使い捨てロボット ロボット視点
大事な人に捨てられた
心を持つ人型の機械は
路地裏で一人座っていた
何日か経った雨の日
そこに一人の少女が来て
一緒にいてくれた
独りだった彼にとって
それは救いだった
彼女と共に生きたい
と思えるほどに
彼は心があれど機械だから
自分の意思などは抑え
彼女のやりたいことを
一緒にやっていたが
彼は楽しそうだった
彼女は一度も
好き
とは言ってくれなかったが
一番のお気に入り
と言ってくれるので
それで満足しようと思った
彼女は彼を褒めてくれた
目が綺麗だと
笑顔がかっこいいと
彼は素直に喜べなかった
彼女が褒めてくれたのは
全て作られたもので
「彼自身」を
褒めてはいなかったから
しかしある日
彼女が好きと言ってくれた
嬉しかったが
機械である彼には
分かってしまった
その「好き」に
特別な感情など
一切ないことに
その瞬間
今まで抑えていた
負の感情と
好かれていないという
虚しさに耐えられなくなり
彼は逃げ出した
そしてまた戻った
彼女と出会った
あの路地裏に
自分の導線を引きちぎり
けれど記憶が入っている
メモリだけは残して
安らかに眠りについた