【2章・王立魔法学園】16
〜エストとアトランティスの国境付近〜
辺りは身長程の草木に覆われ、何度も踏み倒された草木を二列で歩く50人の長蛇の騎士達
着る鎧は所々血が付き鎧を着ずに上裸で包帯を身体が見えなくなる程まで巻いている者
片腕、片脚が無い人まで居る
「団長、今回は想定より被害少なく済みましたね」
「そうだな、今回のアースドラゴンは小柄で脚の発達も途中だったのも大きい」
そう話すのは滅龍騎士団団長ザナトスと副団長ミストレイ=ドゥ=バージェスだ
「全隊っ!ここを抜けたら馬に乗って即王都のアーバンドレイク邸に戻る!」
「「「はっ!!」」」
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
エスト神聖王国〜大聖堂〜
赤い絨毯に立つ法王と少し離れた段の下に膝をつく騎士にしては煌びやか過ぎる鎧を着た二人組
「表を上げよ」
「「はっ」」
「今日呼んだのは他でもない、実験中のアースドラゴンが討伐された事でだ」
「何となく察しますが、私達はどうすれば?」
「因みに今回アースドラゴンを討伐したのは冒険者じゃないぞ」
「何と………それ程の騎士がまだこの大陸に残っていたとは……もしかしてあの意味分からない剣術使う騎士ですか?」
「違うぞ、あの剣術を扱う国はとうの昔に滅ぼした………んー……名前は忘れたがな。今回アースドラゴンを倒したのは、あの有名な滅龍騎士団だ」
「???------ルーファス知ってるか?」
「確か………アトランティスの中で比較的強い部類に入る騎士団だ」
「ルーファス君の言う通り、滅龍騎士団はフロイド=セーズ=トランツェルを含めた場合の近衛騎士団に並ぶ強さだ」
「しかし、流石に騎士団を攻撃するのは問題になるでしょう?」
「大丈夫だ、滅龍騎士団はアトランティスの貴族の私兵だ。多少のいざこざは何とかなる」
法王とSランク冒険者の二人は滅龍騎士団の討伐の命を受け、国境付近に向かう。マスキュラーの二人は滅龍騎士団を倒しそびれる事も考慮してエストの闇ギルドに掃討、証拠隠滅の依頼を出した
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
馬を走らせる滅龍騎士団の先頭を走るザナトスに前方から斥候として出した騎士が馬を走らして此方に向かって来る
「団長!10キロ先で金色の鎧の男に遭遇!戦闘が始まりましたっ!」
「何っ!?………ちっ……直ぐに向かうぞ…」
速度を上げた滅龍騎士団は数分で金色の鎧の男が座っている場所に着く
「何者だ………エストの騎士では無いな……冒険者か?」
「そうだ、我らはSランク冒険者のルーファス。法王の命を受け滅龍騎士団の討伐に来たのだが……私は法王から滅龍騎士団はアトランティス王国で強い部類に入ると言われたのだが……」
「何だ……期待はずれか?」
ザナトスとルーファスの会話はザナトスが今にも斬りかかる雰囲気なのにも関わらずルーファスからは殺意や敵意などを一切感じない
「一応聞くがそこの騎士お前が殺したのか?」
「はい、私が殺りました。私が出会った中でここまでのレベルの斥候を集められる騎士団は初めてです」
「貶すのか褒めるのかハッキリさせた方が騎士によっては対応が変わる事を覚えた方がいいぞ」
ザナトスとルーファスの会話はザナトスが熱くなる一方でルーファスは変わらず飄々としている
「------総員!我等が仲間の仇をここで討つ!」
「「はっ!!」」
「来いっ!楽しませてくれっ!!!!」
ザナトスの大剣をルーファスは紙一重で躱すがザナトスの大剣から火が吹き出てルーファスの頬が焼ける
「大剣型の魔法武器とは珍しい……どうやら中々の金持ちに雇われている様だな」
喋るルーファスを横から突きを刺すように放つミストレイ。ルーファスは突きを剣で受け流し中段蹴りでミストレイを吹き飛ばす
しかし、ミストレイの剣が当たったのかルーファスの手甲が崩壊し始め肘から下が露わになる
「それは………魔剣か………神器の成り損ないの癖に調子に乗りやがって」
ルーファスは突然打ち合っていたザナトスから方向を変え、ミストレイの方に地面を蹴り飛び掛る
「ユデム!ゴードン!二人は王都のアーバンドレイク公に連絡して来るんだ!」
「「はっ」」
二人の騎士が後方に駆けて離れていき、暫く経った頃、遥か後方から馬の悲鳴が聴こえる
ミストレイと打ち合っていたルーファスは顔をニヤリと歪めミストレイと距離を取り口を開く
「どうやら、相方が追いついた様だが………馬で向かったお二人は無事だろうか?」
「………ちっ……ミストレイ!早く片付けるぞ!相方とやらが来る前に」
「承知しました!第一、第二小隊はユデム小隊長、ゴードン小隊長の援軍へ向かえ!!!」
「「「はっ!!!」」」
ザナトス、ミストレイ率いる20名程の騎士は一人の金色の鎧に立ち向かう
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
「お前達が滅龍騎士団だな、俺はウェルナー。冒険者だが、法王から滅龍騎士団討伐命が出た為ここで死んでもらう」
 
銀色の鎧の男は淡々と告げる
ユデムとゴードンは目の前の男が相当強い事は経験上分かっていたがそれ以上に戦力を分ける必要があったのか疑問に思っていた
撤退する事を前提に考えた相手の戦略は
「「俺達を舐めているな??」」
怒気を含んだユデムとゴードンの声は辺りの空気を変える
ユデムの槍がウェルナーを捉えウェルナーの槍と衝突して火花が散る
瞬きする間も無くゴードンの剣がウェルナーの左腕に迫る。ウェルナーは槍の柄の部分で受け止めるが金属でできたウェルナーの柄でも歪んでしまう
ユデムの土魔法が地面から飛び出しウェルナーの太腿に突き刺さる
鎧ごと突き刺さった岩の塊は鎧の破片と共に太腿の深い所に刺さっている筈だが、突き刺さった脚を軸に蹴りをユデムに入れる
「お前、何者だ?」
「ただの冒険者だが?」
「人間か?」
「…………」
「あの伝説の魔人とやらか?」
「-------あんな下賎な者達と一緒にするな」
「じゃあ……一体何者だ?」
「お前らに教える事は何も無い。死ね」
再びウェルナーとユベム、ゴードンの戦いが始まる
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
アトランティス王国〜王立魔法学園〜
アルスは闇ギルドに出された滅龍騎士団の依頼の資料をカルセインとガーネット、そしてセレスティーナに見せる
「ちょっとアルス、これどうやって手に入れたのよ!!!」
「拾った」
「そんな嘘は………これ誰から貰ったのよ、闇ギルドの依頼資料なんて………」
ガーネットは内容より入手方法が気になる様だ
「ガーネット……今はそれどころじゃない…アルスこの情報は信頼できる筋からか?」
「はい、信頼出来るかは断言出来ないもののその依頼資料は闇ギルドに詳しい者からの情報です」
カルセインはこめかみに手を当てて肘を机につきながら何やら考えている。セレスティーナは身内という事もあり、珍しく落ち着きがなくあたふたしている
「ねぇ、アルス、この情報ってお父様は知っているの?」
「知らないと思うが………滅龍騎士団が何らかの方法で王都にいるアーバンドレイク公爵様に連絡する事は十分に出来ると思う、知っているかもしれないな……」
セレスティーナの心配している事は騎士団の安否だろう。龍を倒せる程の騎士達が簡単にやられるとは考えにくいが、この依頼の出し方にとても疑念を抱く
掃討と証拠隠滅
まるで既に倒した、あと片付けだけ頼む。と言わんばかりの文言がより一層疑問が深まる
「アルス……この事は”どんな命令”でも言えないの?」
まだ出処を考えていたガーネットからの質問
「いえ、王命であれば言うでしょう………しかし、その命令でこの事が明らかになれば少なくとも王女殿下の護衛の任は解かれるでしょう」
「そうなのね……なら聞かないわ」
納得はしていないだろう言葉だが、此処は無理矢理でも納得して貰わなければならない
ガーネットが言った後、突然セレスティーナがアルスの制服の袖を摘んで少し引っ張って言う
「アルスだったら…何とかならない?」
「---------正直何とか出来る」
次回、顔って大事
 




