【2章・徒手空拳の良さ】
アメジストは『愛の守護石』『真実の愛を守りぬく石』などと呼ばれているそうです
あと、何となくアルスの家族紹介『洗礼の儀式』時点
エルロランテ伯爵家
me アルス=シス=エルロランテ 10 紫髪
father ウルグ=シス=エルロランテ32 灰髪
mother ユリアーナ=シス=エルロランテ30 緑髪
big sis マリア=シス=エルロランテ 緑髪
シス=エーデガルド 結婚15
夫---マルコ=シス=エーデガルド15
執事
セバス 50
メイド長
クルエナ 45
メイド
ヴィオラ 20
ユリス 20
アルス達一年のSクラスは武闘大会で優勝を勝ち取っても優越感に浸れる事は無かった
一年は優勝を勝ち取ったものの二年、三年と比べ
ては自分たちが劣って見えてしまう為ある意味仕方が無いかもしれない
スキルは勿論、技術の面が大きい二年、三年の試合は一年の観客席の盛り上がりより数倍の盛り上がりを見せていた
アルスの義理の兄に当たるゼロは抜刀術を駆使した試合運びで開始3秒で試合が終わってしまう
生徒会長の試合も凄かったが少しアルスの戦い方に似ていた
【極・身体強化】のスキル持ちのアナスタシア会長は開始数秒で相手の懐に潜り込み膝蹴りで相手の顎を砕いていた
観客席の上の方で見ていたアルスにもはっきり聞こえるほどの粉砕音は相手生徒の腹に銃を当てゼロ距離からの火魔法を使った射撃の爆発音で上書きされた
どちらかと言うと肉体派のアルスはアナスタシアの戦法がとても理想的ではあるのは頭では理解している
しかし、貴族の女性が同じ学園の相手生徒の顎を砕いて直ぐに追撃をするというのは中々肯定し難い
かと言ってアルスは入学してこれまで様々な盗賊と戦闘をしていてどんな奴も原型が分からなくなるほどボコボコにしている
本人曰く、証拠隠滅らしいがアルスのジョブは意識を奪い、フックで頚椎を折り、肘打ちで顎を粉砕する。
それは、異常に発達した筋肉のお陰で実は肥大化している訳でも無く、ただただ硬い
武闘大会前、ガーネットの護衛として王城で待機していた時の事
暇を持て余し、王国騎士の訓練所で素振りをしている際、物の試しで王国の武器の強度を測っていた
自分の身体で
変態でしか無いこの行動は特に意味も無く、流血はするものの貫通はせず筋肉の途中で引っかかる
この時アルスの顔は安心した顔で満面の笑みだった
武闘大会の話に戻るが、試合中アナスタシア会長の顔が暗くなる瞬間があった。試合に負ける生徒は総じて暗い表情なのだが会長も勝ち越していても暗い、日常生活でも上っ面だけの笑顔はかえって心配させるものがあるが果たして会場の中で気付いた者は何人くらいなのだろうか
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時間は武闘大会の終わりが近付き、だんだん空が橙色になる頃
アルスは家族やヴァイオレットの所で一家団欒していた
「アルスの試合が見れなくて残念だが、正直勝敗が決まっているからな」
「そうですね、アルス様は少し鍛え過ぎなのかも知れません」
「ウルグもセバスも……アルスをまるで修羅の様に言って……」
「母上、母上が修羅という単語を出したせいで父上とセバスが納得した顔になりました」
ウルグとセバスは修羅というのにピンと来たのか頷いている
「そう言えば、ヴァイオレット。アルスに言う事があるんじゃない?」
「そ、そうです!!アルス様!二年に上がられた際に専属メイドを務めさせて頂く許可が降りました!」
「おぉ!そうか、良かったね!」
二年からというタイミングなのは少し残念な気もするがエルロランテ邸のメイド修行も上手くいっているようでアルスはひと安心する
(------てか、護衛に付くメイドとは?)
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〜ストロヴァルス帝国の駐屯地〜
「もう、終わりだね。負けたよ」
そう言うのは雷帝、隣には炎帝と枢機卿、聖女が居る
血で濡れた武器や鎧が散乱していて魔法だろうか地面が陥没し、草木は焦げている。地面に血液の染みが所々あり、腐敗臭がきつい
「やはり、エストの冒険者達は強いね。ストロヴァルスの騎士はまるで歯が立たない」
10人も居ない冒険者の集団に蹴散らされるストロヴァルスの騎士達はどんな気持ちでこの戦争に参加しているのだろうか、元々は皇帝の独断かつ即断で行われ、戦う理由すらまともに開示されていない状態だ
「エル……いや雷帝、我々はそろそろ帰るぞ枢機卿と聖女も共にアトランティスへ」
「…はい」
雷帝、炎帝、エストから亡命して来た二人は馬車でストロヴァルスの駐屯地を出る
エストとストロヴァルスの戦争はストロヴァルス帝国側の騎士の被害が大きく、皇帝が白旗を揚げた事で実質的にエストの勝利となった
エストの戦力の大きさはストロヴァルス帝国の予想を大きく上回り、苦戦を強いられた
炎帝と雷帝は苦戦しつつも大軍相手に単騎で乗り込みアトランティス王国最上位の魔法士の力を発揮し、著しい戦線の後退は今回の戦争では見られなかった
戦争の最中に亡命して来た枢機卿と聖女の親子の動向が把握されているのか炎帝、雷帝の動向が把握されているのか分からないが行く先々にエストの騎士が待ち構えている事が多くあり、道中雷帝の『雷電刺突』が大活躍していた
「フェルさんは魔力切れは起こさないのですか?」
「そうですね……起こしますよ流石に、しかし最近は激しく消費する場面がありませんでしたし………前回の戦争の時はぶっ倒れましたよ」
馬車の中で雷帝に魔法の事を聞く枢機卿と笑いながら凄いことを言う雷帝には炎帝は呆れて聖女は目を見開いて驚いている
「凄いのですね、雷帝というのは。私も自分の身が守る事が出来れば良いのですが…」
「あれ?枢機卿の趣味って魔導書集めじゃなかったですか?魔法には困っていないと思ったのですが?」
「あぁ、アトランティス王国にも知れ渡っているのですね私の趣味」
「有名ですよ、因みに今回王城に直接向かうつもりなんですけど、その理由に魔導書を沢山持つ枢機卿を狙う貴族が少なからず居るからなんですよ〜」
「雷帝、枢機卿を心配させてどうする」
戦争直後だからか、それとも新たな脅威が生まれたからか、馬車の中では暗い雰囲気が長く続く
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アトランティス王国の王都でいつもの制服を脱いで普段着を着た一人の男が空に向かって叫んでいる
「おおおおぉーーーーい、グロウノスぅぅぅーーー!!!!!」
傍から見たらただの奇人だが、男の着る服は貴族の着る服そのもので所々にあしらわれているアメジストは男の紫髪を際立てている
ボコッ
「ちょっとお前…こっち来い」
紫髪の男はしわくちゃの老人に首根っこを掴まれて路地裏に連れていかれる
「お前、俺が後ろにいる事は知っていただろう?何故わざわざ叫んだ?」
「なんとなく」
「なっ!?エルロランテの餓鬼がっ、早く要件を言え、わざわざ学園を飛び出しているんだ、何かあるんだろう?」
「話が早くていいね、実は俺からグロウノスへの連絡手段が欲しい」
「ほう………確かに持っていないな、しかし、エルロランテの家の者に闇ギルドの場所を教える訳にもいかないから…………」
「そういう魔法無いの?」
「あるかもしれないが、俺の知る限りでは無い」
「じゃあ、不本意だがこれを持っててくれ」
アルスはグロウノスにミスリルの指輪を渡す、銀色ではなく黒色なのが死神という名によく合う
「これは魔力を込めたのか………なるほどこれで位置を特定するという事か、まぁいいだろう」
「これしか方法が思いつかない、不本意だがな」
「それは、此方も同じだ」
グロウノスが指輪を受け取り指にはめるとアルスは時空間魔法でその場から消える
(相変わらず隙がないな…)
グロウノスはそのまま依頼を遂行する為、ストロヴァルスへ馬車で向かっていた
グロウノスが乗る馬車は数人が乗る馬車で路線バスのような仕組みの馬車だ
グロウノスはざっくり言うと裏の世界の住人だが他に乗っている客は身なりが整った者から農業をしているのか土汚れが付いた者までいる
三時間程経った頃アトランティスとストロヴァルスの国境に着く、もっと早く着くルートはあるのだが虚無の大森林が邪魔してこの国境以外を馬車で通る事は難しい
アトランティスとストロヴァルスの国境には二つの国の騎士が常に駐屯しており国を跨ぐ者に目を光らせている
そして、二つの国で虚無の大森林から時折漏れ出る魔物の討伐と周辺の治安維持をしている
しかし、最近あった戦争からストロヴァルス側の騎士が明らかに少ないように感じる
(狙われているな……)
治安維持が行き届いていないのなストロヴァルス帝国に入った途端複数の野盗の気配を感じるグロウノス
今、グロウノスは老人の変装をしていて武器は持っていない。老人が赤黒い斧を持っているなんて色々不味い
数分後、案の定馬車は野盗数人に囲まれ御者が殺される
馬車の中は大慌てで我先と馬車を出るが今馬車を出ても外で殺されるだけだ
戦闘経験がありそうな見た目が冒険者の男は剣を抜いて野党に立ち向かっていくが数の力に押されて惨殺される
そして、数分後グロウノス以外が全員殺されたのか外が静かになり盗賊の一人が馬車に入ってくる
「よう、爺さん。ここに金目の物はあるかい?」
「無いと思うがの」
「そうか、なら有り金全部出してここから去りな」
グロウノスは正直に懐から皮の袋を出して中に入れていた銀貨数十枚を盗賊の足元に落とす。
「中々あるじゃねーか、よし爺さん行っていいぞ」
「ありがとさん」
グロウノスが馬車から出て本来馬車で進むはず道を徒歩で歩き出した時の事だった
後方から迫る矢に反応したグロウノスは振り向きざまに矢を掴む
「俺達盗賊がそう易易と目撃者を逃がす訳ないだろう?しかし……爺さん何者だ?」
(はぁ…)
「儂は少し、武芸を嗜んでおってな人殺しは君たちに劣らず得意なんじゃ----------------この様に」
音もなく弓を持った盗賊の一人の背後を取ったグロウノスは盗賊の頭と顎に手を置き捻る
ボギィ
盗賊全員が剣や弓を持っていて打撃系の武器を持っていない盗賊達以外に骨が折れる様な音を出せる者は老人しかいない
しかし、見た目にそぐわない音を出す老人を信じる事が出来ないのか硬直して誰一人動く事が出来ない
「なっ……な、なっ…何をしたぁぁぁぁぁあ!」
「見ての通りこの男の首を180°回転させただけだが?」
「そんな事が出来る老人がいるかぁぁあ」
「ここに居るぞ」
盗賊の一人が怒声をあげた瞬間グロウノスはその男の目の前に迫っていた
「ヒィッ、お前ら殺s………」
盗賊が喋り終わる前に両方の眼球を破壊したグロウノスはそのままの流れで盗賊の持つ剣を奪い首を落とした
一瞬の間が空いた時、四方に居た周りの盗賊も奇声を上げながら飛び掛ってくる
グロウノスは手に持つ剣を正面から斬りかかってくる男の胸に目掛けて投擲する
盗賊が扱う剣とはいえ研いでいるのか骨を貫きよく突き刺さる
正面の男が蹲り動かなくなるのを確認すると後ろに迫っていた剣を横に動いて躱す。躱した後間髪入れずに肘打ちで顔面を攻撃して怯ませる
左から迫っていた剣は怯ませた盗賊を身代わりにする。剣が味方に刺さり拳で攻撃してくる味方を攻撃しても動揺しないあたり人殺し自体には慣れているようだが、どうやら経験の差が大きかった様で拳で一撃も当てることが出来ずに二段蹴りで肋骨を折られて蹲ってしまう
残る盗賊はグロウノスの動きと仲間が瞬殺されていくのを見て、自分が攻撃するのに気後れしている
「”俺は”無理に殺しはしない、今日はこれで許す。まだ生きている者もいるんだ、早く手当てをしないと死ぬぞ」
グロウノスはそう言い残してストロヴァルスの帝都に向けてまた歩き出す
(はぁ……ここから帝都まで歩くの嫌だなぁ)




