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THE BLACK KNIGHT  作者: じゃみるぽん
二章・学園
46/183

【2章・王立魔法学園】27

数ある作品の中からこの作品を読んでくださる方々、いつもありがとうございます!


「アルセンディオ、国に戻れ」


▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢


〜数時間前〜



「アルセンディオ、馬を用意しろ。至急現場へ向かう」



「はっ」



アルセンディオの報告を受けた王国騎士団長は装備を整えながら指示を出す



まるで戦いに行くかのような完全武装は何かを警戒しているのだろうか



「バジウッド」



同行する騎士達に指示を出している王国騎士団長は後ろから声をかけられる、騎士団長にとっては数年ぶりで今日まで久しく聴いていなかった声



「どうされました?」



「いや、随分と慌てているようにも見えるからな、何かあったのか?」



「えぇ、アトランティスまで同行する予定だった騎士が亡くなりました、私はその確認に」



「確認か……気を付けろよ」



「はっ!」



ガリウスはそのまま踵を返し王城へと入っていく、ガリウスが戻る先には一人の刀を提げた男が立っている、見た目は王国騎士団長と同じ位だろうか



(共和国も捨てたもんじゃないな……猛者というのはどの国にも居るものだ……)





「団長、お待たせしてしまい申し訳ありません。良い馬を探していたのですがどうやら一番いい馬が現在疲弊しているようで、遅れてしまいました」



「いい、気にしていない。それにしても馬が疲弊か……相当無理したのだろう、まぁいい皆行くぞ」



「「はっ!!」」



王国騎士数名が王城を発つ、一国の騎士団長が突然オニキス共和国に向かわされるのはどう考えても裏がある。その事自体は簡単に想像出来るが、自分より先に他の人間に被害が出るとは誰が予想出来るだろうか



自分の権力と力に大陸屈指の価値があると自負している王国騎士団長。慢心なのか最初に狙われたのが自分ではないという所に引っかかりを覚える



▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢



「ここか………家人の数が多いな…」



「この館の持ち主はオニキス内では有名な伯爵だそうです。当主は関与を否定していますが場所が場所で状況も中々なので………」



「そうか……早速その場所に向かうぞ」



「はっ」



王国騎士団長達の一行は騎士が殺された部屋に向かう、部屋の扉と前の廊下には目立った傷も無く一枚壁を挟んだ先で死体が転がっているとは思えない




ガチャッ




「………っ……これは……」



扉を開けた瞬間に漂う腐敗臭と四肢が散乱した部屋を見てアルセンディオは顔を顰める



「---------鎧と武器を全て回収しろ、死者を弔うのは…後だ」



この少しの間から周りの騎士やアルセンディオは動揺では無く、隠し切れない怒りの感情を騎士団長から感じ取る



「はっ、二人私に着いてこい、武具を運び出すぞ」



「「はっ!」」



鎧や手甲、武具を運び出しているアルセンディオは真っ二つになった金属の胸当てを拾うがあまりにも不気味な断面に疑問を抱き、王国騎士団長に二つになった胸当てを持っていく



「団長、見て下さい」



「……これは、斬っているのか?割れているように見えるが?」



「はい、私にも割れているように見えます。死体の傷を見るに襲撃者は剣や槍を所持していたと考えるべきですが……これはまるで鈍器の様な……」



「それか余程の怪力か………皇殿は恐ろしく怪力だったと聞くが温厚なあの御仁が襲撃者とは思えない」



慈温=皇の勇者時代は片手で相手の骨を砕く程の怪力で有名であり、オニキス共和国で怪力と言えば慈温=皇か、現勇者の祠堂=皇が挙げられるだろう



「そうですね、勇者の線は無いでしょう」



そう言って一礼して踵を返すアルセンディオを王国騎士団長は肩を掴んで引き留める



「------少し、これを見てくれ」



王国騎士団長の手に握られたのは刃こぼれと破損が激しい一振りの両刃の剣



「これは、凄い破損ですね……」



「これはシュメール=ポルギウス、ここに滞在していた騎士の剣だが、こんなに刃こぼれする訳が無い……この剣はミスリル製だぞ…信じられるか?」



「信じたくありません、金属だけでなくミスリルまでも破壊するなんて、一体何者なんでしょうか……」



「にわかに信じ難いが、元勇者の慈温=皇殿が言っていた事が本当だとするならば……」



「それは……?」



王国騎士団長はアルセンディオに慈温が聖剣を用いて神を殺すのを生業としていて、聖剣など神器でしか神は殺せないと慈温本人から聞いた話を話す



王国騎士団長自身が神を信仰している訳でもなければ、神を殺すというまるでエストを真っ向から否定するような事を言う慈温を最初は信じていなかった



しかし、神を殺すのかは置いても慈温がただのホラ吹きでは無いのは自らが感じ取っており、隻腕でも威厳を感じ、辣腕な剣士である事は信じている



アルセンディオは頭が柔らかいのかオニキス共和国がどうやってエスト神聖王国と平和を保ち、戦争に至らないのかが真っ先に気になったようで顎に手を添え思案している



この時二人の頭にある仮説が思い浮かぶ



”エストは神器を保有するオニキス共和国を恐れている、ならば同じ神器を持つアトランティスも同じ。しかし、もしその恐れの対象が国ではなく人だったら、勇者という存在を恐れているのならばアトランティス王国ではなく近衛騎士団長を恐れているという事になる”



勿論、恐れているという事実はない。しかし厄介だと思っているのは事実であながち間違いでは無いのが難しい所だ



「「----今直ぐに本国に連絡しなければ----」」



「今回の長旅はただ国力を分断し、抹殺する為の陰謀だと思っていましたが、まさか近衛騎士団長一人だけを対象としていたとは………しかも我等はその偽装に使われたと」




「アルセンディオ、国に戻れ」



「ですが……任務が」



「大丈夫だ、確かに暗殺されてもおかしくは無い状況だが最優先は陛下の身だ、私の言葉として陛下に進言してくるんだ、それとお前にこの剣を渡す」



「これは……」



「今からアルセンディオ=ディベイルをデルドリアン伯爵家の名代とする。王城の貴族はお前をまともに取り合わないだろうからな」



王国騎士団長は腰に提げた自分の剣をアルセンディオに渡す



「感謝します……この事態、必ずや陛下に伝えて参りますっ!」



剣を受け取ったアルセンディオは馬に跨り砂塵を巻き上げながら洋館を去る



この決断で幸か不幸か話にも出てこなかったアルスとエストの刺客が凄絶な戦いを繰り広げる事になるのだが、二人は知る由もない


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