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龍に喰われる前に喰ってやる  作者: 珀武真由
第一章 夏休み
17/63

第16話 鈴の音が鳴り響く

おはようございます。

今日はというかここ最近、忙しいんだよね。

でも頑張りますよ。

お付き合いよろしくお願いします。


23/7/14日改稿です。

よろしくお願いします。


 

 暗闇は静かに翔とヤミを飲みこむ。気つけば夕闇が濃く、辺りがどんより沈んでいた。

 ダンデライオンが艶やかな黄色を浮かせて揺れていたが、二人により踏みつけられる。


 翔に顔を捕まれ踏ん張るヤミと、それを持ち上げようとする翔。


 手から逃れようと藻掻くヤミだったが翔の指爪は伸び、徐々に顔の皮膚にめり込んでいく。やがてヤミはそのまま身体を持ち上げられ、足の爪先が浮いた。

 持ち上げたヤミを、冷ややかな面構えで翔は笑う。

 先程とは、あからさまな雰囲気違う翔がいた。


「翔くんにさ。無駄な入れ知恵止めて貰えますぅ。ヤミくん」

「ガッハッ、お前」


 ヤミは翔の指の隙間から外を覗く。そして落ち着きある声で語りかけた。


「銀龍か。そんな簡単に交代できるのか?」

「翔くんが今不安定なんですよ。ふん、私のことも知っており尚且つ「おひい」のこともとなりますと……」

「ガアッ、離せ! 銀龍」

「血族縁者ですか?」


 翔と入れ代わった『住人』がヤミを詰める。ヤミが蹴りを繰り出す中、翔の爪はヤミにめり込み血が垂れ落ちていった。

 ヤミの紅い花が翔の顔に散る。

 翔は微動だにしないどころか顔に付いたヤミの温く、紅い花弁を舌で舐め取りご満悦な顔を見せびらかした。


「さっきの翔……は可わ、いかっ、たぞ」

「ソレはどうもです」


 (住人)の手を掴み、ヤミが抵抗する。


「こぉの、馬鹿ち、から」

「ふむ。そんなこと言われましても、ふふふ」

「……」

「翔クンは自分で自分のことを知る必要があるのです。ですから入れ知恵しないでください」

「何をする気だ?」

「いただきます。あなたの内なる龍を」


 翔は唇を卑しく舐め、あざ笑う。艶めかしい顔つきでヤミを睨んでいる彼は、翔ではなく『住人』だ。


 ヤミの前に『住人』がいる。


 住人は口を開き、ヤミの内に潜む龍を喰らおうと……。

 すると、『住人』とヤミの間にポテポテと駆け寄る二人がいた。おかっぱの日本人形のような小さい二人。愛くるしい瞳を輝かせ、ピタッと地面に手を翳し住人()を見るとしっかりと呪言のりとを落とす。


(トオ)ツ神。急々如律(キュウキュウニョリツ)

「何?」


 驚く住人の足元には、小さな巫女二人が呪言を唱え終えた。

 二人は叫ぶ。


(レェイ)


 咄嗟に、術返しする住人《翔》がいる。

(ゼロ)


 翔の足元と地面に手を置く巫女の間に、二重の結界が出来上がった。不完全な結界を目に焼き付ける巫女達は声を、上擦らせた。


「あわあわ。そんな」

「どうしよ。どうしよ」


 巫女達は戸惑い、瞳を滲ませた。一人は泣き、もう一人は住人《翔》を睨みつけている。睨みつけた巫女は住人()と瞳が合うと威圧感で怯え、顔を強張らせて唇を震わせた。

 そんな二人に『住人』は微笑みをひとつ。


「ふぅ、う゛えっ」一人は声を上ずらせ、もう一人は再度キッと睨むが翔と瞳が合うとやはり怯えた。


「そうですね、結界は必要です」


 住人《翔》は足を軽く二回踏みならし、「零」と唱えた。


 すると、平地の四隅に光の柱が浮かび上がっていく。四角形の空間を煌々と照らし出し、結界の壁ができあがった。


「ふふふ、代わりに張って上げました。君達も後で能力を吸って上げましょう。君達は愛らしいので眠り姫のようにソフトにして上げますよ」

「ひいぃぃいいい」

「やだやだやだ」


 怯える二人は「雷」と唱えた。フラッシュを焚いたような眩い閃光が住人の足元を捉える。幼い巫女の非力な抵抗であった。

 ヤミをも一捻りさせる住人に対して小さな稲光を打つけてもダメージはなく、住人はかったるい表情をして片足を軽く振るだけであった。


「ふうん。私に喧嘩を売るのですか」


 住人は巫女達を冷ややかに瞰下(みおろ)し、辺りを見直す。


「良いでしょう。ですが、まずヤミくんを先ィぃギぃッごふっ」


 と、言葉の最中に鮮血を吹いた。


 住人()は口を触り、手についた生温い物をその目で確認する。

 『住人()』が驚いていると住人《翔》の意思とは別に口が開く。

 巫女達が不思議そうに翔を眺めると言葉を、呪言を放つ『翔』がいた。  


遠忌懾伏(えんきしょうふく)


 リィィンと鈴の音が一つ響いた。


 同時に巫女達の着物の袖が光る。巫女の袖の中には、丸く可愛い鈴が入っていた。

 二人は袖から光る鈴を出し見遣る。


「これは鈴の()ちから」

「うん。誰が鳴らしたの?」


 二人は翔を見上げた。すると目が合う。滲んでいる二人の瞳には、優しく微笑む翔が映った。


「翔さま」

「翔ちゃま」

「鈴を、借り、自……中の自分を……呼ん─、だ」


 ゲホッ、ボタタ──。翔は大量の血を吐いていた。手の力が緩み、ヤミを手放す。翔は息を絶え絶えに、刀で身体を支えた。 

 ヤミの額から吹いていた血垂れは止まる。傷が少しずつ塞ぎ始めていた。傷が治りかけているヤミは、浮かない顔をした。


「翔、お前……」


 隣では刀を支えにしゃがみ苦しむ翔がおり、手を差し伸べるヤミだったがその手は雷で払われた。


「ッ()──翔」

「触れるな。ヤミ、逃……げろ離……ろ」


 見上げた翔は苦痛で顔を歪ませた。


「ヤミさま」

「ちゃま」


 二人の巫女は怯えるも、無我夢中でヤミにしがみついた。先ほどの態度と打って変わり、巫女を抱きとめ慰めるヤミがいた。


「翔ちゃまの意識が」

「翔さまが」

「大丈夫。恐くない。怖くない」


(ああそうだ。まだガキだョ。まだ。こいつらを含め目の前にいるあれもまたただのガキだ! 自分の。俺の使命を忘れるな)


 ヤミは泣き始める巫女を撫で、二人の瞳から零れ落ちる涙を拭うと頷いた。


「おまえら、分かっているナ」

「はい。これですね」


 鈴を握ると一つ音を立て、笑う巫女達がいる。


「ああ、配置に着け。神鎮めだ」


 ヤミの命令に従いトテトテと小走りに散る二人がいる。

 翔を前にヤミは煙草に火を灯し、考えに耽る。長い煙を吐き、再び視線を翔へと遣った。


(……美人には弱いンだよ。俺)


 煙太の火を足で消し終え、何かのタイミングをヤミは計っている。


(仕返してやる銀龍。助けに成るか解らんが翔、待ってイろ)


 翔を俯瞰し、ヤミはその場から足を動かし自分で決めた持ち場へと進む。 

 翔のために。ヤミはいつの間にか翔を気に入っていた。


 屈む翔はヤミの動きにピクリと、反応したが……。

 眉間に皺を深く寄せ葛藤する翔。

 自分の内なる対話に身を沈め、翔()()の意識はトンと暗闇に落ちて行く。ヤミはそんな翔に気付かない。

 

何故(なにゆえ)に!?」


 怒りを言葉に乗せ、叫ぶ翔を中心に孤を描く風が一瞬散った。

 怒りに叫ぶ『住人』の耳に、声が届く。


 凛とした声が──。


 翔の中のもう一つの人格『停止装置(ストッパー)』だ。


(それ以上の狼藉赦さぬ。言ったよな! 俺は停止装置(ストッパー)だと、ん? 銀龍《住人》よ)


 苦しむ翔は自分と葛藤している。


「グウッ。龍を喰うのが私の宿命。間違ったことはしていないです」


(フン、ソレを止めるのがもう一人の(おれ)だ。龍を喰らうもどうするも決めるのは(本体)住人(おまえ)ではない。覚えていて貰おうか銀龍(じゅうにん)


「うざいですね。もう一人の「翔クン」は」


 刀で身体を支え、俯く翔の()()は続く。

(ふん、その為に俺がいる。狼藉を働くな)


「グフッ」

 血を吐く翔がいる。内なるもう一つの人格ストッパーは『住人(銀龍)』を止めるに()()を傷つけることを厭わない。


「これ以上、体内で【鎌鼬(かぜ)】を放つと翔クンが死ぬよ?」

(ふうん、確かに。だが治癒は目覚めている。お前と(おれ)の根比べだ)


 ヤミとの戦いで【鎌鼬】を掠め取った翔は、自身の体内に放つ。翔の身体は立つことを放棄し、刀とともに地面を這い転がる。口からは大量の血が溢れ、身体は細かな殺傷痕が無数に出来始めた。痙攣を起こし、このまま沈むかのように見えた翔だが──!


「ガァァァアアアアアアアア」

(!!!!!!!!──。)


「違う! 私は封じこまれません。全てを喰らい、金龍を金色(こんじき) を喰らいます」


 叫び立ち上がる住人()がいる。

翔の中の人格(ストッパー)と対話は終わり、素に戻る(住人)がいた。

 翔は立ち上がると概観を見渡し、フラつく身体を踏ん張った。

 自分の立ち位置を確認している。一直線上正面にはヤミ。両端に巫女を確認すると銀の瞳が妖しく光る。


「!!」


 翔は正面のヤミを睨む。翔はヤミに手を翳し、何かの準備をし始めた。

 翔は口端を噛み締める。

 ……ヤミはそんな翔に眉尻を下げ、訊ねた。


「俺は銀龍《住人》を鎮め、お前を助けたい。無理かナ?翔」


 翔に睨まれるヤミも静かに手を翳し、応える。 


「!!!」

「まだ銀龍だな。手伝うからそんな顔するな。おひい様と同じ顔が醜く歪むのはどうかト思うゾ?」

「ふっ、お前が消えれば治りますよ」


 睨み合うヤミと翔がいる。翔が手に持つ刀を抜き始めると、脇で控えていた蛟竜(ミズチ)が翔目掛け飛んだ。 

 刀に絡まる蛟竜がいる。


「なんですか? 斬ります、よ」


 刀は半身だけ、鞘から抜き出された状態であった。蛟竜が抜刀を阻止するために絡んでいる。翔が蛟竜を雷で焼きこそうと蛟竜を睨み付けたところで、鈴の音が響いた。


 美しくも儚い、音が鳴る。


 鈴音を響かせる巫女はヤミと声を合わせ、音を放つ。翔を縛る為、神の御魂を下ろす呪を唱えた。


み給え、|一二三、二実代、五六七世《ひふみ、ふみよ、いむなぁんせ》神力、通力(おり)なんせ。十九(とうこ)!」

《リイィイイイン》


 合わさる鈴の音と声に、(住人)は眉をひそめた。ヤミと巫女達を眺めると降参の意を示し、深く息をついた。


 住人は降参する。


 呪言と共にヤミと巫女二人の身体が白く光り、三点を結ぶ。結ばれた後、天から轟音と共に一筋の雷が翔に目掛けて落下した。


 雷と共に豪雨が降り、四人を叩く。雨はそこにいる者達を浄めるかのように、激しく降り注いでいた。


 




 

お疲れ様です。

お付き合いありがとうございます。

一応カクヨム先行です。よろしくです。

いつも昼休みはぼへーしてるけど、せかせか

動くよ!

ブクマ、ポイントお待ちしてます。

ありがとうございます!

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