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THE BLACK KNIGHT  作者: じゃみるぽん
七章・起源戦争
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【7章・ザ・バランス・オブ・ジ・アポカリプス】2

自分ドラクエ等はラスボスを余裕で倒せる程レベルを上げて挑むタイプです

〜アトランティス王国、エルロランテ邸〜



軽い戦闘後という事もあり、血液や土で汚れているアルスはヴィオラとユリスに鎧の汚れを拭き取らせながら屋敷の豪華な椅子に座るグロウノスやアイザック、フォトゥンヘルムと同様に椅子に座りグラスを片手に談笑していた。



「済まない、先程まで一騎討ちをしてたんだ」


「へぇ、勝ったのか?」


「負けたら此処に居ないだろ」


「それはそうだな。しかし、一騎討ちか………古いと感じてしまうのは俺だけなんだろうな………」



引き攣った笑みを浮かべ酒を流し込むアイザック。



「でも、その感覚が分からない俺は羨ましくさえ思ってるよ」



微かに土や血液の匂いが辺りを漂っており、気分が削がれる中、アルスはある一つの歴史に終止符を打つべく緻密な計画とその流れを三人に話していく。



「遂に終わるんだな……」


「何年待った?」


「五十年位は待ったぞ、まぁ……待てたのは若のお爺様が残してくれたこの魔剣のお陰だがな」



フォトゥンヘルムが空いたグラスを上げると、セバスが即座にウイスキーを注ぐ。



「ハハ、前の剣聖が長生きしているせいで二人目の剣聖が生まれたのは中々禁忌を犯していると思うんだけど」



アルスもセバスが注ぎに来たタイミングで自分のグラスにも注ぐ様セバスに促した。左手の中指に填められた天秤の指輪は前線へと向かって行った一騎討ちの後にウルグから譲り受けたもので記録の保存の為にアルスが着用しているという訳だ。



「あの青年か、以前剣を合わせた時は家を出るとさえ豪語していたよ。どうやら冒険者に興味があるらしい。奔放な性格は既に剣聖を名乗れるレベルだな」


「後継者になるか?」


「-----難しいな、後継者として名乗って欲しくは無いが選ぶのは憎き神が選択したスキルの保有者のみだからな………あの制度もどうにか出来ないものか……」


「確かに、スキルは遺伝するがしない場合も多いと聞く。洗礼の儀式こそ狂った制度だよな〜」


「ああ、実の所自分の子供に剣聖の座は渡したいというのが本音の所だ」


「子供……居たか?」


「居ないよ、妻も。私には数人弟子と呼べる奴が居たが今はもう居ない………どうだ?」


「寂しいな」


「孤独だったが、この日この時を想えば苦ではなかったよ」



しんみりと話すフォトゥンヘルムは珍しく、アルスやグロウノス、更にはアイザックでさえも同情してグラスを目の高さまで上げて掲げた。



「劫火と驟がそろそろ着く頃だから行くか」


「「「はっ」」」



アルスは赤いマントを取った黒い鎧を再び身に着け、グロウノスは白い仮面と黒いローブを身に纏う。アイザックとフォトゥンヘルムは普段と何も変わらない服装だが、それが二人の服装の正解でもありアルスとグロウノスが口出したりする事は無かった。



▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢


〜エスト神聖王国、大聖堂〜



大きな扉が開き、大聖堂へと入って来るマルジェラ大司教。若干早歩きで螺旋階段を昇り、額に浮かぶ汗を拭いながら法王の元へと向かう。主神ウルスニドラの石像と対面し、何か手紙を読んでいた法王は勢い良く階段を此方に向かって来る大司教に気付き振り向くと大司教は荒れた息を整えながら送り込んだ伯爵家の人間が一騎討ちにて敗れ、国境付近まで近付いていた部隊も撤退に追い込まれたと報告する。


実際には報告に無い事だが、撤退を強いられた方の砦は三日の内に陥落してしまう恐れがあるとも告げ、指示を仰ぐ大司教。



「という訳です。これからどうなさいますか?」


「エーデガルドという男は危険だ。本来ならば早急な対処が必要だが、近い内にその必要も無くなるだろうから心配は要らない」


「な、何故でしょう?」


「気になるか? マルジェラ大司教」



壁一面に張られたステンドグラスは日光を取り込み、淡く法王を照らしている。



「……はい」


「それはだな……」






「法王様ッ! 大司教ッ! 国境が破られ、近くの街から救援の要請が出されました! 相手は白い鎧を身に着けた人間が多いとの事です!」



大聖堂に駆け込んで来た騎士風の男が告げた。


アトランティス王国の騎士で白い鎧と言えば真っ先に頭に浮かぶのは白虎騎士団の騎士達だが、同時に二つの国境が襲撃されるとは流石に想像していなかった様で大司教は報告を受けて慌ててしまう。



「な………す、直ぐ様兵士長を向かわせろ! AとSランクの冒険者も掻き集めるんだ!」


「はっ!」


「申し訳ありません法王様、私も少し騎士の配備の確認をしますので此処で失礼します」


「ああ、構わないよ。ディミトリが暇な筈だ、彼奴を送り込むといい」


「第三兵士長ですね、了解しました」



急いで大聖堂から出て行く騎士に続いて出て行く大司教。第二兵長のカリスが消えた現在、ベスティエルとディミトリしか兵士長は居らず、騎士の配備は限られてしまう。


大司教としても大勢の騎士を国境付近に送り込むというのはどうしても中央の警備が薄くなる事から気が進まないのだが、既に救援要請が出ているという事は対処しなければ二日の内に此処まで攻めてくる事が予想され、騎士を派遣する他無かった。



「居るのだろう? 出て来い。私一人だ」



閑寂とした空間に響く法王の声。呼応する様に鳴る複数の足音はそこに誰かが居るという証明であった。



「お前達の目的は知っている。今更私も抵抗する気は無いが、話をしようじゃないか。同じ大陸の最盛期を生きた存在同士だ、中身のある面白い話が出来ると思うぞ」



語り掛ける様な口調から焦燥は感じない。優しさこそ感じないが謎に自信がある様な口調なのが癪に障るところ。



「目的を知っているなら今直ぐ死んでくれ」



太い円柱の後ろから姿を見せたアルス達は風貌も相俟って悪者にしか見えない。



「やはりエルロランテ、しかも異邦人に死神の名を持つ者………剣聖まで居るじゃないか」


「全員何かしらお前に恨みを持っているんだよ」


「フッ………人間が」



笑い飛ばす法王は石像から離れ、手に短い剣を持ってアルスの方へと体の向きを変える。ステンドグラスからの淡い光の他に法王の持つ剣に光が集まり、白く光ると魔力の衝撃波、”魔力波”がアルスを襲う。



『結界』



「今更通用すると思ったか?」


「普通の人間ならば今ので死んだんだが…………ガッ……かっ………あ”が”ッ………な、何をしたッ?」



当然地面に膝を突いて口から血を吐き出す法王は状況の理解に苦しむと共に痛みで悶え始めた。


神器と異世界の人間でしか傷付かない筈の法王は自身の攻撃が防がれて瞬きをした次の瞬間には腹部から大量に出血していたのだ。他にも頭部には銀の銃弾や肩から袈裟斬りにされた様な跡が”一瞬の内に”刻まれていたのだ。


頭の傷と腹部を貫いている傷は修復が難しく、止まらない血を押さえようと刻まれた両手を即座に再生して傷を塞ぐ。


多少先程とは立ち位置が変わったアルス達の持つアロンダイトや片手斧、ダインスレイヴには血液が付着しており、滑らかで大理石の純白の地面は鮮やかな血液で汚されて小さな水溜まりが出来ていた。



「時間を止めたのかっ!? あの魔法は魔力消費が最も激しい部類に入るものだぞッ! 精霊魔法士でも無いお前が使える筈無いッ!!」


「確かに消費が激しいものでまともに使える様になったのは最近の話だが、予備の魔力さえあれば問題無く使えるぞ」


「化け物がっ………しかし【時空間魔法】の時間操作は世界の仕組みを大きく狂わせる禁忌だ。逆行など使ってみろ、存在自体が消滅しかねない」


「それは大丈夫だ。この時の為に色々と魔法については勉強した。今、俺達とウルスニドラ…お前が居るこの大聖堂はエストに存在していない」


「どういう事だ……?」


「大聖堂を丸々作り出した別の次元に隔離しているんだ。元あった場所には上手く似せた大聖堂を残してあるから神聖王国軍が怪しむ事は無い」


「物体どころか、建物一つを………何があっても知らないぞ。それ程の力、神が容認するとは思えん」


「お前が言うか……それを……」


「しかし、まだ手はある!……… 「聖女だろ?」……な………何故だ………」


「神器の犠牲が”声”とは到底信じれなくてね。当然怪しいと思ったさ。縁談は多く来ている筈の聖女が一向に王城から出ようとしないのは何か理由があるんだろうって、調べたら頻繁にエストに手紙を出しているから気付いたんだ。この女は”法王と繋がっている間者”だと」



神器の能力を使用するには発声が不可欠である。これはアルス自身が実証した事でもあり、近衛騎士団長が聴覚を失っていないというのも大きな根拠となるだろう。



「エスメラルダも聖杖を持つ聖女だ。返り討ちに遭うぞ」


「どうだろうな、信頼出来る二人を派遣したんだ。抹殺出来ると信じているよ」



完全に再生した手には再び白い光が収束し始めており、呆れた様にアルスは歩いて近付いて行って掌と床をアロンダイトで貫き、繋ぎ止める。


苦痛の叫びは長年味わう事が無かった事を実感させる程に酷く、大きく気分を害すものだった。



「ウルスニドラ、疑問に思わなかったか? 何故俺達がここまで早くお前を追い詰める事が出来たのか、この様な事が出来たのにも関わらず何故今のタイミングでお前を殺しに来たのか、と」



無言でアルスを見上げる法王に法王の威厳は既に無い。あるのはその疑問だけだった。



「沈黙は正解という訳か。-----少し古い友達の話をしよう。その男はある鉱山経営者の息子でね、小さい頃から鉱山に入ったり父のデスクの横で寝そべったりと何かしら鉱山と触れる生活を送っていたんだが、ある日鉱山に入ると多くの鉱夫が真新しい金属製のピッケルとスコップを持っていたんだ。そこでその息子は鉱夫達に尋ねたそうだ『それは誰から貰ったの?』とね、そしたら鉱夫達は笑いながら『あんたのお父さんから貰ったのさ』と言ったんだ。その時代は今程大陸が栄えておらず、鉱山経営者の鉱夫に対する扱いが奴隷に近しいものだった時代だぞ? 息子はそんな父を誇りに思い、家業を手伝うようになってからは経営を楽にする為に父のように鉱山を管理する人間を多く募集して開拓する土地も増やしたんだが、この募集した人間が悪い奴等でね……金を着服したり鉱夫を殺したり、好き勝手やる様になったんだ。耐えかねた息子は近くの領主に其奴等を捕らえる様に二日かけて頼み込み、自分の家に複数の騎士を引き連れて戻った訳だが戻った時には其奴等の頭には金属製の比較的新しいピッケルが突き刺さっており、体の至る所に何かで殴った様な跡が残って、虫が湧く程に時間が経過していたんだ。その光景を見た騎士達は鉱夫達が反旗を翻したのだと踏んで鉱山へと息子と共に急いで向かったんだが、面白い事に鉱山では今まで通り労働に励む鉱夫達の姿があったんだ。中には血の付いたスコップで地面を掘る者さえ居たという。-----分かるか? 鉱夫達は家にまで乗り込んで息子の父以外の経営者を皆殺しにした後に何食わぬ顔で労働を再開しているんだよ。金属製の道具という一種の武器を与えられた鉱夫達は何時でもその辛い労働から抜け出せた筈なのに今までせず、少し自分達に害をもたらす人間が出て来た途端殺すんだ。脈絡の無い話だが、俺達はその鉱夫達と似ているだろ? 魔法という便利なものを与えられて生活を営んでいる訳だ。好き勝手しているお前らを何時でも殺せるというのにな」



掌と床を繋いでいたアロンダイトを引き抜き、横に振り抜いたアルス。数秒後、血溜まりに何か物体の落ちる音がするとアルスを縛っていた重責の一つが解かれた様なそんな気がした。


”呆気ない”とは少し違う。


最終局面において死闘を繰り広げている時点で自身の鍛錬不足であり、準備不足。熾烈な争いを繰り広げる程力量が互角であるならば、まだまだ当人は未熟でしかないだけ。戦争という擾乱に紛れて目的を達成し、何事も無かったかの様にアルス=シス=エルロランテ中尉として戦場に戻るのが最適解なのだ。



「良し、後は掃除して帰るだけだ。ガーネットに怒られるから早めに王城に向かうけど、後の処理は任せても良いかな?」


「若は先ず休んだ方が良いと思うぞ」


「休むねぇ………分かった。休んでおくよ」

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