闘ってみてぇ!!
そうそう、隣にいるこのアホの名前は「タクミ」。
名前がもうムカつく。
そして俺は「しんご」だ。
俺は生前、EG6に乗りたかったが、名前のせいで辞めた。
大変希少なプレリュードを葬り去り、大成功を収めた俺たちは、奴らのタムロする駐車場の茂みの中にいた。
そこでは既に数台のスポーツカーやギャラリーが集まり、早速先程の事故のことで話題は持ちきりだった。
「またあのコーナーか……。」
「5型のプレリュードだろ? 下手なだけじゃねーの?
タヌキやイノシシも居ないってのに、100キロそこらで事故る要素ないだろあんな場所。」
「いや、あそこで事故った奴はみんな、人が飛び出してきたって言うぜ。」
お…さっきの話してるぞー。
俺たちの隠れた茂みの近くで4人の若い男がタバコを吸いながら2台の赤い2型ロードスターの傍に立って話をしていた。
年齢は25くらいか? だいたい俺らと同じ歳だろう。
そしてその話を聞いた途端、隣にいた親友はニタニタと変態のような笑顔で俺の方を嬉しそうに見るのだった。
その顔やめろこのブサイク。
「あ、その話聞いたことあるわ。
あれだろ? ここで死んだブサイクな走り屋の幽霊。」
ほれみろブサイク、お前のことだぞ。
しかし気づいていないのか、ポカーンと口を開け、チラッと俺の方を見ただけだった。
おい、お前いま俺のことだと思っただろこの野郎。
「あそこな〜、かれこれ20台以上は事故ってんだよな。」
「え? そんなにやべーのかよあの場所……。
俺あそこで飛ばすのやめるわ、こえーし。」
「そーいや聞いたか?
なんか一昨日テレビのバラエティで、この山が紹介されてたらしいぞ。」
「は? なんそれ? また走り屋ディスってんの?」
「いや、なんか心霊スポットとして紹介されてたらしい。
仮にもここ霊山だし、なんでも今度、すげー有名な霊媒師がここの悪霊を祓いに来るんだとよ。」
「んだそれ。
盛大に轢かれるぞ、ソイツ。」
「それな〜。」
走り屋達は声を揃えて笑った。
が……
「ゴクリ……。」
俺は息を呑んだ。
ちょっと、やり過ぎたか……。
霊媒師が……来るだと……。
「消されるのか…俺たち……。」
なんだか心細くなり思わず声が震えた。
死んだら、どうなる……。
いや、消されたら…どうなるんだろぅ……。
そう思った時だった。
「霊媒師……闘ってみてぇ……!!」
目を輝かせて左の拳をグッと握るアホが、そこにはいた。
タクミ…おまえ……ほんとに、しょうもねぇやつだよ。
「なぁ!! しんごっ!!」
しね。
飛ばすときは幽霊と動物に気を付けてね。