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THE BLACK KNIGHT  作者: じゃみるぽん
二章・学園
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【2章・王立魔法学園】30

少しお待たせしました

アルスは現在学園の中庭に居る



目の前には何故かアルスが殺したはずの聖騎士マスティマがおり、睨み合っている



聖騎士マスティマは聖騎士らしい華美な鎧に身につけていてとても目立つ。普段数人しか利用しない閑散とした中庭にも次々と人が集まって来ている



何でこんな事になっているか、事の発端は一時間前まで遡る



〜教室、一時間前〜



「アルス、お前に客だ。学園長室まで行け」



アリティア先生がアルスを呼ぶ、授業終わりで放課後に特に用事も無いアルスはアリティア先生に言われた通りに学園長室へ向かう



(誰だろう……嫌な予感しかしないな)



少し歩いた先にある学園長室は普段入る事はなく、少し緊張する。扉の向こう側に意識を向けて中に居る人物を探ろうとするが、学園長ともう一人居ることしか分からない



ノックをして返事を受けてからアルスは中に入っていく、中には椅子に座る学園長とソファーに腰を下ろして此方を見つめる聖騎士マスティマが居た



「今日、君を呼んだのは聖騎士殿が君と正式な決闘を申し込みに来たからなんだが………何故エストの聖騎s 「学園長っ!!これは正式な決闘だ、部外者の口出しは無用だ」…………いいのか?アルス君」



学園長の言葉を遮ったマスティマの声は怒りを隠しきれておらず冷静を装った口調も意味を為していない


学園長は心配なのかアルスの判断を待っている、一言でもアルスがNOと言えばマスティマを力ずくでも学園から追い返すつもりだろうが、残念ながらそれは出来ない



(後には引けないな………チッ………っ面倒だな)



聖騎士が学園に乗り込んで来た理由は様々あるだろうがアルスが考えられる理由は二つ、一つは一度殺された事での復讐、もう一つは逃げられないように学生という立場を利用する事だ



これらはマスティマに利得がある行為で聖騎士殺しを否定し続けているアルスにとっては最悪の行為である、面倒と思っているのはこの事や決闘で仮にアルスが勝利した際に聖騎士よりアルスが強い事が証明されてしまう



アルスには”奥の手”があるがこのマスティマとの決闘の情報が欠落している今の状況で殺してしまうのは実力の露見より恐ろしい事になるかもしれない



「えぇ…アルス=シス=エルロランテは聖騎士マスティマ殿との決闘を受けます」



「流石だ、逃げないのは面子か?それとも強がりか?」



マスティマの煽りにアルスは動じないままマスティマの耳元まで近づいて囁く



「一度負けた雑魚がいきがるなよ、どうやって生き伸びたのかはこの際置いといても俺の前に立ち塞がる障害は全て取り除くと決めているんだ」



マスティマもこの程度の煽りには無表情で前回戦った時とは精神状態が格段に上がっていることが分かる



「学園長、一つだけ我儘を言っていいですか?」



「聖騎士殿の許容範囲なら幾らでも言ってみるがよい」



「感謝します、では決闘には闘技場を利用させて頂きたいです」



「聖騎士殿、どうかな?」



「構わない」



「…………決まりだな、今すぐでも手配しよう。二人は体を温めておいてくれ、王立魔法学園の学園長の権力はこういう時に役立つ」

「アルス君、後悔しても遅いぞ。決闘を一度受けたら取り消しなど不可能なんだ」



「えぇ、分かってます。大丈夫ですよ何とかなります」




〜そして今に至る〜



「一つ聞いていいかアルス=シス=エルロランテ、お前は俺をどう思う?」



「どう、か…………自分の力を過信し過ぎて俺に敗北した狂信者かな」



アルスは本音を話す。ここで感情面に訴えかけて相手を弱らせるのが殺し合いの定石だが、殺意しかないマスティマを煽る辺りアルス自身に敗北するヴィジョンが思い浮かんでいないという気持ちの表れだ



「……チッ……過信はまだしも狂信者というのは聞き捨てならないな、体の五割が吹き飛んだ俺の体を治してくれたのは神であり主神ウルスニドラ様だ。ここまでの御業をいとも簡単にこなす御方を崇拝しない訳が無いだろ」



(ほぅ、頭を吹き飛ばしても再生させるのか……)



頭を吹き飛ばし、完全に息の根を止めたはずのマスティマは本人曰く、神に治してもらったとの事だ。マスティマも半神で普通には死なないことくらいは分かっていたが神器は神器でも衝撃波など間接的な攻撃は致命傷になり得ないのだろうか



「今回の決闘はどちらかが死ぬまで続けるつもりだが、いいのか?」



「こちらのセリフだ、嬲り殺してやるから身の周りの人間には予め死ぬ事を報告しておけ」




ゴォウゥ



突然、雷鳴と共に雷帝が二人の隣に降り立つ、すぐ傍で落雷が起きたかのような轟音は二人の耳に攻撃しているようで言い争いを抑止する



「お二人さん、言い争いはそこまでにして。早速馬車を用意したから闘技場に向かおうよ」



「師匠、なんか準備が早くないですか?」



「いや〜、それはもう聖騎士と弟子の戦いほど面白いものは無いからな、雷帝の地位をフル活用したよ」



雷帝はアルスが自分の力を見せびらかさないのには何か理由がある事を知っている


この一時間でアトランティス国内にどれほど情報が回っているかは正確には測れないが、雷帝が知り得ているという事は少なくとも王城内には知れ渡っているだろう



「師匠の協力感謝します。今回だけは陛下に言い訳出来そうにないですよね……それにガーネットにも」



アルスの最後の一言に少し微笑む雷帝だが、アルスとマスティマは見えていない



「あぁ、いいんだ。陛下だが……俺より先に知っていたぞ。お前多分学園での情報が垂れ流しになっているぞ」



雷帝はそう言ってクスクス笑う、一方マスティマは完全に蚊帳の外で二人の会話を棒立ちで聴いている



「……っ…迂闊でした…」



「陛下の事だが……今回大事になっていないのは陛下自ら手を回して下さったからだぞ、お陰で今回の決闘は王城内の限られた貴族しか知らない」



雷帝が馬車に向かって歩き出す、それに続いてアルスとマスティマも歩き出す



「アルス、陛下の借りは大きいぞ。何を求められても断れないな……クククククク」



「雷帝とやら、今から決闘までどれくらいかかる?アトランティス王国のいざこざなど飽きたのだが」



馬車の目の前まで歩き今から乗り込むという所で足を止める雷帝は口角を上げてながら振り向く、口角は上がっていても目は笑っていない



「エストの聖騎士も堕ちたな、俺が子供の頃の聖騎士は誠実で人情味がある方だった。数年前の話だぞ、国も人も変わったのだなエストは」



馬車の椅子に腰をかけながら言う、アルスと雷帝は隣で向かい側にマスティマが座る



「ほう、一国の権力者は発言に責任を持つべきだぞ、国への侮辱から争いは起こり戦争は始まるものだ」



アルスの知っているマスティマはこの様な場面で癇癪を起こす程脆弱な人物だが、生き返った事で精神的にも強くなっているのだろうか



「ハハハハ、そうだな聖騎士殿の言う通りだ、あくまでも君が生きて国に帰れたらだが」



「私は負けない……かなr「着いたようです師匠」……っ貴様っ!」



馬車が速度を落として停車する。相変わらず馬車の中は剣呑な雰囲気だが、殺し合いの前に和やかだと逆に気持ちが悪い


無人の闘技場に入るのは二回目だが、前回とは違って色々な事情が絡まりあっている為、決闘よりこの後の事が心配でたまらない。アルスはここまでの間、国王陛下から何を求められるのか嫌な予感がしてならない



闘技場の舞台に立つとマスティマが剣を抜く、アルスも剣を抜いて構える



「これよりアルス=シス=エルロランテと聖騎士マスティマの正式な決闘をアトランティス国王シュトゥルム=ヴァン=アトランティスの名のもとに行う----初め」





アルスとマスティマは同時に走り出して中央で剣を合わせる”神速”と言っても過言ではない速度での剣戟に思わず雷帝の顔から笑みが毀れる



『絶影』で後ろに回りこみ首元に迫ったアロンダイトの刃をしゃがんで避けたマスティマはそのまま剣を脇の下後ろに突き出す



バックステップで避けるアルス、マスティマは立ち上がると同時に体を捻りバックステップで空中状態のアルスに迫るように飛ぶ



アルスはマスティマの剣を肩スレスレで受け止める、マスティマの顔も目の前に迫っていて不気味な笑みを浮かべている



「少し痺れるぞ『雷霆』」



至近距離で放たれた雷霆はマスティマの影を一瞬消す程だった



数十メートル吹き飛ばされて地面を転がるマスティマには体に電気が走っていて人体の許容範囲を大きく超えている事が分かる。人間であれば死んでもおかしくない



そう人間ならば、マスティマは体を痙攣させながら起き上がり剣を握る。一歩二歩と歩く際に地面が若干陥没している事に雷帝は気付いているだろうか



アルスは剣を横に構えて目を細めてマスティマを見据える、マスティマもアルスが何をしようとしているのかが分かったようで凄まじいスピードで距離を詰めてくる



『無牙突』



異常な温度に熱されたアロンダイトは剣の形を保ったままマスティマの右肩を掠る、右肩の鎧は溶解していて肩が焼け焦げているがマスティマに気にした様子はない



「外したか………はっ!」



アルスは凄い剣速で攻め込む、マスティマも押し込まれることなく善戦する



二人の剣戟は風を起こし、空振りは地面を削る。雷帝もこれには驚きを隠せない



(アルス=シス=エルロランテ……とんでもないのが隠れていたな)



アルスの右脚のハイキックをマスティマは軽く左手で受け流し、カウンターの左脚がアルスの腰に入る-----訳なく、金属音のような音と共にマスティマの左脚はアルスに届く寸前で止まる



「き、貴様、まさか結界魔法も使えるのか………?」



「前回は使っていなかったか?」



アルスは聞きながらアロンダイトでマスティマの左腕目掛けて斬り上げるもマスティマの剣に弾かれる



また剣戟が始まる、マスティマの『天斬』はアルスの頬を掠めて後方数十メートルの岩の柱を破壊する



高速な手刀で相手を貫く『雷電刺突』はマスティマに受け流される、無防備なアルスの腹にマスティマの膝が突き刺さる。貫通しそうな音が出るマスティマの膝蹴りも、あのアルスだから怯むだけで抑えられている



マスティマの剣を上空に打ち上げ『飛天雷鳴槌』で一本の雷をマスティマに落として『四閃四死』で無防備なマスティマを斬る



四肢を切断とまではいかないがマスティマの体を深く抉っていて呼吸が乱れ、地面に手をついている



しかし数秒後には血は止まり呼吸が安定する



「あ”ぁぁ”ぁ”ぁ…………何故だ、こんなにも再生が遅いっ」



苦悶の声を上げ、ボソボソと呟くマスティマに向かって歩くアルス



徐々に近付いていくアルスは突然マスティマが投擲した剣を弾く、その速さはとてつもなく、少しでも反応が遅れていたら結界を破り頭が吹き飛んでいた事が容易に想像出来る速度だ



ほぼ同時に右からの気配を察知してアルスが顔を向けた次の瞬間、マスティマの腕がアルスの結界を破り二の腕を掴んでいた



(……っなんて力だ……)



振り抜こうにも振り抜けず、アルスは『空間移動』でマスティマの背後に回り、『双破砕』の構えをとる。何処に抜け出されるのかが分かっていたかのようにマスティマは躊躇いもなく後ろを向き肉薄してくる



『双破砕』は至近距離で効果を発揮する剣術でマスティマが迫ってきたのは好都合なのだが、剣を投げ捨てるような騎士にとって自暴自棄の様な行動の後とは思えない程顔に余裕があるマスティマを見ると少し躊躇ってしまう



躊躇いかただマスティマが硬かっただけかほぼ同時の二連撃は素手のマスティマの上腕で受け止められる。そのままマスティマは右手をアルスの鳩尾にそっと当てて呟く



『聖貫通砲』



マスティマの聖貫通砲は結界を無視してアルスの体を直撃する



「貴様も大概化け物だな……この技で殺すつもりだったんだが」



「----聖騎士だからと剣が得意とは限らない…か」



アルスはアロンダイトを手首で振り回しながら立ち上がる。アルスにはまだまだ余裕がある様に見えるが



再びアルスに肉薄するマスティマは『空間移動』で後ろに回り込まれ、アルスの放つ『破撃』をもろに食らう、辛うじて手で防いだようだが右腕の骨が粉砕しているのか脱力状態で機能していない



「本当に貴様……何者だっ!人間の癖にっ!」



マスティマは近くの地面突き刺さっている自分の剣を抜きながら悪態をつく



骨の音を鳴らしながら畝るマスティマの両手は急速に再生しようとしているのだろうが、アルスは再生を待つ程良い性格では無い



次々と振り下ろされるアロンダイトをマスティマは片腕で捌くが一つ、一つとマスティマの体に傷が増えていく。五本の裂傷を与えるとその内に一本の裂傷が完治する



再生速度は人間では無いが、アルスの攻撃に追いついていない、やがてマスティマは吐血し、膝をついてしまう



「アルス=シス=エルロランテ、一つ忠告しておくが強過ぎる力はいつか自分の身を滅ぼすぞ」



「へぇ……今際の言葉がそれか、確かにその通りだ。だから俺は必要な時しか剣を抜かないし、自ら戦地に乗り込む事は勿論しないつもりだ。身の振り方はある程度も気を付けているよ」



「では、この決闘も……必要…だったか?」



「----いや、少し私情も入っている。エストの刺客には色々されているからな、これ以上俺の周りの人が死ぬのを見たくない」



マスティマの体の再生も許容範囲があるのか数分前であれば完治している様な傷も治る事無く、地面に血液が垂れ流しになっていて小さな血の池が出来ている



「そうか……」



マスティマに反撃できる程の体力はもう無い



アルスはアロンダイトマスティマの肩に乗せる



「久し振りの楽しい戦いだったよ」



アルスは横に一閃する、滴る血液を剣を振る事で飛ばし流れるように鞘にしまう



離れた位置でずっと見ていた雷帝が手を叩きながらアルスの方へ歩いてくる



「はぁ……陛下には結果だけを伝えるよ。内容は……言えないよなぁ……」



雷帝は周囲の騎士に撤退命令を出す、マスティマの死体も騎士達に運ばれていき、闘技場を清掃する騎士まで出てくる



「あの、師匠………これは?」



「後片付けだ、今回の決闘は本来存在してはならないものだ。他の貴族からの横槍が入る前に証拠から何まで全て処分する」



そう言って雷帝は血で濡れた手をハンカチで拭き、空に手をかざし血が付いていないか確認する



「雷帝様、エルロランテ様、お話中失礼します。闘技場周囲に複数の人影が出口を塞ぐように待ち構えています」



「……はぁ」


「えぇ、何となく分かってましたが…」




闘技場を囲むのは全身黒ずくめのコートやマントを着た長身の男達、様々な帽子を被り、一様に出口の方を眺めている



「総員っ、撤退だ。証拠は残すな、外の奴は俺が…「俺も行きます」……………まぁいいだろう」



周辺の騎士が鎧の金属音を鳴らし一斉に足を揃える



ここの騎士達は雷帝が多数の相手に単騎で突撃するというのに動じず、しかも礼を以て見送るというのは一見無愛想の様に思える行動だが、一騎当千の名が相応しい雷帝にとっていい選択なのかもしれない



雷帝とアルスは二人で闘技場の出口へ向かう、雷帝とアルスのコツコツという足音は狂い始めた時計の針の様だ。徐々に見えてくる人影は一度見た事のある人影で、アルスが一度手を出すのを躊躇った者達だ



「師匠、今だから言いますけど……見た事あるんですよこの人達……多分強いですよね」



「あぁ、強いよ。聖騎士まではいかないが……そうだなぁ………近衛騎士くらい?」



歩きながら説明する雷帝に緊張感は感じられず、目の前の人間達に今にも襲われそうになっているとは思えない



「俺は左の方を」



「師匠だからね余った方で妥協してあげよう」











『『雷霆』』

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