着状態など考えただけでも嫌気が差していた。
「そうですね。それは刃射場も喜びます」
仞もその言葉に喜びやや声色をあげて返答をした。
「さぁ、我ら鬼が人間なんぞの術に怯えてなるものか。我がおるのだ!何も臆する事は無い!今宵は呑んで呑んで呑み尽くそうぞ!」
鬼達の雄叫びが村中に響いた。酒羅丸の音頭と共に盛大な酒盛りが始まったのであった。緊張感の欠片も無く敵の術中であろうにも関わらず、堂々とした砕けぶりであった。久々の食事もあってか、その宴は夜が明けても続いていた。そして知らぬ間に酔い潰れ、昼に差し掛かってくるまで寝込んでしまっている程であった。その姿は、隙だらけで誰でも鬼を殺せてしまいそうな感じであった。しかし、これも作戦の内でこの程度で作戦を変更し襲ってくる方が酒羅丸にとっては都合が良かった。それ程、この結界は強力であり鬼達にとって脅威であると感じていた。
しかし、酒羅丸の考察は覆り、翌日、翌々日の昼が過ぎても、他の陰陽師の一団が攻め入ってくることは、無かったのだ。そして、二日目の夜に差し掛かっていた。
「貴様ら何を望んでおる?もう日没であるぞ?結界の奥を見通しても何も準備が成されておらぬでは無いか」
酒羅丸は解せない面持ちで、再び北で術を展開している男の元まで歩を寄せた。同時に自身の力でも及ばない結界を展開した力ある陰陽師がどの様な攻撃に転じてくるか期待に胸を膨らませていただけに、この拍子抜けな結果に苛ついていた。何度、結界の外を陰視力の限り見渡したであろうか・・・そんな訳はないと思い込んだであろうか・・・人間達にどれほど期待したであろうか・・・
その問いかけに男は無言で反応は無い。恐らく限界も近づいてきている様子であった。二日間、不眠不休の飲まず食わずで、最強の鬼と対峙し続けたのだ。いかに強靱な部隊であっても体力と精神が限界に近づいてきた。
「貴様らは我らの宴会場を用意したのか?」
酒羅丸は疲弊している事は理解していたが、無言で返されたことを良いことに嫌みを言い反応を見ようとした。いや、しかし実際鬼達の受けた事はこの発言の正にそれであった。これから事が起きようとは全く思えなかったのだ。結界の維持も良くもって子夜(深夜十二時頃)まであろう。
「貴様・・・そろそろ限界であろう?それでは明日の昼まで持つまい・・・」
「だから・・・言ったであろ、う・・・。我ら・・・の、計らい楽しかったか?」
ようやく何とか一言絞り出したかのように発声した。しかし、息使いは荒く、途切れ途切れで聞き取るのも困難であった。酒羅丸は、ここに来て虚勢も張れた物だと感心して笑みを溢した。独断専行での今回の出撃か、何か手違いがあったか・・・この手引きは妃姫によるものであるのは明確であったが、肝心の一手が明らかに欠如していた。それに命を無駄にしていると酒羅丸でさえ感じていた。どうせならこれ程の術士であれば清々と戦闘を楽しんでみたかったという気持ちは否めなかった。
日付が変わろうとした時、ここで初めて術士に動きがあった。北の術士以外が結界を解いて離脱したのだ。五人で展開していた術を一人で行う事となる。そう・・・それは、他四名を逃がすための時間稼ぎであった。それを察知し鬼全員が北の術士を取り囲んでいる。
「こんな疲弊し尽くした貴様で何ができる?もう結界も展開困難であろう」
酒羅丸は落ち着いた口調で話しかける。その声に男は力は抜け結界が消失した。
「貴様・・・名は?」
目的は全く理解できず、何がしたいのか分からず滑稽にも死にゆく末を哀れに感じていた酒羅丸であった。しかし、この強力な術を展開し続けたその手腕に感服し最後に名を聞いておきたかったのだ。
「お・・・鬼に名乗る、名など無い」
男は力なく項垂れながら、呼吸をするのも困難であった。その暑苦しい装束を脱ぎ捨て、最後の言葉を発していた。しかし、その言葉から、決して屈しない強い心は保ち続けていた。これから自分がどうなるか理解できていたが、心は負けずそれを拒否した。
「最後に言い残すことは?」
「貴様になど、言い残さぬ。もう、それは残してきたわ」
最後の力を振り絞って頭を上げ、酒羅丸に向かって一言放った。装束を脱ぎ捨てた事によって、闇に同化し暗殺者として晒すことの無いその素顔が露わになる。月明かりに照らされてその表情まで酒羅丸に伝わった。その男は過去の戦闘で爪痕の様な傷を負い、両目が潰れ盲目であった。攻撃に転じる事を失って尚、最強の防御壁の持ち主として前線に立ち続けたのであった。年は二十代であろうか・・・正にこれから全盛となり得るその年齢で、この様に使い捨てにされるとは・・・と酒羅丸はその男の体制を不憫に思った。
しかし、その酒羅丸の想いとは裏腹にその男の顔は、先程まで苦痛相を浮かべていたが、最後の言葉を言い放った瞬間に、全てを達成させたような清々しい笑みを浮かべていた。
「仞・・・やれ」
酒羅丸はその笑顔を見て、腸が煮えくりかえるような不快さを感じた。冷たく淡々と、上から見下ろすように、仞に告げた。先程までこの者を少しでも不憫と感じ同情までしてしまっていた自身が許せなかった。あくまで陰陽師は「敵」であった。陰陽師は我らを喰うわけでも無くただ殺す為だけに存在する非道残忍なる集団である。その集団に、哀れみを感じていた事は、鬼としてあるべき行為では無かった。
「御意」
仞は酒羅丸のその態度に気付き、有無を言わせずに、その男を喰い殺した。そして、鬼達の約三日間による無駄な軟禁状態は解放されたのであった。




