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THE BLACK KNIGHT  作者: じゃみるぽん
一章・物語の始まり
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【1章・冥土ノ土産ならぬ冥府のお土産】3

 とても興味深い提案だ、世界で五つしかない武器、“神器”だが犠牲するものによっては得るものより、失うものの方が多いのではないか、そういう考えが過ぎる



『我も困っているのだ、この“神器”が冥府にあると地上で神を殺す手段が減ってしまう、さっきも言ったが、生きた者がこの冥府を訪れることは基本有り得ない、過去に一度しか無かった、今回貴様が持って帰ってくれれば地上の悪神を滅する事も可能なのだがな』



恐怖を感じざるを得ない発言に背筋が凍るが、アルスは聞き逃さなかった



「それに?一度此処に来た方がいるのですか?」



『あぁ、神器の前の保有者だ』



「その元保有者は今何処に?」



『勿論死んだよ、神器の力は保有者が死ぬまで続く。本人曰く、この冥府に置いていく、らしいぞ』



「神器を…」



『その神器は嘗て聖剣と呼ばれていた』



(聖剣?話だと聖剣と呼ばれているのはカリバーンだけでは??)



『だが、その神器はやがて、魔剣と呼ばれた』



『そして、他の神器保有者より、圧倒的に正義感が強かった魔剣の保有者は率先して魔剣を用いて悪神を殺した、魔物も数え切れない程殺した』


(魔剣…まさか…)




『どうだ?今回は特別に犠牲にするものを自分で決めさせてやる』


『それに…無理に悪神を殺さなくても良い』



「なっ…!」





『一応我は神だそれくらいどうにか出来る、お前ほどの特別な者だとこの後得るスキルも凄まじいものとなるだろう、神殺しの使命は免れても世界と神はお前を離さないだろうな』




 アルスは迷う、神をも殺す武器だ、下手な武器よりは大分マシだろう、冒険者時代、上位ランク者の殆どが魔法武器と言われる属性魔法が武器に付与された武器を装備していた、貴族も多くこれを持っていたが、前世から五年しか経っていない為、冒険者時代の強力な魔法武器は未だ存在するだろう、貴族をよく思わない冒険者もいる中、金目当てで道中で襲われたり、いざこざに巻き込まれない様にするには丁度良いと、そう考えた




(冒険者ねぇ…よしっ…)




「………………神器が欲しいです」






『何を犠牲にする?』














「…………ニヒルとして生きた全ての記憶を犠牲に」



 本来、転移者・転生者のアドバンテージは前世の記憶がある事により、記憶を活用して今世を円滑に有利に進めることであり、アルスの選択はそれを破棄する提案である。お世話になった宿屋のおばちゃんにギルドの受付のお姉さん、ギルドマスターのおっさん。全ての記憶を消す事になる


 記憶はその人の軌跡であり、言ってしまえば全てである。ニヒルという人間を殺し、何も知らない概要だけを軽く見た様な”アルス=シス=エルロランテ”という人間に託すというのだ




『………いいだろう、持て』



声のトーンからしてニヒルのこの決断が如何に異例であるか、そして如何に狂っているかは理解しているのだろう


 ハデスからグリップは漆黒、ガードの部分は紺、ブレードの部分が花紺青色の美しい両刃の剣を渡される、手に持つとアロンダイトの美しさに惚れてしまう、長年使われてきた筈なのに刃こぼれが一切見当たらない、流石神器ということなのだろうか



『因みにあまり我に会ったことを口外しないように神は何時でも人族を監視している』




『では記憶を消すぞ………………神器の力は……いずれ分かる』




▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢



 目を開けるとアトランティス王国の教会にいた、白装束、そして左手には抜き身のアロンダイトが握られ聖水を浴びた状態だった。



「アルス様、今から神に祈りを捧げ、いいスキルが得られるよう懇願します。」


司祭が言う



 俺は冥府で中々長い時間ハデスと喋っていたが、此方に帰ってきた時の反応を見るに時間のズレがあるのだろう、好都合だから気にしない。聖水を浴びる意味は分からないが要は司祭の祈りによってスキルが付与されるらしい


『▉▉▉▉▉▉▉▉▉▉▉▉▉▉▉▉▉』



(ん?何語だ?少なくともアトランティスでは聴いたことがない、エストでもこのような言語は使わないという、10歳とはいえども貴族だ、ある程度の教養があっても理解出来ないとはやはり、まだまだ学ぶことは多いな)




「終わりました、アルス様」

「神がアルス様にお与えになったスキルは-------














---------時空間魔法です-----------」




「え?」


 時空間魔法。それはどんな書物にも載っていない極めて稀有な魔法、魔力消費が大きいため太古の使用者の一人は『空間移動』発動中、魔力切れを起こし魔法の強制キャンセルで移動中の体が分裂を起こしそのまま死亡

また一人は『空間知覚』発動中、知覚範囲の拡大で脳の処理が追いつかず脳が破裂し、死亡



 魔法レベルによっては、敵の身体を時空ごと切り離すことも可能だったり強力な魔法スキルだが繊細で扱う人によって強力スキルか雑魚スキルか別れるスキルである



「…………んー、伯爵家の名に恥じない魔法であるのですが…なんせ扱い方が…って何持ってるんですかっっ!!!」



(え?バレた?)



此処(ここ)には何も持ってこないで下さいと申しましたよねっ!?」

「いくら王女殿下の護衛でも抜き身の剣はダメですっ!!!」


(なんだ…アロンダイトなのがバレたのかと思った…)


アルスは内心ホッとする



(これに関しては謝る他ないな)



「申し訳ありません司祭殿、洗礼を受けることと護衛任務に興奮してしまっていた様です」


しっかり謝っておく




「別に次回がある訳ではありませんが、護衛だとしても抜き身は危険です!」



(本当にアロンダイトとバレていないだけ良かった。でも良く考えたらアロンダイトは長い間冥府にあり、アロンダイトを名前だけしか把握していない人が過半数なのか……鞘はどうしよう……馬車にあっただろうか……)



 何だかんだあってアロンダイトを鞘に納めガーネット王女を護衛する。何故持っていなかった筈の剣を今持っているのか、伝説の武器である神器を何故自分が持っているのか


対して疑問を抱かないまま馬車に乗り込み、腰を下ろす







 王城までの道中、クシャトリアからアロンダイトについて聞かれたが自分のお気に入りの剣ですとしか言えなかった。【剣術 9】を持つ人からしたらやはりこの剣が業物なのが分かるのだろうか…..、業物なのは確かだが【剣術 4】では上手くこの剣の力を引き出せないだろう



(これ程の剣を”無償”でくれたハデスの器量に感嘆するが鍛錬しなければ………)



「ところでアルスさん聞きました?」



ガーネット殿下が尋ねてくる



「なんと、今回のアトランティスの洗礼で水の精霊魔法スキル、剣聖スキル、氷魔法スキルが出たらしいですよ!」



(へー、どれも英雄が持つようなスキルじゃないか…)



「今年は凄いですね….、精霊魔法スキルが二つに剣術の最高峰のスキル、珍しい氷魔法スキルですか」



「ふふっ、アルスさんの時空間魔法も使い方次第ではこの中のどれよりも凄いではありませんか」



「そうです!アルス様。あまり自分を卑下するもんじゃないですよ」



ガーネット殿下とクシャトリア様が励ましてくるが決して卑下にしている訳でも無く、寧ろ喜んでるくらいなのだが


ガタッ


突然馬車が大きく揺れ、クシャトリアが立ち上がる



ドォォォン




自分の馬車より前方の馬車、他の護衛騎士が乗っていた馬車が爆発した



「敵襲です、アルス様はガーネット殿下を頼みます!殿下は馬車から出ないようにお願いします」


「分かりました」「分かったわ…」



 凄い、クシャトリア様の直感スキルが作用しているのか爆発音での敵襲という判断から行動に移すまでの流れがとても早い


 馬車の窓から外を覗くと数人の騎士と盗賊らしき者が闘っているのが見える。直ぐにガーネット殿下と俺のいる馬車を結界魔法で囲み、安全を確保するものの、アルスの結界魔法ではどこまでの攻撃を防ぎ切れるか少し不安が残る。幸い盗賊達は騎士の相手で手一杯の様で此方の馬車に一切近付いて来ない



盗賊の頭領だろうか、ほかの盗賊と比べ豪華な服を身に付け腰には魔法剣らしきものを提げている人物が居た


 意味ありげにニヤつきアルス達の乗っている馬車に狙いを定めた頭領は腰の剣を抜き、何かの詠唱をしながら距離を詰めてくる


雷魔法で馬車毎頭領を吹き飛ばすという苦肉の策を講じたその時


 視界に入った一つの影が頭領の真横にまで迫っており、銀色の剣筋が直線を描いたかと思うと頭領の頭が宙を舞い、血飛沫が美しく飛び散った


速いだけでなく正確に首を断ち切るその所業にアルスは圧倒され、唖然とその場から外を眺めるのみになっていた



(疾い……身体強化スキルは鍛えるとこれ程まで疾くなるのか……)



 息付く間も無く制圧し、何事も無かったかの様に撤収するその洗練された動きはこの国の少年達に”騎士”という職業に対しての憧れを抱かせるに十分な魅力を有していた

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