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THE BLACK KNIGHT  作者: じゃみるぽん
三章・忍び寄る神の手
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【3章・岡目八目、少しの暗躍】

アルスがエクリプスの休憩を挟みながら駆け始めて三時間経った頃、体内で魔力の回復を感じながらふとある思考に陥る


(魔力がギリギリの状態で魔法を使っていいのか………?もしも王城でガリウス第二王子が暴れていたらセレスとガーネット、カルセインを守りきれない。フロイド団長が居る前でアロンダイトを抜く訳にも行かないし……)


アルスは魔力を残す事を決め、エクリプスの速度を上げ王城を目指す



▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢


王城〜玉座の間〜



一方王都にある王城ではオニキス共和国から帰国してきたガリウスとその仮の婚約者であるオニキスの王女がアトランティス国王と謁見を行っていた



「堅苦しい仕来りもこれまでにしよう。これからは自由な発言を許す」



謁見お馴染みの挨拶から国王と一家臣としての会話の一通りの流れを終えアトランティス国王が切り出す



「はっ、では父上…単刀直入に申します。私とオニキス共和国第一王女イザベラ=オニキスの婚約を認めて頂きたい」



「当然オニキス国王の承諾を得てここに来ているのだろうな?」



「えぇ、既に調印を得て此処に参上した次第です」



貴族同士の婚約には平民の婚約とは異なり政治的に大きく影響を与える為、アトランティス王国を始め複数の国が婚約時の調印制度をとっている


王家にも適用されるこの制度は本来ならば国を挙げての歓迎祭が行われるはずだった


しかし今回は王太子の遠征やオニキス共和国という遥か遠くの国を往復する兵力が嵩み”歓迎会”という規模が縮小され王城のみで行われるイベントとなった


しかも、つい先週のバラムトレス子爵家の報告の事もあり王を始め、王太子、近衛騎士団長、王国騎士団長が今回の婚約に疑念を抱いている



「ガリウスよ、お前がもし仮にオニキス共和国の王女と婚約するのならば………お前はどちらにつくのだ? この回答次第では調印をする訳にはいかない」



「……っ…!?」



アトランティス国王の突き放すような言葉に驚きを隠せないガリウスと直接声には出さずとも伝わってくる周囲にいる家臣達の胸を撫で下ろす様な安泰の雰囲気と反対に無表情のままただ一点ガリウスを見つめ流れる冷たい雰囲気



「な、何故ですか?」



「----何故だと?ガリウスお前……何しにオニキス共和国まで留学しに行ったんだ? まさかとは思うが、恋人を見つけるためか」



「違います!私は王国周辺の国々の情勢を調べ、王国の未来に役立つ国力増強方法を研究する為に!」



「そうだ、それなのに何故帰国して開口一番が婚約の話なんだ? -----確かに、王族の婚約は華があり、”未来”があり、祝福するべきものだ。だが”時と場所と場合”を考えろ。何故王国の双璧である騎士団長二人を王都から離れさせた?」



玉座の間の雰囲気は婚約どころの雰囲気では無い、ガリウスは俯き表情が見えないが隣の王女は真っ直ぐ国王を見ている。周りの家臣達も国王の怒りがここまでとは思ってもみなかった様で汗を流しハンカチで拭き取る者まで居る



ガーネットにカルセインは他の貴族と同じ様に多少顔が引き攣ってしまっている、対して王太子と第一、第二王女はそれでも真顔を貫き通しており、歳の差故か、また別の理由があるのかは分からない



「私が定期的に…そして頻繁に送った調査結果と研究結果は満足して頂けなかったですか?」



「周辺諸国の調査結果報告書は良かった、国力増強の研究は一部を除いて良かった………我が言いたいのは国の最高戦力である騎士団長二人を勝手な理由で王都から離れさせた事だ………国の貴族の大半がお前の謀反だと噂しているんだぞ、恥ずかしくないのか?」



「単なる偶然です、それに……謀反なんて実の息子で王子である私が……?有り得ないです!」



国王からの問いを真っ向から否定するガリウスを周りの貴族は冷や汗をかきながら眺める。眺めている半分の貴族がまだガリウスの謀反を信じていない事もあり、国王とガリウスが言葉を交わす度玉座の間の空気が重く辛くなっている事をガーネットとカルセインは実感する



「そうか……ガリウスがそう言うなのならば、我も信じよう。-----まだ日暮れ前だ、一旦休憩を挟もう……解散だ」



国王も国王で深く追求はしない、お互いが一歩も引かず、深く踏み込むこともしないこの舌戦とも言えない様な会話は、謁見という盾で状況証拠”のみ”というのに疑問を抱いた有力貴族の少数を味方につけたガリウスの勝利で幕を閉じた



▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢


王城〜どこかの廊下〜



「ねぇ!カルセインあれじゃあ…まるで陛下がこじつけの理由でガリウスを問い詰めている様にしか見えないわ!」



「-----実際そうだ。あの場の貴族の半数は貴族派で一連の流れを知らない者も居る………ガリウスに情で加担してしまうだろうな」



”歓迎会”でいつもより人数が多い王城の廊下は何時誰が盗み聞きをしていてもおかしくない


ガーネットとカルセインが向かう先はアーバンドレイク公爵が居る部屋。少しでもガリウスに謀反の意思があるのならこの王城内にも既に協力者が居るはずで誰が協力者なのかが分からない現状で一番安全な人物だ



明らかに二人をつけている人物が三人、一定の距離を保って追いかけてくる



「ガーネット、どう思う?」



「直接的には手は出さない様ね……顔も上手く見えないように歩いている辺りプロね」



確実に着いて来ている三人の人間はガーネットとカルセインが振り返る時には視線を外し周りに溶け込んでいる為特定が難しい



「あれ?ガーネットとカルセイン殿下じゃない。どうしたのお父様に何か用件でもあった?」



「あ、丁度いいタイミングじゃないセレス。仮初の護衛でも仕事したくなっちゃった?」



「遠慮しておくわ、アルス以上に護衛に適した人材はいないものね-----ガーネットの場合は」



最後に小声で漏れた一言は聴こえなかったのかガーネットは特に気にする様子も無くセレスティーナに着いていく


「そう言えばセレス、アルスって今何処に居るの?」



「それも含めてお父様から説明があるわ………さぁ入って入って」



一際大きい扉が開き、二人が一番最初に目に入ったのは廊下を歩いていた先程の騎士とは違う騎士達の集団


執務室の様なこの空間には二人を出迎える騎士達と奥に座っているアーバンドレイク公爵の姿がある



「王女殿下、王子殿下。わざわざこの部屋まで…どうされましたかな?」



「面と向かって挨拶するのは…お久し振りですね、私はガーネット=ヴァン=アトランティス」


「カルセイン=ヴァン=アトランティスだ」



「勿論知ってますよ? で、今回ここに来た用件は?」



ガーネットは謁見で国王とカルセインの間に亀裂が入り、軽視出来ない勢力がカルセインについた事で危険を感じ助けを求めに来たという趣旨を伝える


話を聞いているアーバンドレイク公爵はというと、最初からここに来た理由が分かっていたのか口角を若干上げ目を閉じた状態で頷いている



「なるほど……良い判断です。安心して下さい…先手はもう打ってあります」



「それはどの様な?」



「それは私から説明しよう」



滅龍騎士団のザナトスが申し出る



「我々を壊滅に追い込んだ冒険者の二人がまたこの国に入った事が判明したのだ。この時期とタイミングが偶然のはずがないからな、こちらから仕掛けた」



「貴方達を追い込んだ程の人物です、相当の手練を送ったと?」



先ず疑問に思うのはそこだろう、国でも随一の実力を誇る騎士団が敗れたのだからそれなりの人物でないと太刀打ち出来ないように思える



「一応、王立魔法学園で首席のようですが…「「まさか!」」……そうですね。そのまさかです」



「でもアルスは一度、奴等を……」



二人はどうやらその人物がアルスである事に気づき口走りそうになったガーネットをカルセインが制止する



「奴等を?」



流石に聴き逃してくれなかった様でザナトスは勿論、アーバンドレイク公爵まで目を細めガーネットを疑っている



「いい……ザナトス。今はアルス君の事についてお前が話す時だ。無用な詮索は時間の無駄だぞ」



「……はっ------アルス=シス=エルロランテの安否ですが現時点では不明です」



ザナトスは続けてそう言う、といってもアルスは無事でしっかり仕事を終わらせて現在は王城を目指して”王都を馬で駆けている”



「そんな……今直ぐに捜索隊を出さないと!」



「いいのよ、ガーネット」



「セレス? アルスが戻ってないって事は本人が魔法が使えない状況って事だよ?」



「えぇ。でも”あのアルス”よ? 魔法がなくたってアルスには剣があるし……まず一番に負ける姿が想像出来ない。私はアルスを信じているわ」



セレスティーナの信頼は度を超えていると言ってもおかしくは無い、魔法が使えない、つまりは魔力が無い状態というのはどんな人間でも明らかな消耗状態、絶体絶命という事であり決闘であれば劣勢に魔法士の戦いならば負けが確定したようなものだろう


それでも尚、”信じる”というのは一種の狂気だ



ガチャ



突然扉が開き滅龍騎士団 副団長のミストレイ=バージェスが駆け込んでくる




「お話中失礼します、緊急の連絡です」



「話せ」



何やら焦燥している面持ちで言うミストレイに落ち着かせるように続きをを促す公爵



「はっ! 先程王都を巡回中の騎士から白い仮面を被り黒いローブを纏った人間が馬で疾走しているのを確認しました」



「何っ!? 特徴は”聖騎士殺し”か……その様子だと……もしかして其奴は”此処”に向かって来ているのか?」




「恐らく」




この場の殆どが神妙な顔をする中、ただ一人セレスティーナだけが安心したような顔で窓の外を眺めては微笑んでいた

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