第12話 交差する二人 翔と住人
おはようございます。
こんばんは、こんにちは。
カクヨム同時投稿です。
こちらの方が半周遅いので先を知りたい方は
カクヨムお待ちしてます。
そして23/7/13改稿です。
よろしくお願いします。
住人と対峙し色々と整理出来ず、次から次へとあらゆるものを翔は見せられる。
さらに両親の際どいシーンを見た翔は思考の限界により、何かが弾けた。
なにかが──ぷつりと。
「おいっおまえ、好き勝手し過ぎてないか? いくらお母さんと記憶を共有していたからとアレは見せるべきなのか」
鬼の形相をした翔が、『住人』に食ってかかる。住人の首を絞め上げたのは別人格の翔だった。
それに対し『住人』は嘲笑う。
『いやぁ、その様子だと始めから聞いていましたね。もうひとりの翔クン』
「あたり前だ。人格というだけで俺も翔だ。それとも、俺を呼ぶ為か?」
『まさか! 君のような邪魔なオプションに用ないです。あるのは翔クンだけしかし、統合しないとあなたは消えないのです。ふふふ難儀です。私も吸収されるのですか?』
「……母はそう望んだ。だから俺がいる。そもそもお前が現れ無ければ──今頃は」
普通だったんだと言いたげな、翔がいた。
『でしょうね。だが、別次元発動です。こうも考えてください。私が産まれたのは何故か。世界各地の龍がこの【日ノ本】に集結するのは何故か。古の契約? ○○の条約。そもそも条約とは何に対しの条約なのかふふふふふふ』
「饒舌だな。その舌抜いてやろうか」
『おっと怖いです。こっちの翔クンはほんとうに怖いです。やめてくださいほんと、メイワクです』
「おまっ」
住人の衿元を翔は掴む。すると住人の着ていた黒の浴衣が肌蹴た。骨張った胸に、力無さそうな白い肢体が覗き見る。
その様はまるで、歴史絵巻の餓鬼のように翔には見えた。だが肢体の白さの──、透き通る肌に浮く鎖骨、肋骨の輪郭に唾を飲む翔がいる。
黒の和装生地は、肌の白さを余計に目立たす。最初の印象は消し飛び、別人格は別のことを考える。
儚く、弱々しい目の前の奴を守ってやりたいと。
(やばい。主人格の影響かこういうのに弱い。それにこいつ、たまに女みたいなんだよな)
「なんて細さだ。気が遣なくて……」
『フッ。そういう所は翔クンですね優しいですが』
目線を逸らし、悪びれている翔に爪を伸ばす住人。そして細長い髪をしならせ、翔を襲う。
驚いた別人格の手から雷が放たれ、住人の身体は萎縮させられた。
雷は別人格の中に戻る。
「言ったはずだ。俺は停止装置だ。おまえら《《龍神》》のな。翔が耐えれるように造られた特別な人格。お前が考えるただの人格障害ではない。後に必要な俺だ」
怯えさせられた住人の体は、小さい銀龍になった。龍は翔の胸に、フヨフヨと抱きつく。
翔の胸にすがりつき甘え、顔を曇らせ、体をうなだらせる銀龍がいた。
「そんなに緊張して、汗ばまなくても……。今、披露した雷は『住人』の【暴食】が組まれている。身体が龍に戻った原因は【暴食】の能力【喰らう】だ。そこまで流用してないはず。この力はより強大へと他の龍も喰らい蓄積させ─って、まだ震えてる。この【暴食】は元はお前の能力だぞ」
『解ってはいたが……まさか、自分が喰らうとは思わず。それに消えるのは怖い』
「はぁ……勝手な」
(クソッ、よくもまぁぬけぬけと……しかし考えものだな。主人格には応えるぞこれ。こんな事言われたら主人格……)
「ハァァア」
溜つく翔は小さくなった銀の龍を抱え、撫でると口付けた。翔は龍に息を吹き込む。
小さかった龍は元のと、まではいかなくとも子どもの姿になった。
「お前に消えてもらうと俺には好都合だがそれを決めるのは主人格だ。俺に権利はない。それになッ、文句を言うとお前が悪いのだぞ。あんなことを仕出かすから反省しろ」
『ウウッツ』
「わかれ……っ、よ」
いきなり脱力し、足下から倒れる別人格を小さい住人は支えるが支えきれず下敷きとなる。
『むいむい、おきて………』
「ん」
住人の小声が翔の耳に届く。翔は反応し、ゆっくりと体を起き上がらせた。
「あれ、俺……『住人』?」
『重い……ぐう。小さいと不便……』
「? 住に……どした? 痛っ」
小さい住人に額に手を翳された翔は体に、静電気が走る。微力な電気の原因は住人であった。
翔に手を翳す者は吸われた力を取り戻した。
『まったく怖い、怖いです。もう一人の翔クンは本当に怖い』
元の大きさに戻った住人はしゃがむ翔を見下ろすと今度は、顔を掴む。
『翔クン、私に吸われてくれるかい』
「俺、死ぬ?」
『いや、私が翔クンに成る。君は私の中で眠る』
「……」
考える翔がいた。翔は不自然な顔と発言を住人にしたためた。訝しがる住人は眉をひそめた。
翔の別人格が考えていた《想定》が起きた。
「ううん。俺としてはイヤだけど……『住人』も苦労してるみたいだし……いいよ。本当はイヤだけど『住人』の気が収まるなら」
『??!』
「今まで共に会話もした気が置ける仲だしまぁ、母の悪口、俺の悪口ばかりだけど原因は母だよね」
『?!??』
「いいよ。『住人』にこの身体を。あっ、でももし入れ代わることが出来るなら五回。優希とはデートさせて月、五回!」
『えっ』
「えっ」
おかしな提案を持ちかける翔に、住人は戸惑った。吹き笑うと翔の顔を覆っていた手を、退けた。
『えっ、いやいや普通は』
「そうだね拒否るよね。でも住人がそうでありたいならまぁ仕方がない」
住人と話している翔は何かを感じ、回りを窺う。キョロキョロとあちこちを見渡す翔に深く息つくと、住人は手で隠していた顔を晒す。
『ごめん、翔クン。君は優しいです。私は喰うことしか考えてなかったです』
「……それより、見られてる。どこからかわからないが視線を感じる」
見渡す翔を笑う住人がいる。
『ふふ、ははははハッ。動き出したか。見つかってしまった。私の居場所が……ごめんです』
「住人?」
『私はね、金色から、龍神から産まれた異物なんだですよ。せっかくあいつから出たのにそれを、巫女にして性悪術者が……。ここから出て色々と喰らう予定でいたのですが、君の中は居心地が良過ぎ……。だから居座ってしまいました。長いは禁物と思ってましたがズルズル……。気が付けば出入り口は消えていました』
銀龍は哀しそうに翔を見やり、肩をとぉおんと押した。
『起きて……翔、私はここにいます。今暫くは居ますからまた、【夢】か、もしくは【意識下】で』
「あっ、起きる前にさ」
『ん』
「何で靄、ピン……クなっ?」
「……瞳海沙が。君のお母さんが好きな……色だよ」
ぽそぽそと小さな声で話す住人は、面伏せている。
(ああそう言えば、お母さんはピンクが好きだった……)
「かぁ、さんッ」
魘され、飛び起きた翔はまた陽介と額を付突き合わす。
「痛ひゃい──ななっ、おじさっん」
「痛ぅうう」
気が付くと翔はベッドに寝かされ、様子を窺う陽介が傍らにいた。
今は二人、痛がり悶絶する。
「おじさん、痛つぅいよ」
「やぁ今日はよく突き合わすね。同じ突くでもおじさん! エロい方が良いな」
「痛たた……、はぁ? 何をほざいてるのおじさん頭大丈夫? 打ちどころ悪かった?」
「ええ? おじさん真剣だよ」
「……ぷっ、いつものおじさんだ。現実だ」
吹き笑い安堵する翔に、陽介もほほ笑んだ。
お疲れ様です。
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