第11話 交錯する三人。瞳海沙と翔と住人
おはようございます。
こんにちは。こんばんは。
こちら、カクヨムでも投稿しています。そちらもお待ちしています。
今回も母の話です。
お願いします。
23/7/13 改稿です。よろしくお願いします。
初恵の腕の中、何も考えたくない翔は陽介に返事はしたもののぽぅとしていた。瞳は銀色に、瞳孔は縦にと、妖しい光をさせた。
(母が作った人格……そんなこと言われても)
翔の銀の輝きに陽介は怪訝する。翔の顔を押さえ、上瞼と下瞼を指で拡げ、目を覗きホウッと、安堵の声を小さく唸らせた。
翔は、そんな陽介にビクついた。
(おじさん。ごめん)
分かってはいるのだ。陽介が自分を気に掛けてくれていることに、でも翔は気が動転し、心配するおじを突っぱねた。
(わわっ。おばさん見ないで)
初恵の手からも、同様に離れた。
「おばさんありがとう。大丈夫、たぶん大丈夫」
初恵からも離れ、床にしゃがんだ翔は頭を抱え、体を折りたたんだ。
「モヤッとする……何かで発散してスッキリしたい気分。おじさん、おばさん。俺の中には何がいる?」
瞳孔が縦に光る翔が見つめる先には陽介と初恵がおり、二人はどう話しを切りだすか悩んでいた。初恵は陽介を見て頷き、全てを話すように目で合図する。
陽介は唾を飲み深呼吸し、胸を撫でおろす。翔と目線を合わすため、床に四つん這いになった。
「翔は『住人』との面識は」
「えぇと物心ついた時からかな。よく、夢には出て来てた」
「もう一人は?」
「あぁ鏡に映ってた。そして睨まれたでいいのかな」
話を始めようとする陽介が翔の瞳を真っ直ぐ、覗きこんだ。
翔は翔でタイミングを合わせたかのように頭をもたげてしまう。眼の中を覗く陽介と動きが重なり、互いに頭突きをかまし、床に突っ伏した。屈んでいた翔は身体を更に縮こませ、唸っている。
額を突かれた陽介は痛さに悶えるもすぐ起き、翔を気遣う。
「翔、翔クン、おいっ」
「ウッ。おじッ、さん離れて」
翔は小声で陽介に離れるよう促し、両腕で突き放した。そんな翔の回りを、風の円陣が張り巡る。
部屋の中だというのにつむじ風が起き、翔の身体を細かく傷つけた。旋風に甚振られ、床に屈伏した体は平面に伸び横たわる。陽介は翔に急ぎ近づき、倒れ込んだ体を揺さぶり名を呼んだ。
「おいっ、翔。し ょ ぅ」
(ああ。おじさん……の、こ え……)
『……翔』
(? ……お母さんの声だ?)
翔は身体を床に預けた。気を失う翔は朦朧となり、脳小の下へ意識が導かれ落ちていく。
……落ちた先には、『住人』がいた。『住人』は翔を待ち侘び、意識下にある位置から自分の位置へと拾い上げる。
『翔クン大丈夫ですか。気分は』
「あっ『住人』……最悪だよ」
『クスッ、よかったです。声が返ってきます』
「あ、返事うん、してるね」
胸に手を当て、安堵する翔に住人はいきなり遠くを指さした。そして安心する者の顎を掴んだ。
『話すより視た方が早いです』
住人が、指をさす方向に翔は目を誘導させられる。眩い金色に輝く龍神と母、瞳海沙がお互いを見つめていた。
(あれは母だ……お母さん……)
翔は、眼前にある映像を視せられ驚いていると声がする。
懐かしく、覚えのある優しい声、もう一つはオペラ歌手のテナーの音域の如く、響く声が。金色の龍と対話する瞳海沙がいる。
◇巫女装束の瞳海沙《母》だ◇
「この地を納める古の神、金色の古き龍よ。儀式に則りこの地を全てを、統治したまえ」
母の音が響いた。
この後、母の声は翔の耳に届くことはなく、姿だけが届けられる。
◇俺は何を見せられるのだろう◇
瞳海沙の姿を翔が瞳に焼き付けると舞台は暗転した。瑞々しく艶やかな血色の幾層の鳥居が交差する。
幻想的な朱の鳥居が連なって社へと建ち並び、その先の扉が開いた。そこには金の龍神がおり、巫女装束の瞳海沙が対峙していた。
重々しいがテナーな声の持ち主は瞳海沙と対峙している金色だった。瞳海沙の手には金剛杵と神楽鈴が携えられている。
最初は静かに浮いていた金色の龍神だが、瞳海沙が鈴と金剛杵を打つ。そして舞い始めた。
龍も一緒に舞う。
舞っている二つの姿は神々しく、厳かに執り行われる儀式に驚きが隠せない翔がいた。
瞳海沙と金色の円舞が終わり、見つめ合う両者が手を取り出した。金色は咆哮とともに、炎と雷を吐き出し叫ぶ。穏やかに舞っていた雄大な姿とは違い、身を縮め喘ぎ苦しんでいた。
「!」
驚く瞳海沙がいる。
咆哮を轟かせる龍神の口からは、銀の龍を産み出した。
(龍が産れた? あれは『住人』なのか?)
◇翔は目を見開き住人と顔合わす。住人はまた静かに指をさす◇
(何を話しているんだ)
◇翔に、瞳海沙の声は届かない◇
「……」
瞳海沙は二頭に分かれた龍に叫んでいる。二頭に別れた、金色の龍と銀の龍。交互に畝り、飛び舞うと各々が違う方向へと飛んで行こうとしていた。
「……」
瞳海沙は手に持つ金剛杵と神楽鈴を打ち鳴らし、二頭の龍を音色だけで縛り上げた。
『……』
「……」
◇龍と瞳海沙の会話が悶々と流れるがやはり、翔には訊こえない◇
力強い《《音》》を発し、金の龍神は瞳海沙に語り掛ける。話し最中、離れて行く銀の龍を金色が尾で叩き、力強く絡め捕った。
(銀の龍。あれはおまえで俺の中にいるんだな……)
◇聡い翔は目の前の光景を見ながらちょっと、理解した。住人に目配せると隣で柔らかく、住人がほほ笑んでいる◇
(今見てるのは、母が持つ記憶の断片)
「……!」
『……』
「……」
『各地の暗黒龍。青龍、白龍、各々気高い位持つ龍がこの日ノ本に集まろうとしている』
「……!」
『……古の契りが◯◯の条約。同盟の楔…………!!!』
◇翔の耳にやっと龍神の声が聞こえた◇
金色が話していると銀龍が金色を尾からゆっくりと、喰らい始めた。
その姿は、共食いでもしているみたいに。
「……」
『……』
瞳海沙は金剛杵を持ち直し、鋒を胸に添えた次の瞬間。瞳海沙は金剛杵を振りかざし胸から腹へ、一直線に肌を切り裂く。
◇目を見開いた翔がいる◇
瞳海沙の足元に、深紅い海が出来た。
「!!!」
『………』
瞳海沙の顔には紅い花弁が散り咲くもそんなことは気にしていないのか、綺麗な微笑を浮かべている。
金色が驚き、目を丸くしていると瞳海沙は綺麗な声音で祝詞を謳う。詞に口寄せられた銀龍はまるでここが棲家だと云わんばかりに、瞳海沙の切り開かれた疵から体内に入っていった。
開いた傷口は【侵入者】を招き入れ、閉じていく。
『……』
「!! ……」
(なんて事だ! 痛々しすぎる。他に術はなかったのか)
◇白い肌には赤い筋が一本◇
柔肌に浮く赤い筋道に、金色は痛々しく思うが何もできない。
瞳海沙は呼吸を整え、胸についた一文字を見るもそれが当たり前かのように着崩れた衿元を袷た。
金色は、瞳海沙の体内にある銀龍について伝う。
『……』
「……」
納得する瞳海沙に金色は告げる。
『瞳海沙。われの為に用意された依り代よ、しかし吾の所為で今は『銀』の依り代と化した哀れ者よ』
「……」
『よいか、銀を完全無垢な者に閉じ込めよ。そうでなければお前は死ぬ。さればまた銀が出てくるそれは成らん。銀は『暴食』この世の理を、全てをおまえの《《殻》》ごと喰らおうとする故』
「……」
『良いな必ず銀龍を封じ次に繫げよ。そうそう吾の依り代も忘れず用意せよよ』
◇金龍に苛立つ翔がいた◇
(くそっ! 声が……。先ほどから忌々しい龍の声しかしない!)
金色は云いたいことだけを残し、姿を消した。
(なぜ母の声は聞けない? それにズケズケ厚かましい龍だ!)
龍神が去ると瞳海沙はゆっくり地面に膝をつき、倒れた。
◇金龍の悪口を思ったあと翔は、倒れている母を助けようとするも住人に止められる。横にいる住人は慌てる翔をなだめ、静かに語りだす◇
『ここは、記憶の中、干渉することは許されない』
(許されないってことは干渉することが……できるんだな、では!)
◇走りだそうとする翔の手を取り、住人は母を見るようにと告げた◇
(なんだよ! 邪魔するな銀)
◇ムキになる翔のデコを住人は叩き、冷静さを取り戻させた。住人は首を振る◇
(そうだ……確かに、済んだことだ)
◇項垂れる翔の頭を住人は撫で、耳元で囁く。住人の言葉に翔は顔を赤らめ耳を閉じた。住人が甘く、嘗めるように熱気を帯びる吐息の言葉は──翔の耳まで赤くさせ、鼻穴を膨らませた◇
(ハゥ、なっ。あぅ! これも見せるのか……目の前で行われるこれは、俺が生まれるには必要不可欠だけども!!)
場面が暗転し、翔の父と母が布団の上にいた。互いに瞳を合わせ、唇を重ね互いの着物を脱がし合い布のすれる音がささめく。
◇恥ずかしがっていた翔だが段々熟れ、普通に眺めていた◇
(あっ、二人が着ている白い着物は良く寝間着として愛用されていた。俺はあの姿をよく揶揄った)
二人の肌が静かに重なる……。
◇恥ずかしげに見る翔はむず痒さを覚え固唾飲み、両親の耽る行為に釘付けだ。母の白い躰にある紅い筋は艶めかしく、父が舌でゆっくりなぞる。顔を赤面させた母に父は応えるように接吻を交わしていた◇
(父の行為はまるで儀式だ。腹に宿るであろう俺に刻印を押しているようにも……)
両親の姿は暗闇へ……閨へと消え入った。
◇翔の中で何かが弾けた◇
お疲れ様です。
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