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THE BLACK KNIGHT  作者: じゃみるぽん
二章・学園
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【2章・王立魔法学園】2

アルスの朝は早い、例えそれが寮であっても


朝起きたら筋トレ、寮の周りをランニング、アロンダイトの手入れをしてから、食堂に行くまでは『空間知覚』を使い、セレスティーナとガーネットの周囲に危険が無いか監視する



空間知覚は性別、人の存在、悪意を持っている人の存在くらいしか基本的に分からない為、変な用途に使用することは出来ないし、アルスはまずしない



空間知覚中アルスは自分の部屋に向かって来ている女性の気配を知覚した



(なんだ……?)



女子寮のセレスティーナとガーネットの部屋にはまだ人が居る事が分かっているため、セレスティーナとガーネットでは無い事はほぼ確実なのだが



今日で学園生活一日目のアルスに女性の友達ができた覚えはない



悪意は無いのだが部屋の前に立っている



部屋の前に立っている女性が中に入ってこようとする。アルスは当然部屋の鍵は閉めてあるが扉を破壊されたらされたで後々困るので鍵を開けておく



アルスは座禅を組んだままの状態であり、目を開けたら目の前にその女性がいる



(……っ目を開けるしかないか……)



アルスは目を開ける、すると目の前にはカルセインの護衛であろう女獣人が居た



「おはようございますアルス様、カルセイン様がお呼びです」



そう言い終えた女獣人はペコりと頭を下げて帰っていく


(そ、それだけだと…!?)




数分後アルスはカルセインが居る部屋の前に立っていた。扉が開かれ中に招かれるとカルセインが椅子に座って待っていた



「早く座れ、大事な話がある」



アルスはカルセインの向かい側に座る



「なんでしょう?話とは」



「先日エスト神聖王国から聖騎士が出立したとの報告があった」



「聖騎士ですか?」



アルスは一度だけアーバンドレイク公爵の話で聖騎士が出てきた事があり、名前だけは聞いた事があったが詳しいことは知らなかった



「聖騎士は簡単に言うと”凄く強い騎士だ”」



「凄く強いですか?」



「事実だぞ、普段聖騎士はエストの法王の周りに居るから表舞台にあまり出ないが、聖騎士が表舞台に出てきたら何かが起こるとそう言われている」



「何が目的なのでしょう?」



「俺がわざわざお前を呼んだんだ、理由は一つしかないだろ?」



「ガーネット殿下ですか……」



「護衛の仕事はしっかり果たせよ」



「………了解しました」




カルセインは頷くとそろそろ学園に向かうぞと言い部屋を出ていく、アルスも急ぎ足でセレスティーナとガーネットを迎えに行く




▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢




「アルスが来たわよガーネット」


「そうね、アルスにしては珍しく何か焦っているわね何かあったのかしら?」



「すみませんお待たせ致しました、それでは行きましょう」



アルスはセレスティーナ、ガーネットと共に式場に入って行く



席に着くとガーネットとセレスティーナに視線が集まる。尊敬、嫉妬、欲情、様々だが時々不快なものを感じる、二人も同じようで浮かない顔をしている



しかしその空気も学園長が壇上に現れた瞬間霧散する。



ヘルブリンディ学園長、この学園の学園長をしており見た目は白髪に真っ白な髭を伸ばしたおじいちゃんだが貴重な氷魔法スキルをもっている。鑑定は無効化された為詳しく分からないが、学園長から感じる圧は年齢を感じさせない程凄いものだった



アルスは始めに新入生代表の挨拶をしなければならないため、学園長から名前を呼ばれ壇上に上がる



「この素晴らしい、精霊の祝福のような暖かい日にこのアトランティス王国の王立魔法学園に入学出来た事、そして快く迎え入れてくれた学園の関係者に心から感謝します。この学園に入ったからには国に、学園に、世界に、誇れるような学園生活を送る事を約束し、先輩方を見習い、努力し自分を高めていけるよう頑張りたいと思います。新入生代表アルス=シス=エルロランテ」




アルスは一礼して席に戻る、席に着くと女性が壇上に入れ替わるように上がっていく、生徒会長の

アナスタシア=セーズ=エードリッヒである。



アナスタシアは貴族界隈では魔法銃を使う事で有名な侯爵令嬢だ


魔法銃は自身が使える属性魔法を銃口から放つ事が出来る武器で一発一発の威力は通常の方法で放つ魔法より劣るものの、かなり命中率が上がる他込められる魔法が無限大なため、詠唱無しの複合魔法が二種類まで可能となる



しかし、魔法銃は基本的に武器破壊が弱点で魔法銃自体を損傷させる事で攻撃の手段を減らす事が出来る


(魔法銃と一度戦ってみたいな…でも強いだろうな)

(そう言えばカルセイン殿下の言っていた情報はどうやって掴んだんだろう?エストにスパイでも送っているのか?)



偽物の主神が信仰されているエストの法王の側近は一体何者なのだろう、神に近しい者なのかもしれない、そうした場合人間は神に太刀打ち出来ない



そうゆう決まりなのだから、神器を持つアルスがフロイドが動かなければ人間はどうすることも出来ない



セレスティーナとガーネットを守りきれるだろうか、この世界の理不尽さに心が締め付けられ、若干の絶望状態に陥るアルス



「アルス大丈夫ですか?」



そんなアルスの様子に気づいたのかセレスティーナが手を握ってくる、アルスの顔はどうなっていただろう



セレスティーナは勿論この混沌とした世界の事情を知らない、知らせる事も出来るが知らせるだけ酷だろう、どうしようも出来ないのだから



だからアルスは意志を固めたハデスが言っていたように



セレスティーナとガーネットに神が迫るというのなら殲滅しようと、例え神でなくても危害を与えようとするならば容赦はしない、と。これまでは上辺だけの軽い宣言だったのかも知れない



世界と神がアルスを離さないのなら全力で抗うと自分の幸せの為にやってやろうとそう誓った



アルスの長い思考の内に生徒会長は壇上から降りていた、そして長い間セレスティーナの手を握ったままだった。セレスティーナは赤面していた






▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢




同時刻


王都〜教会〜



「ちょっとこの教会規模が小さくないですか?」

「信仰心が足りないのではないですか司祭殿」


灰色のローブを着た男が司祭に話しかけている。


灰色のローブからは擦れ合う様な金属音が聞こえており、ローブの下は鎧なのだろう



「アトランティス王国は信仰心は低いんですよ、マスティマ様」



「そうですか……それは…大問題ですね」






アルスと聖騎士の邂逅は近い



▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢




〜数日前のストロヴァルス帝国〜



一方、5年前に召喚した転移者を”何者か”に殺されたストロヴァルス帝国は皇帝の独断でもう一度転移者を召喚しようとしていた



「皇帝陛下、準備が整いました!」



玉座に座るのは皇帝ネメシス=フォラン=ストロヴァルス



玉座の間には僅かな家臣と皇帝のみだ



「それでは召喚に入ります」



とても眩しい光が輝き中央の魔法陣が七色に光り出す、光が収まると中央には一人の男が居た



「………ここは何処だ?」




「よく来た異世界の転移者よ、我はネメシス=フォラン=ストロヴァルス、この国の皇帝だ」



「……転移?………皇帝?」



「そうだ、異世界の転移者よ、我は皇帝だ。早速だが名前を教えてもらえるか?」



「西条拓斗」



「サイジョウ=タクトじゃな」

「まず、サイジョウよお主神から何らかのスキルを貰っていないか?」



「スキル………確かに…貰ったが」




「どんなスキルじゃ?」



「【消滅】を貰いました」



玉座の間に沈黙が流れる



『あー、それ結構やばいスキルだねー』



玉座の間にいる全員が突如としてこの場の誰でもない声が聞こえて困惑する



『この前の転移者は微妙だったけど、今回はどうやら、上の神も本気を出してきたようだね』

『ウルス二ドラ様に知らせなきゃな〜』



「だ、誰だっ!?」


皇帝が叫ぶ



『どうしよっかな〜、そうだ!この子貰ってくね!』



玉座の間の空中に人型の白いモヤのようなものが浮いている



白いモヤは西条拓斗の腕を掴み消えた



「な、な、何が起こった……」



召喚され数分で誘拐される西条拓斗、数秒の出来事に混乱する玉座の間




「な、な、何事だっ!!、何者だ!あの白い奴は…

それにウルス二ドラだと……エストの主神じゃないか……」



「皇帝陛下、今のは狂った信仰心を持ったエストの犯行でしょうか?」



「貴重な転移者が奪われたのだぞっ!!エストだろうと何だろうと許されることではないっ!!」



「では……どうしましょう?」



「帝国に逆らった者は皆殺す、狂った聖職者の集まりの国など潰してくれるわっ!」

「エストに宣戦布告だ、今までは見逃していたが今回は許さん」




「しかし、皇帝陛下国民にはどんな説明を?」



「そうです、今回の件は秘密裏に進められた事故、急に戦争など、国民の帝国の不信感を募らせる可能性が……」



「黙れっ!我が進めろと言ったら進めるのだ」



「しかし、いくら小国とは言えエストには聖騎士と呼ばれる化け物たちがいます!帝国にも多大な損害が予想されます!」



「まさか貴様エストに怖気付いているのか?」




「いえ……そのような事はありません…」



「………ならばアトランティス王国の軍を少し借りればいいだろ?」



「それは……王国に貸しを作る事になるのでは?」



「それは違う。貸しを作る訳では無い、寧ろ此方側が貸しをしている」



「あ、あの二人ですか!?」



「そうだ、我が帝を付くのを許した化け物が二人も居るじゃないか、今こそ貸しを返して貰おうじゃないか」



ストロヴァルス帝国はエスト神聖王国に宣戦布告をした。そして帝国はアトランティス王国の炎帝、雷帝に戦争への参加を命令した。アトランティス王国は帝国の命令を断る訳にはいかず、二人のみで参加させる事にした



何故戦争に二人だけなのか、それはストロヴァルス帝国が敗北する事をアトランティス王国側が予想していたからである



帝国は大陸一の領土を持つ国だが、切り札となる転移者の存在も死んでおり、最近勢いが増しているエストに対抗するのは難しいのでは無いかという考えだった為である。新しい転移者の召喚で起きた戦争だとは知らずに



▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢



アトランティス王国〜王城〜



「ほ、報告ですっ!!!」



「どうした?」



王城にある一室、近衛騎士団長の部屋に一人の騎士が駆け込んでくる



「ストロヴァルス帝国がエスト神聖王国に宣戦布告をしましたっ!!!」



「何っ!?」



「それにあたって先程ストロヴァルス帝国から炎帝、雷帝の戦争への参加要請が通達されましたっ!!!」



「今すぐ、陛下に報告するぞ!大臣と炎帝、雷帝を召集しろ!」



「はっ!」



王城〜玉座の間〜



「帝国は何を考えているっ!」

「要請だと?内容は命令に等しいではないか……」


国王が唸る



「陛下、今回の宣戦布告はストロヴァルス帝国に居る間者も掴めなかったとの報告があります」

「恐らく、秘密裏に進められた宣戦布告でしょう」



「トランツェル近衛騎士団長よ、調査が甘いのではないか?」



「それは無い、デルドリアン王国騎士団長。ストロヴァルス帝国の中核には大勢の間者を紛れ込ませてある。その中の誰一人も知らなかったのだから極小数での決定である事はほぼ確実だ」



「ほぅ…恐ろしいなトランツェル近衛騎士団長は」



「フロイドさんよ〜、もしかして今回俺と炎帝のみで参加出来るんじゃないか?」


雷帝、エル=ドゥ=フェルが言う



「そうだ、今回は二人にしか要請が来ていない」



「では、フロイドよわざわざ軍を派遣せずともいいと言うことか?」


アトランティス国王が言う



「恐らく、そうでしょう。此方側も負け戦に無理に兵をつける事など出来ません」


フロイドが言う



「確かに…帝国はエストに負ける可能性があるか………今回の要請に応じる」

「国民に発表だ、ストロヴァルス帝国とエスト神聖王国の戦争に炎帝、雷帝の二名を参戦させると」



「「「はっ!」」」






アルスは果たして学園生活を楽しめるのか……

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