【2章・王立魔法学園】13
ヘルムント=シス=ウィンターズは王立魔法学園の上級院の一年生であり、成績53位のCクラスの男子生徒だ
Sクラス以外それぞれ20名で構成されたABCのクラスは成績順だが様々な要因でABCのクラスはクラス内、外のヒエラルキーが多少ある
伯爵家のヘルムントは家が割と裕福な方の貴族家の生まれでなんでも金で解決する典型的な悪徳貴族だ。クラスは低くても学園のヒエラルキーは高い方だ
「おいそこの執事、Sクラスの銀髪を調べろ欲しい」
「了解しました、少々お待ちを」
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〜数十分後〜
「ヘルムント様、Sクラスの銀髪というのはセレスティーナ=ディズヌフ=アーバンドレイク様で、公爵家の長女です。長男はダンケルク=ディズヌフ=アーバンドレイクです」
「………あのパーティーに居たな………あの時手に入れていたら………ちっ、公爵だったか……執事、公爵を攫うのに必要な人材は?」
「居ません、少なくともこの国にそのレベルの誘拐が出来る者は表世界に存在しません」
「裏世界なら居るという事か……よし闇ギルドに依頼を出せ。受注した者には最大限協力すると伝えろ」
「宜しいのですか?相手は婚約者が居る公爵令嬢ですよ?」
「そんな事俺には関係ない」
「------了解しました」
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白い仮面に黒いローブ、明らかに不審者の風貌の男はある貴族の家を訪ねていた
「依頼を受けた死神だ、依頼を受けたら家に向かえと言われて来た」
貴族の門が開き長い道を歩く、死神と名乗る男は歩きながら依頼主の財力の高さを見て少し驚く
(最近は貧乏貴族ばっかりなんだが……ここは違うようだな)
流れは止まったものの貴族家はとても多いアトランティス王国は比較的貧乏な貴族が多い
「御依頼を受けて下さった死神様ですか?」
「あぁ、死神はコードネームの様なものだ名前として扱ってくれて構わない」
「了解しました、死神様。今回の依頼の内容と流れを決めましょうか」
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死神は休日が明け学園が再開する前日の深夜にSクラスの教室に忍び込んでいた
真っ暗のSクラスの教室には普段の華やかさは無い、そこに華やかさとは無縁の白い仮面に黒いローブの男が床と壁更には天井をこじ開け、何か仕掛けている
(俺の所は終わった、あとは依頼主次第か…)
死神は教室を出てそのまま学園を出て、次の仕事まで学園前の通りで待機する
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「おはよう、セレス、ガーネット」
「えぇ、おはよう」
「なんで主人の私が後に呼ばれるのかしら……」
アルス達はいつものように学園に入っていく、上級院と下級院が入り乱れるこの場は休み明けでいつもより少し人気が多い
休みには実家に帰る生徒も多く、慣れ親しんだ実家に帰ったからだろうか、行き交う人からは一週間前の緊張感をあまり感じない
「皆、笑顔ですね」
セレスティーナが言う
「先週は忙しかったですもの、誰かさんのせいで」
ガーネットが言う、セレスティーナは笑うがガーネットの視線が痛い。何故かトラブルに巻き込まれるアルスは二人に沢山迷惑を掛けている自覚はあり、何とかトラブル回避に務めているがそれも叶わない
今日もアルスはセレスティーナとガーネットを下心丸出しで見つめる男子生徒を追い払い、謎についてくる生徒会長を撒いたりしていた
「それは本当に申し訳ない、いつか埋め合わせはするよ」
「「本当!?」」
「わざわざ嘘つく必要ないだろ?」
「ガーネットは外出には厳しくされているから私の家か王城でお茶会でもしましょう!!」
「そうね、それがいいわ!」
「分かった」
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〜Sクラス教室前の廊下〜
クラスの前の廊下には人だかりが出来ていて教室に入る事が出来ない
「どうしたんでしょう?」
「何かあったのかしら?」
アルスは状況を把握する為近くの生徒に話を聞く
近くの生徒の話によると、Sクラスの壁や、床、天井に火薬と爆発を起こす魔道具が発見されたという
その火薬はSクラスの教室は勿論学園の一部を吹き飛ばす程の火薬量だったという
「二人共、今日は火薬の処理で教室が使えないから模擬戦場での授業が先になるって」
「へぇー、変な事をする人も居るものですね」
「ほんとね、セレス、アルス行きましょう」
(学園にそんな奴が入ったなんて……まだまだ甘いな俺は)
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Sクラスの皆は模擬戦場で二人一組で模擬戦をしていた
「セレスは最近身軽に動く様になったね」
「そうね、鈍っていた身体もやっと動くようになってきたわ」
二人は会話を交わしながら剣を交える、セレスティーナの剣は王国の騎士がよく使っている今の王国流剣術
対してアルスは技と速さ以外特に今の王国流剣術と遜色ない旧王国流剣術
剣と剣の至近距離で行われる剣戟は傍から見ると演舞の様にも見える
「ところで、その白龍の剣って魔法剣なのかな?」
「分からないけど、ミスリルを使っているから恐らくそうでしょうね」
「今度魔法込めてみようよ」
「そうね、やってみましょう」
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それから数分長い剣戟をしたアルスとセレスティーナが模擬戦場の端で休憩していた時の事、学園の外には多くの騎士が右往左往していた
「おい、学園に伝えろ!学園の正門付近で大量の死体を発見、学園内に犯人が逃げ込んだ可能性有りと!」
「「はっ!」」
外に大量の人が居るのに気付いたアルスはセレスティーナとガーネットを呼ぶ
「学園の正門近くに多くの人が集まってる、何があったみたいだ」
「分かったわ、ヴァイオレットさんは?」
「ヴァイオレットなら大丈夫だ、俺の実家に送ってある。魔法の特訓だな、この先ヴァイオレットにも活躍して貰う必要がある」
「へぇ…ヴァイオレットさんって魔法使えるのね」
「ガーネット、ヴァイオレットは渡さないぞ」
「そんなに分かりやすいかしら?」
「あぁ、普段からヴァイオレットのスキルを探っているだろ、ヴァイオレットとの会話が不自然だ」
「アルスはそんな事も見てるのね、私に興味があるのかしら?」
ガーネットは赤髪を耳に掛け、俯きながら言う
「ない」
アルスは即答する
「な、何よそんなに即答しなくてもいいじゃない………」
「大丈夫よ、ガーネット。アルスはきっと照れているんだわ」
赤い顔で萎縮するガーネットにセレスティーナがフォローをする
「皆ー!聞いてくれ!今、学園付近で殺人があった!犯人が学園に入った可能性があるから王国騎士が学園に入ってくる!」
ゼアル先生が大声で言う、丁度のその時学園の中を沢山の人が走り回っているのを知覚する
(身体の動き……着込んでいるな…鎧か、でもこの鎧、重装備か?将校クラスの鎧だな……)
「そこでだ!各自武器を携帯、万が一の事を考えて数人で行動して孤立を防ぐように!」
「「はいっ!!」」
「セレス、ガーネット俺から離れないでよ、あと…………カルセインっ!!!」
アルスは大声で少し離れた所にいるカルセインを呼ぶ、王族を大声で呼べるのは学園内での特権だ
「なんだ!五月蝿い……」
「三人共、あとカルセインの護衛さんも聞いてくれこの学園に騎士が入ってきたんだが、どうやら将校クラスの鎧を着ている騎士が来ている」
「「え?」」
「ほぅ」
「それはおかしいわね、将校クラスが殺人事件如きに駆り出される訳ないわ」
「あぁ、そうだな。おい01」
「はい、なんでしょう?」
「将校クラスの騎士を見てこい、家名や所属を調べろ」
「承知しました」
そう言って”01”と言われた女獣人は模擬戦場を出ていく
この模擬戦場は現在Sクラスのメンバーしか居ない、皆は意外と落ち着いている
殺人犯如きどうってことないという気持ちの表れだろうか
特に慌てた様子無く、オロバスやストレイフなどはこの状況下でも鍛錬に集中している
暫くして01と呼ばれた女獣人が帰ってくる
「カルセイン様、将校の家名が分かりました」
「なんだ?」
「ガゼフ=フォースター、位は大尉です」
「………ちっ面倒臭い、フォースターの出か……アルス達を連れてこい話があると」
「承知しました」
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「で、そのフォースターを名乗る家は面倒臭いと………」
アルス達はカルセインに呼ばれ今回来た将校の事について教えて貰った
フォースターというのは家名というより組織名である。平民の中から才能のある子供を引き取り組織内で育て、騎士団や冒険者ギルドに送り込む組織である
カルセインが言うにはフォースターの組織は残虐的な違法人体実験を行っている可能性があり、支援しているのが貴族派の爵位が高い貴族ばかりという王族にとって目の上のたんこぶの様な存在だという
「今回のガゼフ=フォースターとやらは雇われたのだろうな何かの目的の為に」
「では、今回の一連の流れは全て誰かが仕組んだ事だと?」
カルセインの言葉にアルスが反応して言う
「あぁ、そうだろう……犯人は貴族派の人間だな」
「あっ………その騎士今こっちに向かって来てますよ」




