【3章・国の均衡】3
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バァン
二人の闇ギルドの掃除屋は銃声がした方に向かって走る。無表情だが目に少し焦りが見られる
「何をそこまで焦っている?」
二人が屋敷の廊下を曲がるとディーンが両手の銃を此方に向け問いかけてくる
「「……………」」
「まただんまりか…………」
ディーンが引き金を引くとほぼ同時に二人は動き出す、一人は地面から飛び上がり壁を伝いに斬り込んでくる
ディーンは斬りかかってくる男に四発撃つ、うち三発は剣で弾かれ天井と絨毯が燃え、一発が左肩に当たる
一人食い止めたものの、もう一人の刃が目前まで迫る
「……チッ」
ディーンは突き刺すように放たれた刃を紙一重で躱すものの、前蹴りをもろに食らい後方に吹き飛ぶ
流石バラムトレスと言うべきか、受け身一つで立ち上がり銃口を二人に向ける
「もう一度聞く、何故直接お前らが出てくる?闇ギルドの長は何を考えている?」
「一つ忠告だバラムトレス。我らの長は偏向と変化を許さない………お前らの家がこの世界の一端を知っているように我らもまた、一端を知っている。--------第二王子の動きに気をつけろ」
そう言って二人の掃除屋は二階であるにも関わらず窓から逃げていく
「お、おい!待てっ!!」
一人取り残されたように佇むディーンは掃除屋の言葉と思い返すように思案する、同時にこの家の惨状を兄や父が見てどう思うか想像してしまい汗が止まらない
(それどころじゃないな…………まずい)
「おーい、ディーン。なんで玄関が開いたままなんだ?」
狙って帰ってきたかのようなタイミングでジョンが帰ってくる。ディーンはホルスターに銃をしまい一階に降りていきジョンに事の顛末を伝える
「ほぅ…………第二王子の動きに気をつけろだって?彼はもうじきこの国に戻ってくるが………それに関係しているのか?」
「恐らくな……だが偏向と変化の意味が分からない…」
「闇ギルドの奴が言うことだから無視は出来ないな……取り敢えず陛下に伝えるか」
二人はジョンと一緒に来た騎士達に屋敷の後片付けを頼んでバラムトレス邸の外に止まっていた馬車に乗り込む
ジョンが御者に行き先を伝えると、馬車がゆっくり動きだす
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王立魔法学園〜一年生寮前〜
『空間移動』で学園に戻ってきたアルスは体の砂埃を落としながら寮に入って行く
「お、アルス戻ったんだね」
声を掛けてきたのはオロバスで、アルスはオロバスと近くの椅子に腰掛ける
「あぁ、クラスはいつも通り?」
「まぁ……王命で箝口令が出されてね、情報が広まる事は無かったよ。混乱も特になかったかな」
どうやら国王陛下は本当に隅々まで手を回していたようだ。実際寮内を行き来する他の生徒はアルスを見て特に反応する様子が無い
「そうか……抜け目がないな陛下は」
「そうだな……一部の貴族は何があったのか嗅ぎつけている様だから気をつけろよ」
オロバスは口頭ではそう言うものの、アルスなら何とかなるかのような表情をしている
「オロバス、明日はテストだろ。勉強しなくていいのか?」
「アルスこそいいのか?」
「俺はまぁ…ある程度予習したからな、学園で学ぶことは既に網羅したぞ--------歴史以外はな」
「流石首席か……………ん?何て?」
アルスはボソッと呟くがオロバスは聞き取れなかったようで首を傾げている
「何でもないよ……もうすぐ夕飯だ、行こう」
「あぁそうだな」
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一年生寮〜アルスの部屋〜
夕飯を済ませたアルスは自分の部屋で大書庫から持ち出した大陸全土の歴史書を読んでいた。アトランティス王国からエスト神聖王国、ストロヴァルス帝国にオニキス共和国、そしてドゥルーズ獣王国の文献もだ。学園の大書庫ならもう少し何か分かると踏んで手に取っていたのだが
(やっぱり、獣王国の文献が少ないな……)
これはアルスが学園に入る前、つまり剣の修行を積極的に行っていた頃、セバスや家庭教師に学園で学ぶ事をある程度網羅した時も同じだった。獣王国の資料は他国と比べて少ないのだ
歴史から領土、そして獣王国特有の部族というものまで大雑把な情報ばかりだ
アルスが現在読んでいる所は長年ドゥルーズ獣王国の頂点に立っているとされている部族、牙狼族の詳細だ
《〜獣王国内の内乱について〜》
(これは……初めて見たな………………ほぅ………なるほど、………へぇ………ん?五年前か………エーデガルド辺境伯の領地は大丈夫かな……)
内容は牙狼族の力が衰えつつあり、他の部族の力が年々増している事で五年前から獣王国の水面下で既に争いが起きているという事だった
エーデガルド辺境伯の領地は獣王国に接しており、獣王国とアトランティス王国を繋ぐ関所の管理と国境の警備をしている為、獣王国の内政が自分の領地に関係してくる事が多い
アルスの姉のマリア=シス=エーデガルドがアルスの通う、王立魔法学園の副生徒会長であるゼロ=シス=エーデガルドの兄、マルコ=シス=エーデガルドと結婚しているという事もあり領地の事がどうしても気になってしまう
(獣人はどうやら魔法が使えない様だけど……十分過ぎるな…)
獣人は身体能力が優れていて中には空を飛べる者、身体強化並の速度で走る者も居るという。その代わり魔法が使えないというのはアルスにとっては十分過ぎるという考えだ
獣人は揃って身体的特徴があり、体毛であったり、筋肉だったり、鱗だったりがある
その体毛は熱に耐え、筋肉は人間の頭蓋を容易く砕き、鱗は衝撃を緩和する。というのは学園でも習う事で貴族のみならずアトランティスの全国民が学ぶ常識みたいなものだ
(俺の剣と拳が通用するのか一回試してみたいな……)
アルスはパラパラページをめくる
(お……これも初めて見るな、《嘗て多くの獣人は一部の人間に虐殺され……》あれ、破られてるな…この続きが気になるんだが…)
アルスは獣王国の資料を流し見ていたがページの破損を見つけて目を止める。破られ方は人為的なもので故意に破ったように見える
(おいおい……何してくれてんだよ……)
破れている所はどうしようも無い為アルスは更に読み進めていく、所々年代物なのか文字が滲んだり掠れたりしているが破れていたのはあの一ページのみだった
(もうこんな時間か……)
いつの間にか日が変わっている事に気づいたアルスはベットに移動して眠りにつく
日が明けてアルスは日課のトレーニングをする、筋トレにランニング、そして最近始めた虚無の大森林での魔物狩りをする
アルスは”何故か”虚無の大森林を恐れている、剣術を身につけ、魔法も上達したアルスだが虚無の大森林に居るとなんとも言えない焦燥感に駆られる、聖騎士や闇ギルドの死神と対面しても揺るがなかった平常心が揺らいでしまうのだ
(何が問題なんだ……一体何がっ!!)
「ねぇ」
焦り故に『空間知覚』での索敵を怠っていた時、後ろから声を掛けられる、声色からは悪意は感じない為アルスは振り向く
「はい、何でしょう?」
「貴方、魔法学園の学生よね?なんでこんな朝っぱらからこんな所に居るのよ!?」
背後に居た女性は腰に剣を携え、動きやすそうな軽装備を身に付けていて装備は砂や泥で少し汚れている
【鑑定】
°°°°°°°°°
《アルシェラ》
[スキル]
【剣術 6】
【極・身体強化】
【直感】
°°°°°°°°°
(身体強化が極か……厄介だな……)
「少し……トレーニングしていただけですよ。冒険者の方ですよね?」
「えぇ、そうよ。でも今日学校は?」
「移動手段なら沢山あるので大丈夫ですよ、十分授業には間に合います」
アルシェラは納得した様に頷く、冒険者でもやはり魔法という物には詳しいらしい
アルシェラは体を傾けアルスの先にある熊の魔獣の死体を覗く
「その死体……キングベアーね。中々強いのね貴方、それに三体!?」
アルスはキングベアーを主に狩る、それは転生前キングベアーに惨殺された事が理由だが本人は無意識に狩っている。しかも剣を使わずに、徒手空拳と魔法のみでだ
「あぁ、ある程度は、それに一体狩れるなら三体狩れるでしょう?」
「は、は……はは、明らかに三体同時に倒したように見えるけどね、一体ずつと三体同時は全く別物よ……」
そう言ってアルシェラはアルスの後ろにあるキングベアーの死体に近付いて眺める。アルスが剣を腰に下げているがキングベアーの死体には剣でできた傷が無い事で首を傾げている
「えーっと……「アルスです」…アルス君ね、アルス君はどうやってキングベアーを倒したの?」
「殴ったり、蹴ったり………魔法も使ったな」
アルシェラは驚愕した様で空いた口が塞がっていない、微かに震えているのは恐怖か武者震いか、目の色からはアルスに対する興味が伺える
「へぇー、アルス君は魔法も使えるのね。まぁ貴族っぽいし”儀式を受けられる”もんね……当然か」
アルシェラの言葉を聞いてアルスは思わずアルシェラに詰め寄って問い詰めてしまう
「洗礼の儀式を知っているのか?」
「えぇ、知ってる人は知ってるわ………受けようにも受けれないのが現状だけどね。エストの司祭は平民が嫌いなのかしら?」
アルスの疑問が一つ解決した瞬間だった。しかしアルスは追求したい欲求を自制してアルシェラに背を向ける
「もう少し話を聞きたかったが、授業があるからこ
こでお別れだ…………魔石は譲るよ」
『空間移動』
あっという間にアルスは歪んだ空間に吸い込まれていく、その場に残されたアルシェラはキングベアーの魔石を譲ってもらえることが嬉しくてアルスが消えた事に気付いていない
「あれ?アルス君!?」




