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龍に喰われる前に喰ってやる  作者: 珀武真由
第一章 夏休み
19/63

第18話 地下を蠢く光と地上を蠢く光

おはようございます。

後追い更新ですが、よろしくお願いします


そして23/7/18日改稿。よろしくお願いします。



  

 空は細々と走る稲光も相俟って、夜だというのに暗くはなく、ほんのり明るく……──。雲の合間をチリチリと光が走ってはどこかで発し、後ろから追いかけるようにゴロゴロと雷鳴が響いていた。

 雨は止みかけ、雷が一日の終わりを告げようとしている。


 同じ空が広がる平地には、四人の人影がある。その内の一人は地面に倒れていた。


「翔! 大丈夫か!?」

「翔さま」

「翔ちゃま」


 翔に駆け寄るヤミに続いて、トテトテと小さな足も駆け寄る。


「なぜ、二発も打った」

「えっ、ちゃまではなく」

「えっ、翔さまではなく」


(? どういうことだ誰も打ってない。では最後の雷は誰ガ?)


 先ほど起きた大きな雷。あれもまた、翔に直撃していた。ヤミは悩む。


(俺ではない二発目。巫女でも。もちろん翔自身ではないなんだ?)


 ヤミの質問に答えるどころか、各々が違う返答をしている。ヤミが考えていると翔の小声が耳に飛び込む。


「っ寒」


 ヤミに肩を掴まれた翔は寒さに震えた。翔の震えがヤミの指に伝わる。気温は(ぬる)いが、体にダメージを負った翔には耐えることができず弱っていく。


「まずいな。帰ろウ」

「えっ、でも」

「誘拐になろうがなんだろうが置いとけない」

「確かです」

「ちゃま。おうちにかえる?」


 一人の巫女がヤミに訊く。ヤミは笑顔で、頭を撫でてやる。


「帰るか」


 翔を背に担ぎ、濡れた前髪をたくし上げ、結界越しに外の様子を窺う。

 周囲に人なし、車無し。

 目視すると手を柱に翳す。

 結界を解こうとしたヤミに、慌てる巫女が一人。地面に何かを見つけヤミを呼んだ。


「ヤミさま、アレ!アレ!」


 ヤミの足にしがみ付き、巫女は見つけた地面を指差した。


「ああ、そういうことか」


 指差れた場所をヤミが凝視すると、土偶のような陶器が土から盛り返されている。ヤミは陶器を見た瞬間、何かを察した。


「なるほど。これの所為で……」


 地面からせり上がる土偶のようなものをヤミは軽く蹴り上げ、手で受け止めた。

 それは人型を模した土人形だった。ヤミは狐に似た細目で、マジマジと見やうと嘲笑う。

 

「ハハハッ、さすがはおひい様の母上。精巧過ぎるって言うか」


 土人形を割ると同時に、放たれた言葉は怒りが混ざる。


「不気味だわ」


 土人形の中に、臍の緒があった。

 赤く、今切り離したと見紛うように蠢くそれは不気味であった。生命を誇示して脈打つ臍の緒をヤミは睨む。

 不気味に生々しいそれはヤミの手の中で弱るどころか力強く脈打つ。眉をしかめるヤミの注意を引くかのように、肩に担がれる翔が呻いた。


「はぐうぅっ………」


 まるで、共鳴を起こしているように声を上げる翔を見てヤミは確信する。


(なるほど、翔の依り代(土人形)をココに埋め、翔が平地ここにいるように「龍たち(翔を狙う者)」に錯覚を与える。すごいな死しても尚翔を護るとは)


 ヤミは頷き翔を見やり、手のひらの異物に目を戻した。


「うっぅうう」


 唸る翔に三人は気付く。

 翔は薄目を開けていた。何かを視ようと揺れる睫毛の隙間から瞳が動く。その淡い光に、巫女が薄らと映り込む。


「ッ、き、み……」

「翔さま、起きないで」


 巫女は起きようとする翔の額に手を翳し、印を唱えた。翔は起きるどころか巫女により眠らさせられ、意識は遮られ─……。

 寝ついた翔を見て、鼻息をつく巫女は叫ぶ。


「ヤミさま、処置を」

「ああ、そうか」


 ヤミはへその緒を手のひらに乗せ、呪言(ノリト)を唱える。巫女がそのサポート(手伝い)に入った。


一二三二三七六(ひふみふみなむ)地を十逢瀬(ちをとおうせ)


 ヤミの横では巫女が指で印を結ぶ。


(バク)


 結ばれた印と言霊の力が合わさり、臍の緒は土を纏い土人形が出来上がる。ヤミは巫女の手に、人形を渡しただが次の瞬間。

 渡された土塊は、臍の緒がドクンと脈打つ毎に綻び、形をパラパラと崩す。


「クソッ、どうする」

(……壊すのではなかった)


 髪を掻きむしり、考えるヤミの耳元に声がボソボソと入る。それは微かに響く翔の声。


「しっかり……持て。術、仕上げる。形代を近くへ」


 力ない言葉を漏らす翔がいる。ヤミは巫女に指示し、言われた通りに人形を翔の元に掲げた。

 翔は鎌鼬で手首を傷つけ、血を垂らす。土人形の上にぼたぁと注がれると声を発し、呪言(ノリト)を唱えた。



 崩れはじめていた人形は整えられ、中にある臍の緒も静まり返った。


「翔、おまえ」

「じゃない。停止装置(ストッパー)

「えっ」

「フウ、おい。手首……血を、止め……てくれ」

「えっ?」

「寝る、アッ。その前におまえ、つけられたろう? 阿ほうめ」


 翔は言いたいことだけ話すと、寝息を立てた。


「あっ、おい」

「ちゃま、翔ちゃま。寝てる」

「……はぁ?! なんだよお前は」

(俺がつけられている? どういうことだ……)


 溜め息を吐き、翔を降ろすと着ている服の袖を破った。ヤミは翔の手首の処置をしている。


「ヤミさま、埋めてきました」

「ああ、ご苦労」

「はい」


 屈託ない笑みで答える巫女の頬を、ヤミは優しく撫で考えを反復する。

 なぜ、この平地に足を忍ばせ、いもしない翔がいると思ったのか。


(見事。おびき寄せられた)

 

 真意を悟ると巫女に話しかけ、ふと翔のことを思う。


(翔は、初対面の巫女を気遣(きや)った。なのに俺は……)


「ヤミさま」

「ちゃま?」


 ヤミは足蹴にしたことを巫女二人に謝り、後に続いて詫びた。


「おまえ達がココに来たのは、あの土人形の所為なんだな」

「たぶん。そうです」

「すまんな。おまえ達を蹴ったワ」

「ヤミさま、いつもだよ」

「うん、ちゃま。すぐ蹴る。気にしないよ」


 やんわりとヤミを諭し、当たり前のように話す巫女達。


「ハハハ、いつモか」

「うん」


 ヤミの言葉に無垢な笑顔が応える。してやられたと、ヤミはほくそ笑んだ。

 結界を払い、帰るヤミは振り返り盛られた土を見た。

 胸に敗北感と、なんとも言い難い気持ちが湧き上がり顔をくしゃくしゃにした。


「翔、お前の母。恐いワ」

 

 呟いたあとヤミは考えるが─。

 翔を見て、背負い直すと足を動かした。


(考えることが多すぎダ。まずは帰ろう)


 翔を背負うヤミは、街道に差し掛かる十字路でタクシーを拾うため立ち止まった。

 夜道を走るタクシーを探す。


「あれ? ちゃま。車は」

「……鍵無くした。だからタクで帰るゾ」

「はい」

「ちゃい」


 ヤミがタクシーを拾う手を挙げた時、後ろから女の子の大きな声がする。


「あっ」

「ッン!? なっ」


 後ろから声がすると同時にタクシーが止まり、扉が開いた。

 後ろから声を掛けた者は、背後から手を掛ける予定だったが弾みでヤミの身体を押してしまった。


「あああっ」


 可愛い少女の声。


「ッだ! こらぁ」


 叫ぶヤミに、膨よかな胸があたる。


「ブッフ!」


 ヤミはさらに怒るが、揉みくちゃに席に放り込まれた上に車内だ。

 声を荒げることしか出来ない。流れるように、開いたタクシーの中に滑り込んでしまったヤミと声を掛けた少女。その直ぐさまに巫女達も乗り込んでしまい──、バタンと扉は閉められた。


「タタッ! 狭ッ」

「ううん。痛いよ」


 さらに押し込まれた少女とヤミと翔は、とんでもない体勢になったが巫女達はお構いなしに席に座り指示を出す。


「楓三番地のビル」

「びる」

「あっオイ!」

「ハイ、ではシートベルトを」


 タクシーは問題なく閉まると走り出した。少女も乗せて……。

 慌て目撃していた者がタクシーを追いかけるが、タクシーは闇を跨ぐと数あるテールランプへと消えていった。


「優希」


 後ろから声を掛けた少女は優希だった。

 心配する陽介だが、タクシーは目前にはおらず。優希を乗せ走り去ってしまった。


(優希もだが、翔は無事なのか? それにスーツの男はいったい……)


 街道には時間帯もあって車がひしめき走っている。よりどり彩るテールランプがチカチカと点滅しまるで胸騒ぎを現すようで、陽介を悩ました。







 お疲れさま。

こちらでも、リアクションが欲しいです!

参考にさせてください。

と言う訳で、ブクマの登録

ポイントの☆をお待ちしてます!

23/7/18日現在、同じことを思う。

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