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THE BLACK KNIGHT  作者: じゃみるぽん
三章・忍び寄る神の手
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【3章・平穏な日常】3

初めての予約投稿です。不具合やミスがあるかもしれません

ヘルブリンディ邸に戻ったアルスは驟から受け取ったワイングラスをもう一度手に取り、僅かに残った中身を流し込む様に飲み干す



いつもより少し後味の悪いワインも、周囲の軽やかな楽器の音色と飛び交う明るい会話で何とか誤魔化し、気持ちを切り替える



「あれ、アルス。また命を狙われたの?」



「あぁ、護る方が狙われてしまうなんて……笑えないよな」



セレスのこの心配も今月に入って何度目だろうか、見た目こそ汚れていないアルスだが折角セットした髪とわざわざ王都でオーダーしたタキシードの近くで血飛沫などたまったもんじゃない



アルスの差し出す手を取り、セレスティーナとアルスは学生達が踊る中央へ向かう



音楽に身を任せ踊る二人は美しく、見る者全てが動きを止め、その動作一つ一つを目で追ってしまう。アルスはそれからガーネットにグレイスやセーレ、違うクラスの女の子とも踊る



Sクラスでシトリーだけは踊らなかった。アルスだけじゃない、誰とも踊らずただ他のZクラスメンバーと話しているだけ



時折笑顔を見せるシトリーもアルスからしたら無理をしているようにしか見えず、望んで命を救える程万能では無い自分の力不足を痛感する。勿論アルスが直接的に関係している訳ではないが意識してしまうのは護衛の性か



▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢



闇ギルド 驟との謎の邂逅から三時間程経ち、Sクラスだけでなく他のクラスも交えて会話しているこの場に何やら深刻そうな顔をして近付いてくるシロッコ=セーズ=ヘルブリンディ



「どうしたシロッコ、そんな顔して……」



「屋敷の外で死体が見つかってね……それも招待客じゃない人間の」



同じAクラスの生徒達がシロッコに尋ねる。当事者であるアルスにとって耳の痛い話しだがあくまで平然を装い、驚く素振りを見せる



「最近、貴族を襲う輩が多い事もあって王国騎士が調査に来るらしいんだけど……」



「「だけど……?」」



シロッコの出す言いずらそうな雰囲気で場の緊張感が高まっていく



「-----青薔薇騎士団が来るって……」



「おいおい…シロッコ、彼奴らは王都に居ないぜ? それに人が一人死んだくらいでネルマンディーの私兵が出向いて来る訳が無い」



Aクラスの生徒が言う。アルスも同意見で、舞踏会に暗殺者が出没する事は多々ある。人は死んでいるもののそれだけの事でわざわざ来るというのだろうか



「ガーネット、何か知らないか?」



「何かって何を?」



「青薔薇騎士団の事」



「あー、私青薔薇騎士団が王都に来ている事自体今知ったわよ」



「そうか、セレスは?」



「私も知らなかったわ」



「ん”〜……突然王都に来て事件の捜査って有り得るのか?」



「何か考えはあるんでしょうね、ついでに私達をスカウトしに来たりとか……力量を測りに来たとか」



軽食を摂りながら会話するSとAクラスの生徒が少しざわつく。スカウトと聞いて高揚している様だがあくまで憶測。少し珍しい騎士団が此処に来るというだけで解釈の仕方など幾らでもある



「その可能性もあるけど……嫌な予感がするよ」



「私も」



「セレスと同じく」



それから数十分後、シャルル=ネルマンディー青薔薇騎士団長がヘルブリンディ邸に到着する。ヘルブリンディ邸のメイド達が忙しなく動き始めた事でアルス達も察する事が出来た



張り詰めた緊張感の中、何やら会話しながらヘルブリンディ学園長と共に現れたシャルルはアルスを一瞥し、ほんの少し視線を右下に移した後、ヘルブリンディ学園長との会話に戻る



(何だ…?)



アルスは自分の右下を確認する為に視線を落としてみる


----やはり何も無い



「アルス、俺達ここに居なきゃいけないか?」



「エリゴスだけ帰るか? 疑われるぞ?」



「-----分かってるよ……残るさ」



楽しい舞踏会から一変、青薔薇騎士団の騎士から軽い事情聴取を受け、互いが謎に気まずい雰囲気になる。気まずさが絶頂に達し、気持ちを整える為にヘルブリンディ邸を出て、外に足を運ぼうとしたその時、セレスティーナに腕を引っ張られそのまま屋敷を出ていく



「ヴァイオレット!! 少しの間ガーネットを頼む!!」



少し離れた位置に居るヴァイオレットは軽く腰を曲げ承諾する



ヴァイオレットにガーネットを任し、隣接する庭園に向かう二人。日が落ち始め、咲き誇る黄色い花が夕日に照らされ輝いている。周囲に人影は無い、一息ついたアルスはタキシードのシャツのボタンを外し、黒い蝶ネクタイを緩める



「私が連れ出しといて言うのもおかしいけど……疲れた?」



「そうなのかな…でも心配される程では無いよ?」



そう言って笑うアルスの表情からは全く”疲れ”を感じさせない


周囲に人影、そして気配を全く感じなかったヘルブリンディ邸の庭園だが突然セレスティーナの隣にとてつもない圧、いつしかの白いモヤの様な強大な存在感を感じる



雷に打たれたように全身に衝撃が走り、近くに”危険な存在”が居るにも関わらず、アロンダイトの柄に手をかける





















セレスティーナは驚く、これまでアルスの剣術を直に見続けそのクセに特徴、強み、動きに”慣れた” と、そう感じていた



しかし違った。ほんの一回の瞬きの間に起こった出来事、脳の処理が追い付いた頃にはセレスティーナが立つ僅か数センチ横の地面が抉れている。学園でのアルスの実力は正に氷山の一角、隠しに隠され加減に加減を重ねた実力だったのだ



自分に影響が出ていない事から結界魔法で自分が護られたと理解出来るが何せ一瞬、驚く声も出ない








『イタタタ…………これはマズイぞ……』




突然聴こえる少年の声、何処か聴いた事ある様なこの声にいち早く気付いたのはアルス



「----お前シルフィードか!?」



抉れた地面から少し離れた位置に倒れているシルフィードからは謎の緑色の粒子が噴出していて空に消えていっている



「し、シルフィード様!?」



時間差で驚くセレスティーナは足がすくみその場から動けない



倒れるシルフィードに駆け寄るアルスからはさっきまでの尋常じゃ無い気圧される様な圧力を感じない



「----え? シルフィード様?」



またもや時間差でアルスの発した単語に反応し、錆びかけの機械の様に振り返るセレスティーナ



『やぁ……セレス、それにアルス。サプライズで突然現れてみたんだけど…また消えてしまいそうだ』



「俺としたことが……どうすればいい!?」



「シルフィード様は精霊よ? 人間の様に縫合する訳にもいかないし………」



『ハハハ、魔力でいいよ。放出した分の魔力があれば再生出来る』



聞いた二人は直ぐにシルフィードに駆け寄り、裂けた傷口を二人で塞ぐ。アルスは自分の中にある魔力を、セレスティーナは外から吸収した魔力を自分の体を通して流し込む



「中々止まらないね、この粒子」


「えぇ、アルスは魔力大丈夫?」



頷くアルスは見栄を張っている訳では無い、日々鍛錬を重ねているアルスには未だ成長限界は訪れていない



『すまないね…本当に、アルスは悪くないよ。あ、アルスって呼ぶね……この粒子は魔力が凝縮され具現化した物でね…精霊によって血や肉の様な物さ』



「駄目じゃないですかっ!!」


「し、死んじゃいます?」



『まぁ、多分大丈夫』



宥めるシルフィードの左腕は肩が裂けたとは思えない程軽快な動きでアルスとセレスティーナの腕を軽く叩く


粒子の放出が止まり、服に付いた砂汚れを軽く叩いたシルフィードは立ち上がり頭を搔く



『もう一度言うがアルスは悪くないよ? 顕現出来るのをセレスに内緒にして突然現れた僕が悪い………それに、』



『迅雷』



アルスはシルフィードに『迅雷』で近付き口を押さえる。シルフィードも少し抵抗したものの息を止めようとしている訳でもなければ危害を加えようとしている訳でも無い押さえ方だった為に直ぐに黙り、静止する



アルスがセレスティーナとシルフィードに目で訴えかけている方向から鎧の擦れる金属音が聴こえてくる。現在ヘルブリンディ邸には騎士は駐屯していない、では誰か




「----不審な音が聴こえたので駆けつけてみれば……貴方でしたかエルロランテ家の御曹司」


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