ガムはお菓子に入りますか?
俺は31歳、会社員。
…だった男だ。
トラックに轢かれそうになっていたチュパカブラを助けようとして道路に飛び出すと、俺はそのチュパカブラのかわりに轢かれてしまったようだ。
そして俺は転生したのだ。
…ガムに。
しかも、よく見かける粒ガムじゃなくて、今やあまり見かけないあの9枚入りの板ガムだ。
毎日一枚ずつ板ガムが、男の口内に放り込まれ咀嚼される。クッチャクッチャと男がガムを噛む度、口内からガムの悲鳴が聴こえてくる。
そして…とうとう残るは俺1人だけとなった。
「ああ…とうとう俺の番だ」
男は毎朝会社に出かける直前に1枚ガムを噛む。今日も男はガムを…俺を噛むのだろう。
「くそぉ、なんで俺はガムなんかに転生したんだ!前世じゃ特に悪いことせず、平凡に暮らしてたって言うのに。最後なんて生き物を助けたのに…」
男はスーツを着て、ネクタイを締めた。
そろそろガムを噛む。
「くっそぉ!逃げたくてもガムだから動けねぇ!あぁ…なんで俺がおっさんの口内をリフレッシュしなきゃならねぇんだよ。せめて美女だったらよかったのに…」
そしてとうとう、男は俺を手に取った。
「止めてくれ!俺はもともと人間なんだよ!31歳のおっさ…ヤローなんだよ!俺なんか噛んでも息リフレッシュなんてしないんだよ!頼むから俺の声に気づいてくれよ!」
男は雑に、俺の衣服を1枚1枚脱がして行く。そして、俺の薄っぺらい板のような身体が露にされた。
…なんて、官能的な表現してる場合じゃねぇ。
男の口内が近づいてくる。
「やめてくれえ!」
そして俺は…
『クッチャクッチャクッチャ…』
「やめっ…ギャアア」
『プウ~…』
「どわわ!てめ、膨らましてんじゃね…」
『パァン!』
「くっそ、弾けさせてんじゃねぇよ!」
『クッチャクッチャ…』
「噛むな噛むな!」
『プウ~…』
「おいおい!また膨らませてんじゃ…」
『パァン!』
「おまっ…いい加減にしろ!俺で遊んでんじゃねぇよ!!」
クッチャクッチャ噛まれたり膨らまされたり、俺は男の口内で弄ばれ、そして…
『ペッ!』
「おい…おいおい!」
ぺちゃっと、俺はその辺の道に吐き捨てられた。
「せめて紙に包んで捨てろよ!マナーは守れえぇ─…」
意識が遠退いて行く。
目が、覚める。
「なんだよ…夢オチかよ。つまんね」
そう言った時だった。レモン色のやつが声をかけてきた。
「お前もあめ玉に転生したんだな、ドンマイ」
イチゴ味と書かれた透明の俺の衣服。
どうやら俺は…
「嘘だろおおお!!!」
ガムが食べられなくなったら…スマン。
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