【2章・王立魔法学園】23
ガーネットの宣言から暫く経ち、アルスとガーネットはとても激しい魔法戦を繰り広げていた
ガーネットが王位継承権を破棄する事はまだ国王、アルス、セレスティーナ、カルセインしか知らない事だ
ガーネットを支援する貴族家もガーネットが王位を諦めた事を未だに知らない
自分勝手と責められる事は避けられないだろう、護衛であるアルスが刺客の処理に追われる事になるのはまだ先の話だが
「相変わらず、凄い魔法だな……地獄だ」
アルスが居るのは学園の模擬戦場だがガーネットの『炎熱地獄』で地面から火が吹き出て溶岩が亀裂から溢れ出ている。
アルスは”身体が丈夫”だが火傷や凍傷などに耐性がある訳では無い為常に自分の周りに結界を張っている
「それを防ぐ自分の異常性に気付く事ね、どれだけ硬いのよアルスの結界は………」
「一応、近衛騎士団長には破られた事あるんだけどな………」
「ふふっ、彼は神器を扱うのよ、世界に五本しかない伝説の武器を持つ男と比べたら駄目だわ」
(実は今話しているのもその一人だったりしてね)
「神器って伝説上の物じゃないのか?」
「違うわ、確かに存在するわ………まぁ、その話は後で、今は----------アルスの結界を破壊しないとね♪」
ガーネットが杖を地面に突き刺し両手を前に出すと杖と両手から人間を軽く包む程の大きさの火がアルスに向かって放たれる
結界で防ぐのが難しいと判断したアルスは体に雷を纏い左手を前に出す巨大な炎は既に数メートル先まで迫っており詠唱する時間が足りない
(間に合うか……?)
アルスの左手から放たれた雷は放出量の多さからとても片手で出している様には見えない
ガーネットの炎とアルスの雷は地面を揺らす程の衝撃波を生み出し二人を後方に吹き飛ばす
「……うそっ!?今のを相殺するなんて……」
「お陰様で大分魔力を削られたがな……」
模擬戦場は既に半壊状態で見に来たSクラスの皆は放心状態だった
「それにしても精霊魔法に対抗出来るなんて……炎帝の弟子である私の立つ瀬が無いわ」
「ハハハハ、対抗なんて……俺はガーネットの魔法を何とか防いだだけだよ」
「それは、十分対抗出来ていると思うのだけど……」
外壁が粉砕して岩の塊が転がっている、金属の柱は溶解しかけて更に電気を帯びて青白い稲光を発していてアリティア先生は大声で皆に触らないように注意喚起をしている
「エリゴスくん!グレイスさん!消火をお願い出来るか?」
アリティア先生は模擬戦場の後片付けをエリゴスとグレイスに頼む
エリゴスの水魔法とグレイスの氷魔法の活躍で数分で炎は鎮火したがアルスの雷は収まるのにまた数分かかる事になった
「こう考えると、雷魔法は非常に厄介だな…水魔法を使う俺からしたらたまったもんじゃない」
「そうね……これは戦いにくいわね」
Sクラスは魔法や武術のレベルが高く、王立魔法学園の中でもハイレベルな模擬戦となるのだがアルスとガーネットとセレスティーナだけは必ずと言っていい程会場に損傷を与えていく
しかし両者決まって満身創痍の状態という訳でも無く、魔力を使ってフラフラしている以外は全然元気だった
「いやー、派手にやってるね」
突然模擬戦に入って来たのは生徒会副会長のゼロ=シス=エーデガルドだ
「エーデガルド副会長、どうされました?」
「いやー、たまたま近くを歩いていたら此処から轟音がしてね気になって見に来ただけさ」
受け答えしたのはストレイフだ、本来「ゼロ」と下の名前を呼ぶ人は少ない、ましてや辺境伯という高い位の家の人物だから尚更だ
「----------副会長、授業はどうされたのですか?」
「あー、三年のSクラスは今、全員実家に帰っているよ。知らなかった?」
「知りませんでした、何か理由でもあるのでしょうか?」
「まぁ皆貴族だからね、長男は家を継ぐ事もあるし、その他は今後食べていく為に仕事を探さなければならないんだ。王国騎士になる者もいれば近衛騎士になる者もいる。辺境伯家や公爵家が持つ騎士団に入る者もいる」
「なるほど……エーデガルド副会長は学園に残っていますが理由が?」
「生徒会だけは学園に残らないと学園が回らないだろ?」
「なるほど、失念しておりました……」
ストレイフとの会話が終わったのかゼロはアロンダイトを磨いているアルスに近付いていく
「-----凄い色の剣だね……青でも紺でもない……しかし剣としては相当な業物と見た」
「お久しぶりです、ゼロ義兄さん。確かに業物ですがあげませんよ?」
「ハハハハ、別に盗ったりはしないさ」
「今日はなんの用で?ただ暇だったとかでは無いでしょう?」
「そうだよ、暇が理由でほっつき歩ける程うちの生徒会長は優しくないよ」
「ハハハ……意外にも厳格な人なんですね」
「早速本題に入るが……アルス忘れているだろアムステルダム家の剣聖」
「いえ……覚えてますが触れてないだけです。たった二ヶ月で忘れる程姑息な人間に成り下がった覚えは無いですよ」
「なら話は早いな………いつやる?」
アルスは別に忘れていた訳では無いが、自ら進んでやる事では無いのは確かなので武闘大会から二ヶ月触れていなかった
逆に言えばあんなにSクラスに執着していたジャレッドを二ヶ月も抑えてくれていた生徒会に感謝するところだ
「今日というのは?」
「いいね………場所は闘技場を利用するだが、大丈夫か?」
「了解しました」
「例え剣聖だとしてもスキルであって称号では無い、スキルだけ持った凡才か100年に一度の天才なのかはアルス次第な訳だ………では19時に闘技場で待ってるぞ」
「えぇ」
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王都〜闘技場〜
日が暮れた闘技場は武闘大会のような快活で明るい印象は無い、観客席は無人で闘技場にいるのはアルスとジャレッドのみ
観客がいないのはアルスが本気を出せるようにするため、他の人に剣を見せびらかす訳にはいかないため、観客を巻き添えにしないため、などなど色々ある
生徒会長やガーネットやセレスティーナはこの試合が見れない事を嘆いていたが公平性を保つ為には必要な事だ、しかし、それを押し破ってくるのが貴族というもので審判と称してエードリッヒ侯爵家の人間が送られてきた
エードリッヒ侯爵家の人間を伸したアルスだが訴えられては話にならないので直接的には手を出さず、あくまでも事故に見せかけているのだがバレるのも時間の問題だろう
「早く始めるぞ、わざわざ今日時間を取ったんだ。主人をほったらかす護衛なんて斬首されても文句は言えない」
アルスはアロンダイトを抜きながら淡々と喋る
「お前がまともに護衛の仕事をしているとは思えないのだが……まぁいい、何故審判も許さないのかは知らないが全力で戦ってくれるのなら此方としては上乗………では行くぞっ」
ジャレッドの剣は魔法剣だろうか、鉄は月の光では輝いたりはしない。ジャレッドの振りは大き過ぎず、小さ過ぎず、威力と剣速のバランスの取れた剣術だ
アルスは鑑定でジャレッドを視たが案の定防がれる
(……ちっ)
アルスはジャレッドの剣を弾き、バックキックで吹き飛ばす
手応え的に身体強化は 上 以上
ジャレッドは受け身をとって低い体勢のまま横薙ぎをする
アロンダイトで横薙ぎを防いでアルスは剣を上に構えて振り下ろす
ジャレッドは躱せない感じたのか剣を横に構えて受け止める
お互いの剣の金属音は鼓膜にとても響く、一瞬反応に遅れたジャレッドはジリジリと押されていて身体強化魔法を使っていないアルスと使っているジャレッドの筋力の差が露見する
後方に飛ぶように下がるジャレッドだが、狙ったようにまだ空中に滞空しているジャレッドに向けて『破撃』を放つ。全力で
ジャレッドは空中で『破撃』を食らって闘技場の外壁まで吹き飛ばされる
普通の学生程度なら既に決着が着いている程の攻撃だが、普通では無いのがジャレッドという男だ
「ほう、今ので倒れないとはこの技、今までの決闘では出さなかったんだがな」
「………っは……流石に効いたぞ」
瓦礫から這い出て来たジャレッドの顔面は血だらけで制服も所々破けて裂傷が見えている
「一つ教えてくれ、剣聖スキルとは何だ?何故防げた?剣術スキルとの違いはなんだ?」
「違いか……………それは練度だ」
「練度?」
「Sクラスにも居るだろう?弓聖が」
「居るが……それが何だ?」
「彼奴は小さい頃から天才と呼ばれたはずだ、弓という銃で代行可能の武器が存在するのにも関わらず、銃と遜色ない攻撃スピードに威力、そして身体能力。俺も動体視力が優れているのか相手の斬撃は大体躱せる」
「なるほど、弓聖が凄いのは分かったが……ん?お前さっき避けなかったよな?」
「アルス=シス=エルロランテ、お前が異常なんだ!なんだ今の衝撃波は!?どうして俺の剣に対応出来るんだ!?」
「知らないな、これが俺の剣術であり技術だ。剣聖スキルを持った者が剣術の頂点に座せると思うなよ上には上がいるんだ」
ジャレッドはアルスに詰め寄り剣を振る、先程の剣戟から数手増えたがアルスに焦りは見えず片手で捌いている
アルスの衝撃波が外壁を破壊してジャレッドの頭に降り注ぐ
ジャレッドは岩片を切断しながらアルスに攻撃をしているが徐々に疲労が見えてきた
ジャレッドが地面を斬り上げて砂埃で周囲が包まれる
アルスの視界を遮るつもりだろうか、しかしアルスは『空間知覚』で位置は特定出来るため砂埃は特に意味をなさず、背後に肉薄して剣を上に構えたジャレッドの腹に肘打ちをする
「………うっ……おぇっ……」
「もう終わりか?」
「……ま、まだ…終わっていn……「終わりだ」………」
アルスは『四閃四死』でジャレッドの剣を粉々にする
「……なっ!?」
「俺の勝ちだ、生徒会には俺から伝える」
アルスは足早に闘技場を出て学園の寮に帰る
学園の寮前にはセレスティーナとグロウノスが紅茶を嗜みながらアルスの帰りを待っていた
「お待たせ、待たせたかな?」
「私は待っていないわ、でもグロウさんが少し居心地悪そうだったわ」
「急にストロヴァルス帝国から連れてこられて国の目が多い学園に再び来るなど……居心地は最悪だ」
「でも、セレスを一人にする訳にはいかないしグロウノスはセレスに手出さないだろ?」
セレスティーナはアルスとジャレッドの決闘の間グロウノスとお茶を楽しんでいた様でグロウノスにストロヴァルス帝国の国内情勢を聞いて話を広げていた様で一時間にも満たないこの時間を楽しんでいた
一方のグロウノスは仮面の男として指名手配されている為この場に居る事が気まずい様だ。しかしセレスティーナにグロウさん呼びを咎めない所から意外にも馴染めているようにも見える
「グロウノスはこの後ストロヴァルスに送ればいい?」
「あぁ、頼む」
アルスはグロウノスと『空間移動』でストロヴァルス帝国の帝都にある宿の一室に移動する
「あ、そうだセレスティーナ嬢には言ったが、ストロヴァルス帝国が虚無の大森林に向けて軍を出したぞ。詳しくはセレスティーナ嬢に聞いてくれ」
「へぇ、情報が筒抜けなんだな……」
「そうだな、兵力は疲弊しても情報力は衰えていないのが現状だ」
これは大陸にある全ての国に言える事だが間者というのは国の中枢から辺境まで至る所に居るのが現状で一家丸々スパイなんて事もよくある事例だ
「ありがとう、良かったな殿下からの株が上がるぞ」
「……」
アルスは空間移動でアトランティスに戻ってセレスティーナとそれぞれの寮に帰っていく
アルスの紫髪とセレスティーナの銀髪は月の光の下でとても輝いていた




