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俺たちは親友。

 ー うぉぉおおおおおおおおおおっ!!!! ー


 俺の雄たけびと共に一斉に襲い掛かったヤマパパ恨めしや部隊の精鋭達。

復讐に燃え、目は赤く血走り、もはやアウトオブコントールな狂戦士だ。

そしてやはりヤマちゃんのパパには俺達が見えているようで、襲い掛かる悪霊の群れを前に姿勢を低くして、何かヤバめの波動が出そうな控えめに言ってヤバめの構えを取った。


「はぁぁああああああああああああああああああ!!!!」


ヤマちゃんのパパが顔を茹蛸の様に真っ赤にして、鼻の穴と目をこれでもかと開きながら、身を震わせて絶叫した。


「レイ!! ガーーーーーーーン!!」


ドゴーーーーーーーーーーーーーーーー!!!


 両腕をガバッと、まるで女性のパイオツでも思いきり掴むかのように前へ突き出した瞬間、頭頂部の磨き上げられた、およそ摩擦というものの無さそうなソレからとんでもない霊力が巨大なレーザー砲となって射出される。


「なんだとーーーーーーーーーー!!」


一瞬の出来事……


「ぐわぁぁああああああああ!!」


俺以外のヤマパパ恨めしや部隊の友霊は……


「こんなの無理ゲーーーーー!!」


一人の残らず……


「しんごーーーーーーー!!」


まとめて……


「タクミーーーーーーーーー!!」


「おれたちーーーー!!

 来世は石油おうぅぅんにょああぁぁあああああああああ!!」


消されてしまった……


「は……。」


「かー!! ぺっ!!

 ふん、成仏せい。」


 膝から崩れ落ち放心した俺を見て、ヤマちゃんのパパがタンを吐きながら呟く。

静まり返る夜の峠に、後方に控える白いハイエースの静かなエンジン音だけが響いた。


「タクミ……。」


 親友だった。

ほんとうに、世界で一番大好きな親友だったんだ。


「最後……」


 親友がプリウスで事故を起こしたあの日、アイツは俺を慰めようとしてくれてたんだ。

俺はあの日、付き合ってた彼女に振られて、夜に無理やりアイツの事呼び出して。

それでもアイツは、一緒に走って忘れようぜって、そう言って笑ってくれたんだ。

アイツがアクセルを踏めば踏むほど、窓から吹き込む夜風が気持ちよくって。

楽しくて…幸せで…何もかも吹っ切れて……。

もう、今日死んでもいいやって……。

本気でそう、思ったんだ……。


「カッコよすぎだぜ……。」


 涙は出ない。

けれど、気持ちはあった。

確かな想いが…ここにはあった。

ヤマちゃんのパパは俺の前まで来ると、復讐に燃える悪鬼のような目で俺を見下ろしている。


「貴様で、最後だな。

 潔く、浄化されよ。」


 右手をガバッと突き出して内股気味に力を籠め「はぁ!!」と叫んだ。

もう終わりか…そう思ったその時。


「お父さんもうやめてよ!」


「ヤマ…ちゃん…どうして。」


「もうこんな酷い事しないでよぉ!!」


ヤマちゃんが大声を上げながら、フワフワと俺とヤマちゃんのパパの間に両手を広げて割って入ったのだ。


「消えろこの悪霊がぁ!!」


ズシャァァアアアアアアアア!!


「うわぁぁああああああああ!!

 おとうさぁぁあああああああああんっ!!」


えぇぇえええええええええええええええ!?!?!?!?!


 うそーーーーーー!!!

それアンタのむすこーーーーーーー!!!

ヤマちゃんのパパは何を血迷ったのか、右手に込めた霊力であろうことかヤマちゃんを思い切り薙ぎ払った。

ヤマちゃんは悲痛な叫びと共に、空に舞う焚火の燃えカスの様に散っていった。


「まだ潜んでやがったか!!

 この狡猾な悪霊共が!!

 貴様らのせいで俺の息子はぁぁあああああ!!!」


「いや今アンタ一番やっちゃいけないことしたぞ!!」


「うぅぅがぁぁあああああああああ!!」


 ダメだ……。

完全に理性を失ってる。

どうやら身も心も魂すらも悪魔に売り払ってしまったらしい。


ギャァァァアアア…ギャァァアアア……


「ん?」


 この音……。

走り屋か?

俺の後ろの方からふいにタイヤの激しくなる音が聞こえた。

近いな……。

どうやらそれはカメラを持って見守っていた数名にも聞こえているらしく、

我を忘れたヤマちゃんのパパに、後ろから必死に声を掛けていた。


「あ! 山内さん! 対向車線から車が来ます!

 危ないので一度こちらへ!」


「じゃかしゃぁ!!

 今ここで払わな逃げられるだろうがボケこなクソハゲコラァっ!!」

 

「もうほっとけよあんなハゲ。」


「けど、もし魅かれたら……。」


「そん時は幽霊にやられたって編集すればいいって。」


 く……。

チャンス…そう思ったが…甘かったか……。

あろうことか、ヤマパパに怒鳴り散らされたカメラマン達は早々に説得を止めてしまった。

そしてヤマパパはすぐさま俺の方へ向き直る。


ギョァァアアアア!!


 勇ましい走り屋が徐々に迫ってくるのが解る。

しかしヤマちゃんのパパはひるむ事無く、右手に込めた最後の一撃を勢いよく振り下ろした。


「くっ……。」


「死ねぇぇええええええ!!」


ギョァァアアアアギャギャギャギャァァアアアアア!!


「な! ちょ!! まっ!!!」


「ぐわぁぁあああああああああああああ!!!」


 それは、ミラクルだった。

ヤマちゃんのパパが振り下ろした右手の霊力で、俺は爆散。


「山内さん言わんこっちゃなーーーーーい!!」


「大変だ!! 救急車!! 救急車!! カメラは回しとけ! 使えるから!」


 それとほぼ同時に、コントロールを失って対向車線から飛び出したのは初心者マークの白のプリウス。

それがヤマちゃんのパパを巻き込んで、勢いをそのままにガードレールへ突っ込むのが見えた。


「へへ……しんご……」


薄れゆく意識の中…声が聞こえた気がした……


「最高のサプライズだったろ……」


タクミ……おまえ……ほんとに、しょうもねぇやつだよ……。


俺たちはハイタッチをして勝利の雄叫びを上げた。

くだらねぇ。

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