【2章・王立魔法学園】25
短めです
「------煉獄の魔女?王国で随一の魔法使いが姿を消したと思ったら何故此処に?」
「それは今日この遺跡に王太子が来ると聞いてな、依頼主は王太子が邪魔なようで私に暗殺を依頼してきたんだよ………おっと喋りすぎか」
どうやら煉獄の魔女は王国に仕えていた魔法士だったが表舞台から姿を消していたらしい
王太子を狙っているという情報を軽く吐く事から当人に秘密保持の意識が無いように推測出来るがブラフである可能性もある
「魔女さんよ〜目的が王太子なら後ろにいるからそっち行って俺たちを見逃してくれないか?」
「んー………どうしようかねぇ〜」
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「王太子殿下」
「どうした?フロイド」
「この先に腐肉の焦げた匂い、辺りの温度も上がっています。間違いなく火属性魔法の使用が感じられます」
王太子やフロイド達の部隊は第二王子の帰着と時期が重なり訳あって五千人から千人の部隊となった
更に冒険者先駆けて遺跡に潜ったせいで緻密な作戦に綻びが産まれてくる
当初、作戦立案時は騎士の数も時間もあった遺跡探索も”いつの間にか”自国から追手が送られ、帝国からは軍を出される始末だ
目の先数十メートルに普通ではありえない事が起きているのに撤退の選択肢が頭に無いのはプライドからか
「王太子殿下危険です、ここは騎士を先に行かせます」
「……あぁ」
騎士が様子を見に行って数分後、王家が雇ったAランク冒険者の残骸と焼け焦げた金貨などアトランティス王国の物でも無い物まで沢山出てきた
遺跡の石壁は焦げていて激しい火魔法が使用された事が分かる
地面から舞う塵で咳き込む一行は更に奥へ突き進んでいく
「王太子殿下っ!別部隊から魔導書を三冊見つけたとの報告を受けました!」
後方から走ってきた騎士から報告を受ける
「分かった、貴族に横流しをさせるな! 手に入れた魔導書は私の元に持ってこい」
「は、はっ!」
この部隊に貴族のスパイが居ないはずがない、遺跡の需要は本来誰でも魔法が使えるようになる魔導書が手に入る事で、今回のように大勢で遺跡の歴史を探りに来る王太子の方が稀である
魔導書は貴族のパワーバランスを大きく変え得る代物であり、王族にとっても貴族派の貴族だけには渡したくないというのが正直な所だ
「王国騎士達よ、ここから未到達区域だ。少しでも情報を集めろ!壁や床、天井に目を配って見逃すな!」
「「「はっ!!」」」
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王都〜玉座の間〜
二ーヴル王太子と近衛騎士団長が虚無の大森林に出向き、更に王国騎士団長がオニキス共和国に出向いている
普段の王都より色々静かになりそうな状況だがそんな事は決して無かった
「いやー、負けましたよー」
「構わん、帝国には元々期待していない」
二人の会話は傍から見たら親戚のような印象を受け、臣下と元首という関係とは思えない
「国王陛下、此方がエスト神聖王国から我が国へと亡命を望まれたカトル=フォルマーレ殿とエスメラルダ=フォルマーレ殿です」
「あぁ、カルナには苦労を掛けた。------さて、長旅疲れただろう、本来正式な場を踏まなければならないところだが時期が時期だ。フォルマーレの御二方は部屋で休まれるといい………カルナついて行ってやれ」
「はっ」
枢機卿と聖女はカルナに連れられ王城の一室へと案内される。王城では見慣れないエストの祭服は見回りの騎士の目を引く
「此方です」
二人に用意された部屋はエストとは違った豪華さがあり、椅子に壁、食器、更に絵画から文化の違いも感じる
「ありがとうございます、私からは何も差し出せなくて申し訳ない……」
「いえ、気にしないでください」
カルナが部屋を去った後、聖女は部屋を行ったり来たりしていて落ち着く様子が無い
「エスメラルダ、流石にここまで来たら法王様の目も無いだろう……それに王国には神器持ちが居る、一旦落ち着くんだ」
聖女はコクコクと頷くが表情は晴れていない
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エスト神聖王国〜大聖堂〜
「法王様、フォルマーレ枢機卿と聖女エスメラルダがアトランティス王国の王城に入った所を確認しました」
「あぁ、まだ手を出すなよ。解放出来ない神器なんてただの棒きれでしかない、殺しようはいくらでもある」
「承知しました」
法王と話す女性は服装から教会の人間ではないように見えるが、鎧など武装をしている訳でもない為、暗部やそこ辺りの人間だろう
「-------決して逃げる事は出来ぬ、精々足掻けよ人間」




