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龍に喰われる前に喰ってやる  作者: 珀武真由
第二章 盆休み
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第40話 蒼い龍と青くさい翔

おはようございます。いつもありがとうございます。さぁて、今回もね、おつき合いの程よろしくお願いしますよ。

23/9/2日エピソード追加



 俺は朝食を終えるとヤミさんが待つ場所へと、足を急かせす。待ち合わせに指定された場所は涼しかった。

 着いた所には滝壺があり、気持ちよさとは反面に怖さも秘めている。滝の流れは人を飲まんと、勢いある飛沫を上げていた。


(すごい激流……、飲まれたら終わりだ)


 翔の目端で流れる清水はまるで、翔が身を投じるのを今か、今かと待つかのようにそこにあった。轟音の横に立つ翔は白滝を覗き込んだ。

 そんな翔の背後にヤミが静かに立ち、声を掛ける。

 

「早かったナ、優ちゃん弄ってから来ルかと」

「ヤミさん、いくら俺でも朝と夜は! ──!」

「ほう」


 ニヤけた人影(ヤミ)は翔を見るなり瞬時に、容赦なき拳を腹に入れてきた。しかし、翔は打たれたヤミの拳を即座に食い止めた。


「ごめん、(わきま)えてないかも?」

「うん、おまえは性欲が強い」

「そんなあからさまに……」

「理性が抑えられん困ったガキだヨ」

「ひどいな、そんな言い方はないよ。俺、優だけだよ?」

「そうか、その興奮(たぎり)を今はここに打つけろ」


(人を獣扱い?)


 翔は鼻息を荒くすると、横に流れる清流を眺めた。横見の翔のその隙をつき、ヤミは攻撃を仕掛ける。翔は応戦するも身体が温まってない所為か、動きが鈍い。

 構える翔の腕は瞬時に掴まれた。翔に考える間を与えず、鋭い目の(ヤミ)が翔の腕を組み捻り地面へ叩く。翔は俯せられ力強く地面に落とされた。面食らう翔は滝の音を耳に拾い、頭を白くさす。

 呻きと同時に体を起こす翔は、ぼやけた視界にヤミを捉えた。腕に力込め、身体を奮い立たす翔がいる。翔の動きに気をつけるヤミは瞬時に飛び跳ね、間を取った。


(今日のヤミさん、圧巻だ)


 格闘に置いて、あまり敗れたことのない翔の横で轟音を上げる垂水も、次に備え構えるヤミ、その両方の気迫が翔を追い込む。

 翔が完全に起き上がると、瞬きする間も与えず詰め寄る相手の強い拳がある。次に振り上げられる(かかと)、繰り出される蹴り、それらを翔は腕で塞ぐも相手の全てがぶち当たった。

 二人が打つかる体躯の鈍い音が、閑かな木々に木霊する。

 翔は身を屈め、攻撃を凌ぐので精一杯。一つ耐え、二つ耐えするも、ヤミに応戦する隙がなく困る翔がいた。


「どうした? そんなだったか、おまえは?」

「?!!」


 翔は言われ考えた。


(わからない)


 普段陽介(おじ)さんに合気を鍛えられ、流すのは得意だ。攻めも不得手ではない。なのに身体は言うことを聞いてくれず何かが()()。おかしいと自問する翔にヤミは細々と、()()()を与える。


「防ぐばかりではダメだぞ? それとも実戦派か?」

「!」


 印を構えたヤミが呪言(のりと)を唱え、翔に捧げた。


一二三(ひふみ)昇龍四五六(しご路)降龍八九(はく)息吹き七難(なな)ん降りませ御霊(みたま)急々如律』


 ヤミは人差し指中指で指印を繰り出し、地面に振り突き立てる。一筋に払われた指結は地面を裂き、翔の足下を崩す。

 翔が身体のバランスをなくし困ると、眼前の狐目はしたり顔で笑っていた。

 一時だが、奈落を感じた翔がいる。落下する翔を、大口を開けた瀑布が待ち構え飲み込んだ。


(身体が出来て(温まって)ないなんて言い訳だ。何かに頼ってるんだ)


 沈んで行く翔の身体は気泡に包まれていった。落ちて行く身体とは逆に、浮く水泡のなんて綺麗なことか。

 翔は水の泡立つ粒を眺め、反省し始めた。


「……」


 そんな翔に声が届く。

 ヒントの続きだ。


「気付イたか?」


(ヤミさん!)


 鮮明に脳裡に焼き付く声に、沈んでいく者は戒められた。

 

(ああ、水底に落ちたにも拘らず慌てない俺がいる)


 翔は目醒めた能力に頼っていた。ヤミはそんな翔の甘さを悟り、此処に呼び鍛え始めたのだ。

 ヤミの気配りに翔は反省する。


(バカな俺……わかっていただろうに、人間何か特別な物を持つとそれに甘えてしまう)


 気づいていた翔だったが、甘かったらしい。

 蒼く染まる水底に身を委ねた翔の前に、いきなり光る丸い物が二つ。放たれる光と同時に、翔が持つ左腕の鱗痣がキラリと疼いた。


『キャハ、翔クン、キミは()()()()()ね』


 落ち着いていた翔だったが慌てた。翔の口から気泡があぶく。腕の逆鱗を抑える翔に、内に棲まう『住人』が囁いた。


「五月蝿い、出てくるなよ?! 【暴食(銀龍)】」

『フウン。傍観できればいいけど出来ず、出たらごめんなさい』

「そこまで気は弛んでないよ」


(最近何かにつけ喋るコイツが味方に見え、何処かで気が緩み安心しているのかもしれない)


 翔は自身に宿る人格(ストッパー)を思い起こす。笑われるかな? と考えるもすぐさま、否定した。


(いや、あいつはたぶん叱咤するだろう)


 水中だというのに呑気に(おもん)みる翔は、鋭く耀く二つ穴に眼を凝らす。怪しい光があるもんだと見据えたそれは、生き物の双眸であった。白い結膜の中に金の虹彩、中央に蒼い瞳孔という不思議色を携え、翔を見るやギロリと動く。

 その瞳の持ち主は、巨大な龍だった。龍は翔を瞳に映すと顎を惜しみなく広げ、そこにある身体を狙う。

 翔の口から溢れた泡は、龍の鼻にぶつかる。そんなことはお構いなく、蠢く物体は翔に突っ込んできた。突進された翔は尖った牙が当たる寸前、短刀を出し防御の構えを取ったが瞬く間に、手から刀は無くなった。


「??」

「それは没収ダ」


 ヤミの声とともに消えた刀。翔の手は柄を握ったその形のままに、固まる。まさか、刀剣を奪われるとは思わない翔は唖然とした。


「なっ!?」


 翔を襲う牙がある。向かってくる牙に開いていた手を一旦閉じ、そして急いで広げた。手で牙を押し留めるも、力負けてしまう。それはそうだ。龍の怒りと云われる逆鱗を奮え立たす体躯は翔の、数十倍はある。

 そんな巨体が進んで来たのだ。


(何の冗談?)


 龍の猛攻。眼前に開かれた口から吐かれる水に、踏ん張る翔。顔を力ます翔自身を促すように、清らかな流れを思わす澄んだ声がある。


『冗談? 冗談でこんなことは起きんぞ?』

「!!」

『して少年、お前は内に何を宿す勇気か? 力か? それとも?』


 軽々しく喋る、青緑の鱗を持つ滑らかな龍体が翔を魅了した。先ほどまで荒々しい動きを見せていた体はピタリと止まる。声に耳を傾け、翔も真っ直ぐ水に浮く。龍の背鰭(せびれ)はまるで万里の長城のように長く流れ、その先にある尾は水の影に隠れて見えなかった。

 しかし、神々しさは伝わる。


(押され、水飛沫の壁に隔てられ、龍の全容に気が付かなかった)


 水を煌めかす碧い鱗の粒の反射が翔の瞳に目映い。白い獰猛な牙でさえ翔には力強い水晶石に見え、瞳は釘漬けられ囚われ、離れない。


『そうか。【暴食】を宿すは貴様か後継者!』

「は?」

『立派な銀の鱗が腕にある。お前が銀龍を宿す少年、そして後継者だな』

「後継?」

『我らを統べる長の話だが?』

「いや、それは(おひい)だろう」


 翔は龍の顎を掴み離さず、そのまま問答した。不思議がる翔の不意を突く者がいる。思いもよらない言葉が翔から洩れ出た。


『「そんなことより喰いたい』」

(うわっ、声が裏っ、違う。この意思は暴食だ)


 翔の口から出た言葉は、卑しかった。にも拘わらずクール(冷ややか)に微笑む蒼い龍がいる。


(俺の気力はそんなモノなのか?)


 自分を蔑む翔に気づいた龍は、翔に気遣いながら【銀龍】に、話し掛けた。



 お疲れ様です。ご拝読ありがとうございます。

よろしければ感想、ポイントなどお付けいただけると嬉しいです!勉強に励みになります。

お待ちしてます。

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