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THE BLACK KNIGHT  作者: じゃみるぽん
七章・起源戦争
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【7章・初陣】3

いやー、面白いですね。タイトルを変えた途端PVが減るんですよ。偶になろう的な長文タイトルを馬鹿にするような人をSNS上で見かけますが、作品情報をタイトルに載せなければ埋もれてしまうという時代の流れなので寧ろその商法は頭が良いと称賛されてもいいんじゃないかなぁと個人的には思うんですよね。まぁ自分は変えませんけど


埋もれるからこそ、この作品を見つけてくれた人には感謝が絶えませんし、その人達の評価が糧になるんですよね。

国境線間際で待ち構えるアトランティス王国軍に近付いて来るエスト神聖王国軍の騎兵達は豪華な装備を身に付けており、騎兵も歩兵も全員がヘルムで顔面を隠していた。


ゆっくりと馬を走らせて来る神聖王国軍がある一定の距離を保った状態で留まった事で此方に攻撃を仕掛けて来る様に思えず、一万は居るであろう騎士の中から一人、交渉人だと思われる騎士がウルグとエーデガルド辺境伯の居る中央へと向かって来ていた。



「交渉だと思うか?」


「思えませんね。あの鎧、身分が高いのでしょう。一騎討ちかもしれません」



王国軍側に静寂が訪れ、此方に向かって来る騎兵の馬の足音だけが響き渡る。



「私はエスト神聖王国侯爵家、当主のヘクトル=バーンウッドだ。我々は既にアトランティス王国を壊滅させる用意を整えている! しかし、法王様は無益な殺生を好まない! 撤退し、其方の第二王子に国を譲るのならば我々も撤退しよう!」



ヘクトルという騎士の声が王国軍側に響き渡る。



「私はここの指揮官であり、将軍のエーデガルドだ。其方は撤退の助言に来ただけか? 其方が我々を壊滅させるという根拠が無い以上、絶対に退く事は出来ないっ!」


「-----やはりか、法王様の言う通りだ。貴様等は神聖王国を見誤っている!」


「見誤っているから何だ? 其方の一方的な撤退命令には我々を動かせる強制力が一切無い!」


「強制力か。-----であれば強制力を持たせようじゃないか、一騎討ちだ。私とて神聖王国を支える侯爵家当主、私に見合う代表者を出してもらおう」



やはりか、とウルグは苦い表情を浮かべる。第一師団、第七旅団の騎士の中にも当然侯爵家の人間は多く居るだろう。しかし、この一騎討ちは勝たなければ意味が無い。その為には侯爵家当主であるウルグや辺境伯家当主のエーデガルドが相応しいのだが、問題が一つあった。


相手が神の系譜に連なる者であった場合、絶対に殺せないという事だ。これは不利などという問題では無く、致命的な問題。


悩むウルグに周りからの視線が集まる。第一師団の騎士も第七旅団の騎士も相応しいのはウルグだと思っているのだろう。条件や状況を考えると当然の視線なのだが、ウルグとて無駄死にはしたくない為に国境線を踏み越える一歩を渋っていた。



「迷っているのか? それとも私に見合う様な人間が居ないのかっ!?」



急かすヘクトルが若干嬉しそうなのは、何故だろうか。



(行くしかないな……)



ウルグが意を決して片足を数センチ上げた瞬間。


誰もがその行動に安堵した時だった。


自分の前進を拒む様に目の前の空間が捻じ曲がり、悪魔を連想させる黒い鎧を着た見覚えのある人物が国境線を越えてウルグの前に出て来たのだった。


黒い鎧の背中に付いた赤いマントがウルグの視界を埋め尽くし、その黒い鎧の隣から美しい赤髪をハーフアップで纏めた女性や近衛騎士の様な風貌の騎士達が二十人程出て来る。



「ん……? あ、父上。突然現れて申し訳ありません。少し近過ぎましたね」



アルスの視線の先に居るのはヘクトルだが、取り敢えず無視して真後ろに居るウルグの方へと体の向きを変えた。



「アルス………ちょっと、それどころじゃなさそうだけど……?」



ガーネットに鎧を叩かれ、再び振り向いたアルスは辺りを見回し顎辺りを擦る。



「-----これは一騎討ちですか。相手は?」


「神聖王国の侯爵家の者で自身を当主と言っていた」


「侯爵家の当主ですか………父上は”アレ”を警戒しているのですか?」


「ああ、一騎討ちでは埒が明かない」


「分かりました。-----俺が出ます」



恐ろしい程即決で一騎討ちに名乗り出たアルスだが、自軍を含めヘクトルも何が起こっているのか全く理解が追い付いていない状態で、ヘクトルは指を震えさせながらアルスの足元を指差して今にも激昂しそうな雰囲気を漂わせていた。



「だ、だ、誰だッ!? そこは神聖王国内だぞ。侵攻と見なすぞ!」



確かにアルス達特別護衛小隊とガーネットは国境線を踏み越えており、武装した騎士を従えている為に侵攻行為だと見なされてもおかしくないのだが、今更だ、とアルスは笑い飛ばして馬上のヘクトルの元へと歩いて行く。



「俺はアトランティス王国侯爵家、次期当主アルス=シス=エルロランテ。一騎討ちに応じよう」


「何を許可も無く………第一、当主と次期当主は全く釣り合わないだろッ!」


「俺は王家の護衛でもあるぞ? それに直ぐ後ろに居る騎士達の指揮官でもあるし、-----”宮廷魔法士見習い”だ。不十分か?」



王家の護衛がそれなりの地位である事は他国の貴族とはいえ理解出来るだろう。そして後ろに居る騎士達というのは勿論特別護衛小隊なのだが、元の所属は近衛騎士団で一段と豪華な鎧を身に付けている事から与える威圧感はそれなりにあった。


アルスの肩書きに驚いたのか、未だに黒い鎧という風貌で驚いているのか、ヘクトルは無言でアルスを睨んでいる。しかし、無言なのはヘクトルだけでは無かった。


”王家の護衛”


これは王国内で知らない者は居ない程有名な肩書きだ。


”騎士達の指揮官”


これも大々的に発表されている為に多くのアトランティス人が知っている。


”宮廷魔法士見習い”


この肩書きが理解出来ず、王国軍の騎士達は無言で固まってしまっていたのだ。


確かにアルス=シス=エルロランテと言えば世にも珍しい【雷魔法】スキルを有しており、王国宮廷魔法士で雷帝の名を冠すエル=ドゥ=フェルの弟子という噂が至る所でされている。しかし、王宮の警備を主な仕事とする宮廷魔法士という職業に”見習い”などというあやふやな立ち位置は存在するのだろうか。



”存在しない”しかし、その存在しない事をヘクトルは知っているのだろうか。



国王陛下直々に実力を認められた魔法士だけが宮廷魔法士という地位を得られる訳だが、現在二人の宮廷魔法士が両方とも雷帝、炎帝という大きい称号を得ている事から宮廷魔法士という職業の認知度が薄れているのは事実。アトランティス人がそんな見習いなどという職業は無いと知っていてもエスト人がそれを知らないというのは十分考えられるだろう。そこの認識の甘さを利用してヘクトルに付け込んでいるのだ。



「分かった。それ程の肩書き、私の相手に相応しいと見た。一騎討ちだ!」



アルスがヘルムの中でニヤついても相手には伝わらない。



「魔法は?」


「無しだ。己の肉体と剣のみで対決する」


「了解した」



アルスは更に一歩踏み出し、アロンダイトを引き抜く。蒼く輝いている剣身はまるで目の前の存在を目前にして悦びを覚えている様で、対するヘクトルも剣を抜くが奇妙な色をしたアロンダイトを見つめるばかりでそこに警戒心や恐怖心は感じられなかった。


強いて言うならばアルスの格好に若干の警戒心と恐怖心を抱いているが、昂っているのか言及せずに一騎討ちへと意識を集中させていた。


不可解な現象の連鎖で辺り一帯が謎の緊張に包まれた中、走り出したのはアルスだった。


鎧の重さを感じさせない速度で迫るアルスは剣を下に構えて重心を低く保ちつつ接近する。当然剣先が下を向いているのならば上から攻撃するだろう、予想通りヘクトルは剣をアルスの頭上へ振り下ろした。



『絶影』



振り下ろした先の地面が沈み、先程まで目の前に居た黒騎士が忽然と姿を消したのだ。空気を切り裂く様に振り下ろされた剣を途中で止めて、ヘクトルは気配のする後ろへと体を捻ると同時に剣を振った。


しかし『絶影』は移動だけする技では無い。その驚異的な脚力で回り込んだ後に剣を振るという移動と斬撃がセットになっている技だ。


ワンテンポ遅れたヘクトルの斬撃が届く前にアルスの斬撃はヘクトルの剣を握る右手首に届いているのだった。



「くっ………がぁっ!……クソッ…!」



切断は免れたものの、噴出する血液から傷が深い事が分かり、ヘクトルの顔面とアルスのヘルムが返り血塗れになった。


あまりの激痛に叫び、一度前蹴りで距離を取ろうとしたヘクトルだったが蹴り如きではアルスの体を動かす事も出来ず、無防備な左足をアルスの前に差し出す事となってしまう。



「何ッ……!? あ”ぁぁ!!」



アロンダイトが鎧を砕き、ヘクトルの左腿を大きく切り裂く。


自分から流れ出る血液に”何故か”驚愕し、狼狽えながらも果敢に剣を振ってアルスに猛攻撃を仕掛けるが、心の乱れが枷となり攻撃は全て弾かれて劣勢になってしまう。


アルスの圧倒的強さは噂だけのものでは無い、と王国軍側の人間は目の前で行われている一騎討ちにて目の当たりにする。


開幕の一撃こそ人間離れな芸当だったものの、後の攻撃は単に経験と余裕が成す一方的な普通の剣術である事からその根幹にある実力が垣間見えるといったもの。



「な”、何故だぁ”ぁぁあ!!」



脇腹付近にある鎧の隙間からアロンダイトを突き刺し、上向きに押し込むと内蔵を穿いた激痛に叫ぶヘクトル。この場でその疑問の意味と答えを知っているのは僅かだが、大半の観衆がその叫びを自身の能力を過信した者の断末魔だと勘違いした事だろう。


地面に崩れるヘクトルは全身から血を流し、真下に血溜まりをつくる。呆気ない幕引きに誰もが唖然としてアロンダイトに付いた血を振って落とすアルスの様子を只眺めるのみ。



「「「オオオオォォ!!!」」」



護衛小隊を中心に大歓声が上がり、その他の王国軍騎士達が後に続いて歓声を上げた。



「-----父上」


「ああ」



ヘクトルが倒れて数秒後、遠くの方から大きな角笛の音が聴こえる。一騎討ちの勝敗が決した事で神聖王国軍が動き出したのだ。騎兵らしき影が蠢き、此方に向かって来るのが肉眼でも把握出来て王国軍の騎士達は次々に身構えた。



「放てッ!」



魔法が使える者は詠唱し、走る騎兵に向かって様々な属性の魔法を撃ち込んでいく。魔法大隊の様な同属性での一斉射撃は不可能だが、十分な足止めは出来ていた。



「アルス、大丈夫?」


「ああ、問題無い。それより出番じゃないか? あの数は専門分野だろ?」


「そうね、任せて頂戴。本気の精霊魔法を見せてあげるわ♪」

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