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龍に喰われる前に喰ってやる  作者: 珀武真由
第二章 盆休み
32/63

第31話 モテすぎ注意

おはようございます。いつもありがとうございます。

すみません。改稿していたら話増えました。

今回もおつき合いの程よろしくお願いします。



 

「おっ、七十麟(なとり)疲れたのか?」

「先輩」


 校庭に涼を取りに来た生徒達の中に、翔の馴染みの先輩がいた。

 と言っても、ここにいる者は翔にはほとんどが馴染みだ。見かけた級友や年輩達はこぞって声をかけにくる。翔はヤミに見せた笑顔とはまた違う笑みを、皆に振る舞う。


「なぁ、七十麟。今度のクラス対抗リレー出てくれ」

「ん? 先輩? 部の対抗ではなくクラスって可笑しくありませんか」

「実は部の方では内緒で申請したが、他部も同じ考えで……」

「え、ちょっと待って。勝手にエントリー、しかも他の部もって何ですか?」

「ああ、オレのバスケ部と、空手部、陸上部、剣道と軒並み八件」

「は? 確かに助っ人として他部で活躍しましたが体育祭でも……」

「お前運動神経良すぎんだよモテは辛いねぇ」

「悪い気はしませんが……」


 まだ息整わない翔だったがなるべく異変を感じさせず、会話をする事に努めた。バスケ部の先輩が翔に助っ人の申し出をしているが他の部まで同じことを考えていると、知らない話が勝手に進んでいることに翔は項垂れる。


(球技大会なら率先するけど体育祭はちょっとね)


 と困るも、腹の内を見せない翔がいた。


「俺、聞いてません」

「おう、そうだろう。みんな思う処有り有りで? 申請が通れば良かった話だけど余りにも数が多い以前にお前は遣うなと」

「そうでしょう、当たり前問題です。部は一歩譲ってクラスって先輩、ますますおかしい。一学年も違いますし」

「そこはオレの三年終わりの秋を飾ってほしいのよ。ついでに学園生活最後の青春、優ちゃんとデートで飾らせて」

「ヤだ!」


 真顔で返す翔に、頼んできた人は肩を小刻みに震えさせ、地面に手を置いたと思いきやいきなりの土下座。


「頼む。そんな即答せずに! お前にバスケを教え、技術を仕込んだオレ様の願い。優ちゃんを」

「即答当たり前!! それに技術って、ほとんどがずるのスリーポイント。そして試合で決めたのは俺です! 先輩の頼みでも絶対嫌……ってうーん、三人でなら……三人でデートしますか?」

「やだよ、思い出にならんじゃないか」

「くすっ、じゃあ優は諦めてください。リレーは実行が許可するなら考えます」


 三年の先輩と(ガン)突き合わす翔の元に、話を横から訊いていた色々な生徒が湧いて出た。

 ここにいる者は考えることは皆同じらしく、翔を勧誘し始めた。


「え、それならオレ、オレの(クラス)も」

「いや、ぜひ我が組に」

「こっち、こっち」

「いや、こっちだ、翔頼む」


 翔は一斉に取り囲まれ、身動き出来ないでいる。その集団に向け「渇」と、太くも澄んだ声が放たれ、そして校庭にも響いた。

 声は木々を揺るがし、空を舞う鳥を地面に降らせ、立っている者の中ではいきなり力なく膝を落とす者までも……。

 目を丸くする翔につられ、取り囲んでいた生徒達も目を見開きそして、動きも止んだ。


「ヤミさん?」


 声の主は冷たい狐目を生徒達に向け、輪の外から淡々と語りかけた。


「第三者が口挟ムものではないが、お前ラ落ち着け」

「はあ?」


 何人かの生徒が間の抜けた反応を示す中、ヤミは地べたに座る生徒を立たせていた。


「強い者の力ヲ借りたいのは分かるが体育祭はその組で力合わせて争うから面白いのであって。翔が混ざった所で面白いのか?」

「!」

「部外な俺が口出し、気分ヲ害したら謝る。でもナ? 俺なら正々堂々と対抗していル催しが見たいがどうダろう?」


 「それもそうだ」と皆が納得し、ヤミのお蔭で場は収集され落ち着いた。ほっとした翔はヤミの傍に行こうと足を動かすとまた、先輩に止められる。困り顔で振り向く翔の肩を鷲掴むと今度は思いっきりその身体を振り始め……、がくがく揺らされる翔は肩が少し疼くも堪えた。


「祭りは許そうしかし、さっきの女の子は聖鈴の穂斑(ほむら)ちゃんだよな?」

「ああ、そうだ。どっかで見たと思ったら隣の聖鈴の……」


 ほほうと、納得している翔に詰め寄る顔がある。


「優ちゃんは諦める。その代わり聖鈴の推し嫁を。知り合いなら紹介してくれ?」

「は? 違いますよ。俺、先輩に聞いて嗚呼と思っただけでそもそもあの子がどういう子かなんて忘れてましたもん」

「おい、聖鈴の花嫁を忘れる? 毎年行われる嫁祭でずぅうと一位過ぎて殿堂入りしたあの穂斑ちゃんを忘れる?」


 翔は髪を掻きあげ、少し唸ると「まったく」とぼやき、真顔で言いきる。


「俺、優希以外興味ないんで」


 当たり前の如く、さらりとスマートに(きびす)返す翔に一同がしゃがみ込むと「何でこんな奴が」と喚いた。


「え? 優希以外可愛い子いる?」

「そうだよな。お前は自分のルックスにも鼻掛けず優ちゃん命、実に素晴らしいがムカつく」

「ムカつかれても、ええ~?!」


 周囲を伺い、嘆く先輩の肩を撫でる翔はまた取り囲まれ、しかもなぜかその皆に拳や平手を軽く見舞われ始めた。


「痛いからポカポカしない。ねぇ俺、変なこと言った?」

 

 集団のやり取りを目視していたヤミは笑っていたが、いつ終わるのか分からないそれに痺れを切らす。待ちくたびれ「はぁ」と大きく溜め息を吐き、翔をつまみ出した。すると生徒たちはヤミを一斉に睨んだ。


「邪魔しないで、おじさん」

「おじ……また、おじさん……」

「おじさんには解んないでしょう、モテない奴の僻み」

「こら、その前にお前らは学業だろう? それに僻ムだけ虚しくなるゾ」


 ヤミは文句言う少年を冷たく睨んだ。正論を持ち込むヤミに、一同は肩の力を落とし、各々が小言を洩らし壁際や木陰に座る。先ほどの三年も「オレのひと言から」とお辞儀して詫びるも「優ちゃんは考えておいて」とひと言洩らし、去った。翔は「ありません」ときっぱり断ったが強請る者の耳に届いたかは、判らない。

 「ふぅ」と安堵の息を吐き、満面な笑顔をヤミに向ける翔がいた。


「ありがとう、ヤミさん」

「いや、こちらこそ口を挟んだ。スまん。お前らの事なのに部外者がすまんな」


 ヤミはポケットから煙草を出すと火を付けず咥えた。そんな姿を見た翔はくすくすと笑い出す。


「ううん、ほんとありがとう助かったよ」

「体育祭か、見たいものだがあいにく見られない。残念」


 翔はヤミの小言に素っ頓狂な表情を晒す。翔がうさぎのように目を丸くしているので、ヤミは「何だ」と訊ねた。


「いや、まさかヤミさんの口から見たいが零れるとは」

「ああ、陽介さんガ代わりに頼みに来たんだ。保護者は入れるんだろ?」

「うん、あっ叔父さんその日、研究会だ」

「ふっ、でもナ陽介さん来る気満々だゾ?」

「え?」

「俺が無理だと言ったらまた色々テ配してた」


 「叔父さんらしいや」っとはにかむ翔に、ヤミも白い歯を見せた。そんな二人を癒そうとする優しい風が吹いた。枝がざわつき始めると、土を漁っていた鳥が一斉に羽ばたく。


「肩ハ大丈夫か?」

「うん、気分も先輩達のお陰で和らいだ」

「そうか、なら良いが無理はするな」

「うん」


 素直に応え、肩を摩る翔がいた。でも少しだけ眉間に皺が寄っている。ヤミは翔の眉間を抓むとふっと笑い出す。


「……モテる男は辛いな」


 ヤミの呟きに翔は照れるも無邪気に笑う。その明るさにヤミはやれやれとニヒルに笑んだ。

 手に持つ煙草を咥え直す。


「おまえには笑顔が似合う」

「ありがとう、ヤミさんはカッコいいよね」

「ん〜、本心かそれは」

「どうだろう、内緒」

「ふっ、まぁいい。笑っているおまえを見てると楽しいよ」


 ヤミは翔の頭をわしゃわしゃと撫で、咥えていた煙草を携帯灰皿にしまうと「モテ過ぎ注意だな」と溜め息と一緒に小言を零す。翔はこのぼやきに【龍】も含まれていることも察し、「うん」と小さく踵を返しおずおずと照れるように頬を緩めた。


 


 お疲れ様です。ご拝読ありがとうございます。

こちらカクヨムにも。

あともう一つの現代ファンタジー「鍵」こちらもカクヨムにも。

あと異世界ファンタジーもカクヨムで投稿してます。よろしくお願いします。

あともろもろ教えてください。誤字脱字、よろしければ感想、ポイントなどお付けいただけると嬉しいです!勉強に励みになります。

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