【2章・王立魔法学園】
試験が終わって監督官としての仕事を終えた《ワルプルギス》の四人は王城に向かって歩いていた。
「なぁ、リューク。あのアルスっていう坊ちゃん何者だ? お前がそこまで手が出なかったのは何時ぶりだろうな……」
「あぁ……本当に何者だろう…アルス君の攻撃に俺の思考が追いつかなかった。脳で処理した情報を筋肉に伝達する前に次の攻撃が来るんだ。文字通り手も足も出なかったよ。それに見ただろ? アルスが使ったのは剣だけ、蹴りもなく、殴る訳でもない、魔法の使用も許可したにも関わらず剣だけで俺に勝利した…」
リュークは新たに現れた強者に期待し、胸を膨らませていた。
「なんだそれ……あ! そうだミレイユが担当した女の子も中々凄かったよな」
「そうね、多分二人共精霊魔法が使えるわね、火力が他の子と比べて圧倒的で、詠唱も無いんだからそれはもう…凄かったわ」
魔法士の女性が言う
「国王陛下は驚くだろうな……アルス=シス=エルロランテは化け物でしたって」
四人の冒険者は笑いながら王城に入って行く。行動の一つ一つに品性が見え隠れしているのはSランク冒険者だからか、王城との行き来に慣れているからか。
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〜王城、玉座の間〜
「なんだと!?お前らが負けただとっ!?」
「正確には俺だけです。アルス=シス=エルロランテは礼節を持った化け物かと。危険です、殺す以外の手加減はしていないつもりでしたが予想外過ぎた」
「んー、薄々そんな気がしていたが……この件は口外しないように。-----フロイドっ!」
「はっ」
「アルス=シス=エルロランテを取り込もうとする貴族を何とかして抑えろ。そして監視を怠るな」
「承知」
「ワルプルギスよ、感謝する。これからも精進するように」
「「はっ!」」
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〜エルロランテ伯爵邸〜
「そうですか雷霆ですか……確かにいい選択ですね……」
アルスとセバスが試験について話し合っている
「雷霆は無詠唱では発動が難しいですからね……十分アルス様が魔法も得意な事は伝わっているのではないでしょうか?」
「だといいな…」
「アルス、剣の方はどうだった?」
ウルグが聞いてくる
「圧勝です」
「ほぅ……慢心するなよ。堕ちるぞ」
「はい」
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〜アーバンドレイク公爵邸〜
「セレスよ、ではアルス君はSランク冒険者に圧勝という事か?」
「はい、剣のみで」
(ワルプルギスのリュークと言えば魔法ありであれば今の王国騎士団長にも匹敵すると言われているんだが……あの出鱈目な剣術の前には無力か……)
「凄いな……本当に旧王国流剣術を習得したらしい…」
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〜エスト神聖王国、大聖堂〜
「お呼びでしょうか?リクス法王」
「カトル枢機卿がアトランティス王国に送り込んだスパイによる第三王女の殺害が失敗した」
「カトル枢機卿は最後の詰めが甘いですから」
「聖騎士マスティマよ、直ちにアトランティス王国に出向き第三王女を抹殺するのだ」
「全ては神の御心のままに」
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試験合格発表の日になった、アルスはセレスティーナとガーネットと合格発表を見に行った。魔法学園の門には大々的に合格者の名前と成績が高い順に張り出されていた。
1位 首席 アルス=シス=エルロランテ
2位 カルセイン=ヴァン=アトランティス
3位 ガーネット=ヴァン=アトランティス
4位 セレスティーナ=ディズヌフ=アーバンドレイク
5位 グレイス=セーズ=ステラクチート
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27位 ジャレッド=セーズ=アムステルダム
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アルスは首席合格だった、アルスは王族を差し置いての首席という事で周囲から心配する様な目で見られる。
(ちょっとまずいかな……)
アルスは焦燥しつつ、セレスティーナとガーネットを連れて学園に入っていく。
「待て」
アルスは急に呼び止められた。アルスは時空間魔法で常に周囲を警戒しているため後ろに人が居たことは知っていた、そして声に悪意がない事から振り向く、続いて二人も振り向くが目視して顔を確認する前にガーネットが話しかけてしまった。
「カルセインじゃない、どうしたの?」
ガーネットの言葉に驚きアルスとセレスティーナは片膝を突くが、カルセインから制止の手が出て立ち上がる。
そこに居たのはカルセイン殿下だ、そして後ろに居るのは護衛だろう、女の獣人だ。
「もう知っていると思うが俺はカルセイン=ヴァン=アトランティスだ、アルス=シス=エルロランテよ、-----話がある」
「此処では話せない内容でしょうか?」
「いや、そういう訳ではない、此処でいいなら此処で話すぞ」
無言で頷く。
「俺は、今回の試験が公平だったと思っている」
「私も手加減は一切しておりませんし、違反行為も何一つしていません」
「しかし、一人だけ学生の領域を超えている桁違いな奴が居た」
「はて……」
(俺の事だろうな…)
「アルス=シス=エルロランテ、お前だ」
「殿下、アルスで結構です」
「では、アルス単刀直入に聞く、お前は何者だ?何を考えている?国を脅かすつもりはあるのか?」
この類いの質問には答え難い。神器の事を言えば即連行されるだろう、アルスは普段セレスティーナとガーネットを護衛する事しか考えていないし、勿論国を脅かそうなど微塵も考えた事が無い。
「私は……ただの伯爵家のアルスです。セレスティーナ嬢とガーネット殿下を護衛する為自己研鑽を重ねに重ねた、ただのアルスです」
「勿論、国を脅かそうなど微塵も考えたことはありません」
「……そうか、ならいいんだが
「ちょっとカルセイン!アルスに失礼よ」
ガーネットが言う、カルセインはガーネットやセレスティーナを差し置いて二位の成績を修めている、洗礼で精霊魔法を貰った二人を超えるのは並大抵の努力では不可能なはず。やはり、2位というのが悔しかったのだろうか。
カルセインは槍を使うらしい。鍛錬にはあの近衛騎士団長が付いていたと言われているため相当なレベルでやりを扱えるのだろう。
アルスはスキルが気になり鑑定を使ったが、やはり王族は皆鑑定無効の魔道具を持っているのだろう、視る事が出来なかった。
カルセインとの邂逅の後、制服や寮の確認をした。
制服は黒を基調として所々白色が使われている見た目が華美な物だった。
寮は男女で分けられており、一人一部屋という太っ腹な寮で一年、二年、三年寮がある。
王立魔法学園では合格発表の次の日から寮生活が始まり、学園生活が始まる。明日は学園で新入生挨拶をしなければならない、寮を探検する暇は無く、原稿を覚えるのに残りの時間を使ってしまった。
一方、女子はどうなっているのかと言うと、上半身は特に変わらないものの、下半身が長いスカートタイプになっていた。
寮は特例でガーネットの部屋にセレスティーナも一緒に住む事になっていて初日からテンションが上がっていた。
アルスが明日の原稿に追われている最中、ガーネットとセレスティーナは二人の女子会を楽しんでいたのだった。
今回のSクラスは1位から10位までの生徒がSクラスに振り分けられる事になっている。
ここで毎回起こるのが、CクラスはBクラスにBクラスはAクラスにAクラスはSクラスに脅しをかけてクラスの席を譲ってもらうイベントだ。
しかし今年はAランクからSランクへの脅し等は一切無かった。王族がいるからだろうか。
それぞれの生徒が寮に戻る中、一人の生徒が上の空でブツブツなにか呟いていた。
「27位…………27位………………27位……………27位……………」
あまり自分を卑下するものじゃ無いですが、文の構成や諸々がやはり初心者ですね反省します。なう(2022/05/03 00:35:13)
現在、170話近く執筆しておりますが、どうでしょう? この当時より少しでも現在の文章力が上がっていたら嬉しいです。
 




