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THE BLACK KNIGHT  作者: じゃみるぽん
一章・物語の始まり
14/183

【1章・貴い一族】4

現在文頭の一字下げ作業中です。地の文の最後に句点を付けるというのも頑張っておりまして、それぞれの作業を完遂するのはまだ先になるとは思うのですが空いた時間に頑張りますので宜しくお願いします。


「えっ………」


あまりの衝撃的な言葉に頭が真っ白になり思考停止する。



「クシャトリアを殺したのはエストの間者だった」



【剣術 9】のクシャトリアを殺す程のエストの間者が王国に紛れていた、この事実はアルスに尋常では無い程の衝撃を与えていたが、次のフロイド団長の言葉でそれが薄れる。



「クシャトリアは剣術スキルが高かったが自爆には対抗出来なかった……」

「クシャトリアはガーネット殿下を庇って死んだんだ」



「これは、間者を王城と王宮に出入りさせていた事は城に居る全ての者の失態でもある為公表する事は出来ないが話は広まるだろうな」



 この騒動は王族反対派が聞いたら直ちに王族と城にいる人を糾弾するだろう、大臣の地位を狙う者は難癖付けて大臣の地位を奪い取る事も起きるだろう。大臣の地位を持ち、城に駐在しているというだけで。




「クシャトリアが居ればガーネット殿下の学園の護衛はクシャトリアだっただろう、しかしもう居ない……ガーネット殿下は最初護衛を付けないとまで仰ったがそんな事は許されない」


「そこで4年前に護衛を担当している君と婚約者のセレスティーナ嬢が抜擢されたという訳さ」


「なるほど……」



此処でアルスの指名は妥当だ、ガーネット殿下の命を狙っている者が王城、王宮にまだいると仮定した場合、王城、王宮から護衛を選ぶ事は難しいだろう、普通は反対される同年齢のアルスの指定は王命により強制的に決める事で反対させないのが目的だろう、4年前に護衛を担当したという表向きの理由も丁度いい、セレスティーナは女性という事で女性の殿下と何かと都合がいい為だ。



(よくセレスをねじ込めたな……俺には嬉しい事だけど)




「……分かりました、ガーネット殿下の護衛を受けます」



「王命だから断れないよ」



「あ、はい………でもセレスに危害が及ぶ場合は王命であろうと無視しますよ」



「罪に問われてもかい?」



フロイド団長の凄まじい圧でアルスは押しつぶされそうになる。



「はい」



アルスに向けられていた圧が解かれる。



「ハハハ凄いね…流石はアルス君だ」



▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢



 一方その頃王宮の庭園ではガーネットとセレスティーナがお茶をしていた。



「セレスティーナ嬢……いや、セレス本当に久しぶりね」



「えぇ、そうですねガーネット殿下」



「病気で寝込んで以来何年振りでしょうね…」



 ガーネットとセレスティーナは3歳の時に会っている、しかしお互い幼くよく覚えていないのだが愛称で呼ぶ程にはよく会っていた。



「今は元気に過ごしていますよ」



微笑みながらセレスティーナが言う。



「そのようね、最近婚約者も出来たみたいじゃない」


「はい、とても良い御方です」


「アルスさんよね、どんな出会いだったの?」


「私のお父様が気分で開催したパーティーでの事です」



 そこからセレスティーナはあのパーティーで起こった事、感じた事全て話した。



「す、凄いわね……」



 ガーネットは羨ましかった、夢物語のような出会いに四年前では何の変哲もない少年だったアルスが4年ぶりに合間見えると百七十五程の身長に細すぎず太すぎずの良い体格になっていたのだ。



 男性としての魅力を持ち合わせているアルスが婚約者になったセレスティーナがとても羨ましかった、あの有名なエルロランテ将軍も絶賛し、滅龍騎士団を持つアーバンドレイク公爵が驚愕する程の実力を持っているのだから。



「………セレス実はね、今回学園で私の護衛をするはずだった人が亡くなってね……アルスとセレスティーナが私の護衛に選ばれたわ」



「それは……悲しいわね……」



沈黙が数分続く。



「そこで何故私達なの?」


「実はね、私の護衛はエストの間者の自爆で死んだのよ…」


「なるほど…間者がまだいる可能性を考慮したのね」


「そう、護衛に騎士を置かないのは反対させるんだけど、陛下が王命まで出して抑えてくれたわ」


「そういうこと……アルスはこの事知っているのよね?」


「近衛騎士団長が話してくれているはずだわ」



「ならいいわ、アルスが引き受けるなら私も引き受けるし、アルスなら受けるでしょうけど」



セレスティーナは微笑む。



「………王命なのよ?」



ガーネットの顔はとても暗い。



「……アルスは王命でも断りそうだもの」



セレスティーナは少し誇らしいような表情で言う。



「ところでガーネット殿下」


「何かしら?」


「カルセイン王子にはどんな護衛が付くのかしら?」



 王族には決まって護衛が付く為にその人物が気になったのだろう。



「カルセインねぇ……確か自分の奴隷を使うとか言ってたわ」


「奴隷ですか……大丈夫なのでしょうか?」


「カルセインの奴隷は人間から獣人まで沢山いるわ、正直どんな護衛になるのかまでは分からないけど護衛が務まる力量を有している者は多いと聞くし、大丈夫でしょう」



「そうなのね……取り敢えずこれからもよろしくっ!ガーネット殿下」


「えぇ、こちらこそ宜しくセレスティーナ、私の事はガーネットでいいわ」


「分かったわ、-----ガーネット」




笑い声が響く二人のお茶会はアルスが来るまで続いた。



▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢



 今日は王立魔法学園の試験日、学園には筆記と実技の二つで入学を決める事になっている。筆記は主に算術と魔法の知識、大陸の歴史が問われる。実技は例年だと学園の教師が模擬戦をしたり、的に魔法を当てて威力を測る事になっている、この魔法と筆記で不正をする学生が多かった。



しかし今年は例外で実技はSランク冒険者パーティー《ワルプルギス》が担当する事になっている。



アルスとセレスティーナとガーネット殿下は筆記試験の会場に居た。


「セレスとガーネット殿下は筆記の対策出来てますか?」



「私はしたわ」


「私もしたけど……ガーネットって呼んでって言ったじゃない!」



 そうアルスはガーネットと再開した際、これからは同じ学生という立場だからガーネット殿下からガーネット呼びに変えて欲しいと言われていた。



「いえ、いくら学生でも”王命”で護衛に任命されてますから呼び捨てなど出来ません」


「全然いいのに……」



ガーネットがムッとしながら言う。



「まぁ…気分が向いたらするかも知れないですね」



「本当!?私は構わないから何時でもいいわよ、私は先にアルス呼びするけど」



 最初にあった頃より随分アルスとの距離が近い気がするが気にしないアルス、こういう時は気にしない方が後々楽なのだ。



筆記試験が始まる、会場はペンの音以外の音が消え黙々とアルス達は問題を解いていた。



「おいっ!!離せっ、私の父は男爵だぞっ!」

「お前らっ!父に告げ口してクビにするぞ!」



恐らく何らかの不正をしていたのだろう、一人の貴族の子が試験監督官に連れていかれる。


 アルスはハデスという神からこの世界の事を多少教えて貰っているのもあり、この国の教養が少しズレている事を知っている。


 それでもアルスはズレている答えを書かなければならない、例えばエスト神聖王国の主神はウルスニドラだが、本当は違う事をハデスから教えられている。


(複雑な気持ちだな……)



▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢



長い試験が終わる。



「「どうだったアルス?」」


二人が聞いてくる



「まぁまぁかな、二人は?」


「私は魔法知識の所が不安ね」



セレスティーナが言う。



「私は完璧ね、満点取れると思うわ」



ガーネットが言う、流石は王女だ、自信もそうだがそれ相応の努力をしたのだろう。



「実技の試験に向かおうか」



「「えぇ」」



「すごい数だな、筆記は会場で区切られていたけど実技試験は全員受けるのか……」



 実技試験はとても広い、すごい数の受験生が居るがこの中の半数しか受からないのだから驚きである、アルス達は変更された試験官の紹介が行われるのを待つ。



試験場の端にある壇上に四人の男女が上がる。



「皆さん、おはようございます」



リーダーらしき人物が喋る。



「今回実技を担当するワルプルギスだ、宜しく」



拍手が起こる、人数の割に拍手の音が小さいのは平民が多い冒険者への貴族の偏見からだろうか。



「国王陛下から厳しく試験する事を命令されているから手加減は期待するなよ」


「へっ、手加減だとよ」



周囲からは嘲笑う様な声が聞こえる、ワルプルギスのメンバーは挨拶を終え壇上を降りてくる、早速始めるらしい。



「セレス、ガーネット殿下、気になりませんか?」


「何をですか?」


「Sランク冒険者の実力ですよ」


「良いわね、セレスも少し見ましょう?」


「分かったわ」



アルス達は模擬戦が気になるので他の受験者の試験を見学する。



 ワルプルギスのメンバーは剣が一人、槍が一人、魔法士が一人、弓が一人というバランスがいい組み合わせのパーティーのようだ、パーティー内での職種が多い事も今回試験官に選ばれた理由なのだろう。



「リーダー、俺たち舐められてません〜?」



「ハハ、当然だろ貴族はそういうものだ」

 

「それにしてもウザイわよね」


「まぁ、リュークだろ?最初の組の担当は?」


「あぁ、叩きのめしてくるよ」


「頑張ってね〜、リーダー」



 試験は圧倒的なワルプルギスのリーダーらしき人の勝利だった、水魔法の使い方が非常に上手く、身体強化魔法も“上”くらいは行っているだろう、受験生は試験官に触れることすら出来ず軽くあしらわれていた。



他のワルプルギスメンバーもとても強かったSランクの名は伊達ではないという事だ。



「俺達って先に魔法試験だな」



「そうね」



「行こうか」



 魔法試験場では受験生が一列に並んで的に向かって魔法を撃っていた、詠唱する者、無詠唱で撃つ者、様々だ。


「次は………セレスティーナ=ディズヌフ=アーバンドレイク」


「はい!」


「それでは的に魔法を」


「『暴嵐竜巻(テンペスト)』」


ゴォォゥゥ



的が砕け散った。


「こ、こ、これは暴嵐竜巻!!無詠唱でこの威力!」



 セレスティーナは風の精霊と契約しているため高位の魔法も無詠唱で且つ高威力で放つことが可能だ、それはガーネットも同じだが。



「次は………ガーネット=ヴァン=アトランティス」



 試験官も王女を呼び捨てにする日が来るなんて思ってもいなかっただろう。


「『紅蓮火山(ぐれんかざん)』」


今度は、的が焼失した


「こ、こ、これは紅蓮火山!!これも無詠唱!」



 実は試験官は高位の魔法に驚いているのではない、無詠唱という所と詠唱と劣らない威力に驚いているのだ。



「次は…アルス=シス=エルロランテ」


(どうしようかな、無詠唱でもいいけど詠唱して威力を出すか?でも十分的を壊せるくらいの魔法は無詠唱で出せるか…)



「『雷霆(らいてい)』」


 雷霆は雷魔法の最高レベルの魔法である。これまでに雷魔法スキルで得た人で発動出来た者は少なく、更に雷霆は無詠唱の際の魔法イメージの難しさから無詠唱で放つと自爆するという事例が多くあった。



現在、雷霆を無詠唱で放てるのはアトランティス王国にはアルスと雷帝だけである。



一方、的はと言うと地面は抉れ跡形もなく消滅していた


「信じられない……雷霆を無詠唱………」




アルス達は足早に魔法試験場を出て模擬戦場に行く



▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢



「おぉ、来た来た、アルス君達だろ?」


「私がアルスですが、何でしょう?」


「今から模擬戦だろ?俺が相手だ」


「他の生徒はもう終わったのですか?」


「あぁ、剣を使う奴はひと通り倒した時々いい筋の奴は居たが微妙だな」



(恐ろしいな……この短時間で全滅か…)




「嬢ちゃん達はあっちの魔道士っぽい人の所に行ってくれ」



「「分かりました」」



そう言ってセレスとガーネットがワルプルギスの魔道士っぽい人の所に行く



「アルス君は俺が相手だ、さぁさぁ、真ん中へどうぞ」



アルスとワルプルギスのリーダーらしき人が中央に行く



「俺の名前はリューク宜しく」



「アルスです宜しくお願いします」



(貴族にしては礼儀正しいな…)



「実はな、俺達の依頼人は国王陛下なんだが依頼内容に”アルス=シス=エルロランテの実力報告”もあったんだよ」



「え!?何ですかそれ!?」



「俺だってよく分からんよ、でも何となくだが強いんだろお前、魔法の音がここまで響いてきたぞ、ウチの魔法士が感嘆してたぞ」



「それ、俺っていう証拠ありませんよね?」


笑いながら言う



「いや、今年の生徒で雷魔法を使えるのはアルス君だけって国王陛下が言ってたぞ」



「そ、そうなんですね、有難うございます」



「よし、じゃあ早速始めようじゃないか」

「魔法はどうする?」



「どちらでも構いません」



「じゃあ魔法ありでいくか」



アルスはアロンダイトを抜く意識を目の前のリュークだけに向ける。


 先に動いたのはリュークだ、リュークは上から叩き斬るように剣を振る、アルスは片手でアルスの頭上に振り下ろされた状態のリュークの剣を薙ぎ払うように弾く。


 リュークは弾かれた勢いを利用して回転、一回転して再び斬りかかろうとするも、アルスが居ない、リュークが回転している0.5秒の間に砕けた地面だけ残してアルスはリュークの視界から消えた 。



旧王国流剣術『絶影』である。リュークは視界外からの剣に反応して立て直す・・・暇は無かった。



 リュークがアルスを視界の中心に捉えた瞬間、間合いが数歩詰められ、目に見えない速度の斬り上げをリュークは水魔法『水牢(すいろう)』を自分に向けて発動する


(ちっ、俺が最初に使うことになるとはな……)



 水牢を発動してアルスとリュークの間に水の壁が形成されるがアルスの斬り上げにより、一瞬で水牢が吹き飛ばされる。


(……っなんだと…?)



 リュークはアルスの右肩辺りを蹴り、数メートル後ろに飛び立て直すが、アルスの身体はウルグ以外の人間の蹴りで動くことは無く、地面を蹴り接近する。



 突きを出すアルスを左に剣で受け流すリュークだがアルスのアロンダイトとリュークの剣が擦れ合い火花が散っている途中にアルスが空中で体をひねり、空中に居るアルスと地面に足をつけたままのリュークが三回剣を打ち合わせる。



 リュークはアルスが着地したところを狙い水魔法『水弾』を放つ、アルスはリュークの水弾を利用してリュークの視界から消え『絶影』で裏に回り込む。


 回り込まれたのに気付いたリュークは自分を起点にして円状に水で波を創り出す『水流波(すいりゅうは)』でアルスの攻撃を防ぎ、一旦距離が空く。



 アルスはアロンダイトの柄を強く握り両手で構えリュークに肉薄する左上、左下、右上、右下から一点に向けて同時に斬撃を放つ。四方から放たれた斬撃はリュークの剣を砕く。



 旧王国流剣術『四閃四死(しせんしし)』本来は相手を四分割する技だが、模擬戦で四分割には出来ないため武器に四つの斬撃を当てる事にした。



「おい…おいマジか……」

(手も足も出ねぇじゃねぇか……化け物ってレベルじゃねーぞこいつ)



「し、し、し勝者、アルス=シス=エルロランテっ」



ウオオオー


模擬戦場が歓声で埋め尽くされる。


リュークの仲間が駆け寄ってくる。



「大丈夫かリューク?」


「俺は大丈夫だが、剣が使い物にならなくなった……」



笑いながら心配する仲間と今の状況が信じられないような表情をするリューク。




「「アルス〜」」



セレスティーナとガーネットが駆け寄ってくるのが映った。



「「勝利おめでとうございます!」」


「凄かったですアルスの剣術!」


「そうそう、皆さん途中からアルス達の試合魅入ってましたよ!」



 セレスティーナとガーネットが言う。そんなに魅入るほどの技は実は出していないアルスだが、セレスティーナとガーネットがアルスの勝利に喜んでくれるのが何より嬉しかった。



 最後にワルプルギスのメンバー、一人一人と握手を交し、学園長の試験終了の挨拶と明日の結果発表と首席発表についての説明があり、入学試験が終わった。

誤字報告待ってます

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