第4話 プールサイドとクレープ 弍
おはようございます。
こんにちは。こんばんは。
こちらはカクヨムのものを載せております。
カクヨムの方が早いのでもしよろしければ。
両方お付き合いいただけると嬉しいです。21.12/10
22/4/17日改稿
更に改稿23/7/3
よろしくお願いします。
浮き輪を持つ人、しゃべる人。
群れる人たちで騒ぐプールサイドの横に、にぎわう屋台がある。
残された葵と哲弥は、屋台へ向かう二人の姿に視線を送り笑った。
四人は幼稚園からの腐れ縁である。何かというと集まり、ともに行動をしよく遊び。離れていても糸で結ばれているのか、必ずどこかで落ち合うほど仲が良い。
「なんだかんだで主導権は優希か。翔も大変だな」
「あらぁ、姫が喜ぶなら私は何でも嬉しいです。あの二人もあれでいいみたいだですし」
哲弥はクレープを頬張り笑って話す葵に呆れ、踵を返す。
「優希のクレープを奪っておいて、よくもヌケヌケと」
「フフだって、ほしかったのです。哲弥は翔のように私のために買いに行くかしら」
「おれ? 行かない」
「ですね。いいですね。優希姫がたまにうらやましいです。私の殿は冷たい」
「ふむ。では鞍替えするかぁ?」
「考えます」
哲弥は屋台がある方を眺め軽く微笑む葵の頭を撫で、クイッと引き寄せた。恥ずかしげも無く哲弥は葵の頬に、ソフトにキスをした。
「今から買いに行こうか?」
「ん── 許さないです。こういうごまかし方をしますよね、哲弥は。それに─、言われる前に行かないと意味がないんですよ!」
笑う哲弥を見て笑う葵がいる。
黙々とクレープを食す葵を哲弥はマジマジと俯瞰し、発言した。
「でも本音は優希の食いさしがほしかったのでは?」
「あら? バレましたか。間接キスです」
「おまえなぁあ──(少し呆ける)」
「あら? でも買いに行くかなぁと言う思いも本音です。哲弥はダメダメです」
「フン、悪うございました」
葵にダメ出しを喰らう哲弥がいた。
軽く痴話げんかをし、二人は目線を合わせた。しょうがないなぁという感じで互いを笑い、そして屋台を見つめ二人の戻りを待ちわびた。
「翔のことだから私たちの分も買ってきます」
「そうだろう。アイツのことだから《《有り》》だな」
「誰かさんとは大違いです」
「ははは」
二人が意見を言い合い眼で笑いを取り合う最中、戻ってきた優希が葵にクレープを渡した。
「はいっ、どうぞ」
「ほらっ、見なさい。この気遣い! 翔がルックス以外にモテるのはコレです、コレ! 見習うように」
葵は優希を少し見上げ、頭を撫でた。優希の身長は葵より三センチほど、高い。
手の温もりに甘える優希は破顔一笑させた。
「ふふ、褒めても翔は上げないよ。ごめんね、葵」
はにかむ優希の頬に葵はキスし、即答した。
「もう、私が姫をスキなのを知ってて言いますソレ? 哲弥は私にとって二番目、そして妬けるけど優希は翔にベタ惚れ」
「葵……私も! 二番目にスキ。そうなの私の一番は翔なの」
横でじゃれ合う葵と優希を見て、哲弥はアホ面せしめ鼻息をついた。
「はいはい、おれとあいつのデキが違うのは認めてるよ」
「なに? 何がデキてるの。ほれ、テツ。受け取れ」
冷えたジュースを哲弥に渡し、笑う翔がいる。
爽やかに笑う翔に、哲弥はピシッと音爆ぜるデコピンを喰らわせ溜息をついた。
「誰かさんがそういうことをするからおれが比べられる」
「?…… 痛っ」
「んん、時間差か。言うの遅くないか。ソンなに強かったか」
「テツ……コレを持ってよ。落とす」
手に持つクレープを急いで哲弥に渡すと、翔は左腕を押さえ屈みだした。
優希が翔の異変に気付き近づくが、翔は近づけないように声を荒げ、哲弥に意識が向くよう言い放った。
「パフェ! テツに盗られるよ」
「ええ、やだぁ。私の」
クレープを哲弥の手から奪うと、優希は幸せそうな笑みを浮かべ満足している。
「おいしい!」
「うん、よかった。ごめん、ちょっと俺トイレに行く」
哲弥が肩に掛けているタオルを奪い、翔は急いでトイレへ駆け込んだ。
いきなり走り出す翔を哲弥は気にかけた。哲弥は胡座っていた半身を起こし、トイレを見つめた。
「ごめん、おれもトイレ」
「はーい」
葵は返事をし、優希は翔を少し気にしながらもフルーツ山盛り、アイスたっぷりなクレープを頬ばる。
「姫の大きいね」
「ふふ、翔が選んでくれたの、おいしいよ」
照れ笑う優希の髪を葵は撫で、消えていく二人を視線で追う。気にもなるが、とりあえず追わずに待つことにした。
(男便の後を追うなんてできません)
哲弥の姿は、男子トイレへ消え去った。数秒前にトイレに向かった翔は、悶々としていた。
(どうしよう、俺の腕が変だ。前も同じことがあったがまさか……)
翔は中に入るなり壁にもたれ、タオルに巻きつけた左腕を見、驚いた。
自分の腕にも拘わらず興味本位で斜視り、紅く染まる布を半分だけ外した。痣からプツプツと炭酸の泡のように、紅の粒が吹き出す。
(うわぁ、キモ)
困るよりも、率直な感想が頭に浮かんだ。
カタンという物音が発せられ、すぐそこに哲弥が現れた。
哲弥は翔の名を背後から呼んだ。気まずい顔をする翔は哲弥を見ると心の中で叫んだ。
(なんで追い掛けて来るんだ。テツ……来んな、見なくていいよ)
「翔、大丈夫か? その腕は」
「熱……い」
じんわり朱色に滲む左腕のタオルを右手で押さえ、荒い息を上げる翔がいる。そんな翔を気遣う哲弥がいた。
「出血? でもそんなとこに傷なんてあったか」
首を振る翔に、哲弥は有無を言わさず残りのタオルを剥いでいく。
翔は哲弥の心配する顔を見て、薄ら笑んだ。
「腕が熱い。困ったね。クスクス」
「いや、笑いごとではないぞ」
哲弥は茶黒く変色した布を床に、落とした。銀に艶め浮かぶカサカサな鱗痣を訝し、垂れ落ちる赤き糸に額を青くさせ表情を強張らせた。
「おいっ、なんだよコレ!」
哲弥の顔色は変わることなく、躊躇い顔の翔を睨めつけた。
トイレにいる、二人の様子も気も知らず、外ではプールを満喫する嬌声と人達で溢れていた。
お疲れ様です。
改稿の改稿を積み重ねごめんなさいご迷惑お掛けします。
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