【2章・王立魔法学園】15
セレスティーナは馬車に同乗している騎士に何度も行き先を問うが、返ってくる返事は安全確保の為のみ
セレスティーナが数分馬車に揺られていると突如馬車が止まる
(どうしたんでしょう……?)
馬車が少し揺れセレスティーナが前のめりに倒れ馬車の床に手をつく
「いやぁ……短時間で随分と遠くまで行くね。もう着くじゃないか」
セレスティーナが毎日のように聞く声が聞こえる、顔を上げるとそこには向かい側に座るアルスがアルスの横に居たはずの騎士の喉をかき切って座っていた
馬車の床には騎士から出た血が溜まり血の匂いが馬車の中に充満する
「アルス?」
「ん?どうした?」
「そんな魔法使えたのね、時空間魔法なの?」
「あぁ、そうだよ。空間を伝って移動できるんだ」
「どうして、私の場所が分かったの?」
「それはね………」
アルスはセレスティーナにピアスから位置を割出すことが出来ることを教え、この馬車がこの事件の黒幕であるウィンスターズ伯爵家の屋敷に向かっている事を伝える。既に門の近くまで迫っている事も
「これからどうするの?」
「取り敢えずセレスを学園に戻そうかな、ウィンスターズ家は親戚のバラムトレス家が片付けてくれるから今は放置かな」
「バラムトレスって……ドッセルに居る?」
「そうそう、貴族からは派閥問わず嫌われている家さ。気性は荒くても二十代半ばになって更に強くなったそうだし実力は確かだよ」
「まさか、バラムトレス家が親戚だなんて驚きだわ。アルスだけ強い訳ではなく一族全員が強いのね」
「そうだね……父上には勿論勝てないし、従兄弟のディーンさん、ジョンさんも話だけしか聞いた事なくて分からないけど、まだまだ及ばないかな」
「アルスより強いなんて想像出来ないわ」
アルスとセレスティーナは楽しく会話しながらアルスの『空間移動』で学園に帰る
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
ウィンスターズ伯爵邸ではヘルムントが学園から来る馬車の到着を待ち望んでいた
(そろそろだな………)
「ヘルムント様、馬車が到着しました」
「よし!今行く」
ヘルムントは馬車に近付くも馬車から騎士どころかセレスティーナも中から出て来ない
ヘルムントは馬車の扉に手をかけ扉を開ける
扉を開けると床から赤い液体が流れ出てヘルムントの足にかかる
「…ヒェアァァァァ」
ヘルムントが尻もちをつき狼狽する、馬車から流れ出る程の血液量から出血した本人が死んでいて、死後そこまで時間が経っていない事が分かる、馬車の中は喉が切り裂かれ壁にもたれ掛かるように死んでいる騎士
中には目当てのセレスティーナが居ない、騎士を殺すのはそこまで難しくなくても馬車をひくウィンスターズ家の家臣が気付かないはずがない
ヘルムントの策はアルスという一人の存在によって破綻した
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
セレスティーナ誘拐から二日後
ドッセル 〜とある高級バー〜
煙草を吸いながらグラスに注がれた酒を飲んでいる男
そこにバーの扉が勢いよく開き駆け寄ってくる豪勢な服を着た男
「ジョン様、アルス=シス=エルロランテ様から手紙です!!」
「おぉ!アルスからか!初めて手紙を貰うが………さて………どんな事を書いてきたのかな……」
〈拝啓、戦争があり慌ただしい世の中ですがお元気ですか?
本日手紙を出させていただいたのは私、アルスが個人的に闇ギルドの所属メンバーと手を組み、闇ギルドで上げられる依頼の詳細などを横流しして貰う事と、闇ギルドと繋がりが深く、フォースター家とも繋がりが深いと予想されるウィンスターズ伯爵家を徹底的に調べて法的措置を取って頂きたく筆をとらせていただきました
取り敢えずよろしくお願いしまーす。 アルス=シス=エルロランテ
追伸、また今度合わせたい人が居るので逢いましょう〉
「ほぅ……」
ジョンは従兄弟のアルスからの手紙の内容が何処か貴族とは思えない文の構成に親近感を抱きつつも数年特に連絡がなかったアルスからの手紙を嬉しく思っていた
ジョンが魔法銃を使うのにはちょっとした理由がある
それは速いから、魔法よりも敵に早く弾が当たり、剣を抜くよりも速く撃てる、遠くの敵も近寄らず一秒も掛からず殺せるからだ
男であるジョンは剣を学ばないため貴族の中では異端な存在であり、弟のディーンが剣を扱う事でさらに際立ち異端の目で見られる事が多い
「この手紙をディーンの所へ渡してくれないか、恐らく競馬場に居る」
「承知しましたっ!」
男がバーから去りジョンは煙草を吸い直す
(フォースターねぇ…………)
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
アルスとセレスティーナは二人で学園に戻っていた。そこには馬車で学園を出たはずのSクラスの皆とその馬車が何故か居た
「おぉ、アルスどこに居たんだ?」
エリゴスが言う、アルスはセレスティーナはたまたま会った前提で話をするが一度トイレと言ってトイレにしては長時間退席した事もありエリゴスは懐疑的だ
「エリゴス達は家に帰ったんじゃないのか?」
「何故か途中で安全が確認されたとかで学園にとんぼ返りさ」
(やはりセレスティーナだけが目的か……)
「まぁ、これからは暫く落ち着くだろう。武闘大会まで何も起こらなければだが」
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
季節は秋、アルス達は入学して半年と数ヶ月は過ぎた。王立魔法学園の生活にも既に慣れ生徒会長の謎の誘いやクラス対抗で行われる模擬戦でやたらと対戦したがる剣聖のAクラス
剣聖とは一度Sクラスへの昇格をかけて対戦している
結果は五戦五勝、武器破壊での勝利三回、四肢の骨折一回、脳震盪一回だ
これ程の傷を一時間で治す学園の治療師の皆さんはある意味恐ろしい
アルスと剣聖ジャレッドは数多くの死闘とも取れる程の決闘は一年生の中で恒例行事と化していた
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
「エルロランテっ!!今日こそはお前を倒す!!」
廊下で叫び、聴こえるだけで相手の心情が分かるような革靴の音が響く
「アムステルダムさん、しつこいですよ。治療師の皆さんから注意されたはずでは?」
「そんなものは、どうでもいいっ!俺はSクラスになりたいんだっ!」
「じゃあ…………侯爵家の生まれとしてエードリッヒ家の生徒会長さんを俺から引き離してくれないか?」
「------それは無理だ」
ジャレッドは先程の荒々しい口調からは想像できない程の冷静な口調で即答する
「俺の家、アムステルダム侯爵家は代々王族派だ。あんな貴族派筆頭のエードリッヒとは関わりたくない、この学園の生徒会長がエードリッヒ家の者というのも気に入らない」
アルスはジャレッドのアムステルダム侯爵家が王族派なのは勿論知っていた
アルスは知っておきながら侯爵家と公爵家の対立の深さ、程度、などを測っておきたかった
(ジャレッドは家族からは疎遠な存在らしいが、それでも王族派への敵視はしているんだな……)
「そうか……突然変な事を聞いてすまなかった、次は武闘大会でやり合おう」
「ちっ……」
アルスはジャレッドに背を向けガーネットやセレスティーナの居る所へ歩き出す
先程ジャレッドに会う前に”死神”こと本名グロウノスから渡された新たな依頼の情報資料
〈滅龍騎士団の掃討と証拠隠滅〉
を持って




