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THE BLACK KNIGHT  作者: じゃみるぽん
五章・嵐、見ゆ
131/183

【5章・ユリウス=エスターライヒ】3

完全にフリガナを忘れていました。修正しますが今後も忘れる可能性が高いので此処に記しておきます。脳内変換宜しくお願いします


牙狼族(ワーウルフ)

鳥人族(ガルーダ)

牛頭族(ミノタウロス)

虎人族(ウェアタイガー)

竜人族(ドラゴニュート)

蜥蜴人族(リザードマン)

「帝国城で殺しをしてまで何を知りたいんだ!?」


「知りたいのはモルブレイン=スターゲイトの息子の名前と居場所…そして”首狩り”エリザベータ=マキシモフの居場所。交渉材料は既に揃っている筈だ、無能カミーユの命とファミリーの持つ二人の情報全て……どうだ偏りは無いだろう?」


「脅しか?」


「脅し……違うな、取引だ」



血を沸き立たせる様なイラつきを拳を強く握り、歯を強く食いしばる事で必死に耐える


その不自然な様子を見たロマノフファミリーの面々は鋭い目付きで三人の元へと近付いて来ようとするがエトムントが片手を出し、それを制した



「チッ…家族には手を出すな……軍務卿の息子の名前はヴィンス=スターゲイト。血は繋がっていない養子だ……首狩りは……帝都の宿に泊まっている。詳しくは知らない……」



「-------よし、信じよう」



アルスはヘルムの中で笑顔を浮かべながらエトムントから離れると直ぐにエリザベスを呼び、セレスティーナ達の方へ歩き出す



「済まないエリザベス、君は女性として魅力的だ。だから手に入れまいとしたカミーユが寄って来たというのは認めたくなくても分かるだろう? しかし裏にある本当の理由は不況だったミスリル鉱山で新たな鉱脈が見つかり乗っ取ろうとした、これだろうな」



「魅力的ですか……」



「不快だったなら撤回する」



「い、いえ……嬉しい言葉です」



「そうか。アレクサンドラ様にも伝えて欲しいのだが最近の帝国情勢の移ろいが激しいので十分に気を付けてほしい、と」



「分かりました。因みにオークションの後は…」



そうエリザベスが言いかけた時、二人のメイドがアルスの前に立ち塞がり、貼り付けた様な笑みを浮かべて同時に口を開く



「「そろそろオークションが始まります。御準備を」」



会場の展示物が次々と引き上げられ、貴族や裕福な人間らは一席一席用意された椅子に座って着々とオークションの支度を進めている



「あぁ」



「エリザベス=チャーチル様はこれから如何致しましょうか? 必要であれば私達が外までお送りしますが……」



「エリザベスは近くに居てもらう。軍務卿の件もあるし、新たに分かった首刈りの情報もある。これについてはもう少し話す必要があるが…今は取り敢えず皆近くに居てくれ」



そう言ってアルスは時空間魔法で布に包まれた魔剣を出しフォトゥンヘルムに渡そうとするが、この場でフォトゥンヘルム、と呼ぶ事は憚られてぎこち無い挙動になってしまう



「セレスやエリザベス、ヴァイオレットは任せたぞ”英霊”」



英霊、既に死んだ事にされた様な呼び方だがあながち間違っていない


本来ならば数年前、もっと言えば十数年前には死んでいた様な英雄が一人の人間の手によって生きながらえているのだ



「英霊か、悪くないな………うむ、承った」



この中で唯一大きな布の塊の中身を知らないエリザベスは興味津々な様子で身体を傾けて見つめているが、あまりこれに興味を持たれても困る四人は足早にエリザベスを連れて用意された席まで歩いて行く


展示されていた商品が一時的に格納庫に運ばれ、多くの商品が一旦放置されるこの瞬間こそ今夜起こる騒動の始まりであり、狙い時


帝国騎士達も皇帝宛の手紙を見たのか会場内を血眼になって見回しており、格納庫へと続く廊下には重装備を身に纏った騎士達が道を塞いでいたりとオークション自体の雰囲気を壊さない様に十分且つ繊細な警戒体制が敷かれている



(自分は…どれどれ……017番か)



使用人から全体が白く塗られて017という番号が黒で塗られた木製の札を渡され鎧を身に着けた状態で椅子に座り込むアルスだが座り込んだ椅子は厚い布地が張られた豪華な椅子で多少忍びない気持ちになってしまう


五人が座り込んで数分後、中々見ないデザインの壺が入った硝子ケースと共に出て来た宰相はこのオークションを取仕切るのだろう



「皆さん、お待たせ致しました。今年も始まりましたこの帝国オークション…」



毎年恒例の挨拶から始まり、商品についての前口上を話す宰相だがこれがまた凄く惹き込まれる様な紹介で買う気が全く無いアルスでも欲しくなる様な新たな魅力を引き出している


製作者の生涯や製作工程の説明など、誰が知りたいんだという情報もこの壺目当ての人間からしたら唆られるのだろう



「ではこの壺は金貨80枚から…」



「85」


「90」


「120」


「130」



次々と上げられる札で値段はあっという間に120金貨を超え、激しい駆け引きが行われていく。値段が上がるにつれて上がる札の数も減り、骨董品目当ての人間だろう人間が最後に値段を釣り上げ落札する。この流れは何時見ても飽きない面白さを含んでおり、この駆け引きこそ楽しみに来ている者だってこの中に居るだろう



「ユリウス様、魔石以外に何か購入を決めている物でもあったりするのですか?」


「あー……一応あるけど、期待はしてないかな」


「期待?」


「落とせるか少し不安なんだ。この世界で明確な価値が未だに定まっていない代物でね……初期設定価格すら分からないよ」



アルスの言うその代物は自身の記憶を頼りにして存在を確認し、闇ギルドを使って持ち主であるストロヴァルス帝国貴族を割り出した物で危険であるが故にウルグは確保を断念していた物



「ねぇ、アル……ユリウス様、まさかそれがあの鳥人族(ガルーダ)なんて言わないでしょうね」


「言わないよ。俺に奴隷を愛でる趣味は無いし、獣人の奴隷を傍に置くなんて信頼出来ないだろ?」



アルスの奴隷に対する偏見に、違法とは言え奴隷であったヴァイオレットは表情を暗くする


その表情を見たのか、それとも言った最初から落ち込む事を分かっていたのか「大丈夫」と言って膝の上に置いていたヴァイオレットの手に金属で包まれたアルス手が重ねられる



「話していたら来ましたよ。鳥人族(ガルーダ)の女の子……それにしても綺麗な翼ですね……」



槍を手に持った帝国騎士に挟まれアルス達”客”とは一段高い壇上に上がった鳥人族(ガルーダ)の女の子は女の子と言うには大人びた、見た感じはセレスティーナと対して違わない程の年齢に見える


(あの目……あの時の……)


アルスの視線はこのヘルムによってあまり何処を向いているのか、見つめているのかが分かりにくく、話す相手は視線を合わせて会話するというのが難しい傾向にある


しかし、壇上の女性はその大きな青い瞳でアルスの瞳を捉え少しも動かさなかった


気味が悪い、と言い切ってしまえば簡単な話だが此処は帝国オークション。そこに出品される獣人なんて何か裏があるだろう、というより裏しかない様に思える



「此方は鳥人族族長オウルの実の娘、時期鳥人族族長とも名高かった”リリス”。初期設定価格は白金貨5枚!」



名高かった。とはよく言ったもので獣王国に帰れない”リリス”は当然族長にはなれない


その嫌味の様な前口上も気になったがアルスの中でそれ以上に引っ掛かった点が一つ。鳥人族族長の娘の名前だ


リリスと紹介されていたがアルスの記憶では全く違う名前で記憶されているのだ


(此奴ら……知らないのか? 確かにあまり世間に知られていない情報の筈だが……)


「20」


「21」


「30」


「31」



次々と上げられる札と白金貨の枚数は正に破格。現在値段争いを行っているのは展示時に”品定め”をしていた《ロマノフファミリー》と共和国で少し変わった武器商売を独占している《イルム・カルテル》の二つで十ずつ値段をつり上げる《ロマノフファミリー》と一枚ずつ重ねていく《イルム・カルテル》の一騎討ちになっている


鳥人族族長の娘という十分戦争を引き起こすに足りる存在がこう高値で取引されるのは絶対に裏があるというものだが、アルス個人としては関わりたくない気持ちが大きく静観を貫きじっとしていた



「ねぇ、アル…ユリウス様。こんな所に鳥人族族長の娘が居ていいのでしょうか?」


「言い訳ないよ。国同士…いや、相手は獣人だから種族と国の争いになりかねない」


「どうするの…?」


「”どうする”ね………取り敢えず何もしない。というのも、ロマノフファミリーの真意は正直読めないけどイルム・カルテルの真意は粗方予想が着くんだ。あくまで俺の希望だけど、イルム・カルテルに落として欲しいところだね」



共和国で活動する《イルム・カルテル》は扱う商品が少し特殊で、剣や槍、弓や盾、防具など”一般的”な武器商売はしておらず、毒や暗殺者、シミターや三節棍などの一風変わった品物を扱っている


比較的獣人差別が少なく、関係が良好な共和国を活動拠点にしているという事もあり、身柄の引渡しを条件に鳥人族全体と何か利得の高い商売を持ちかけるのでは、とアルスは予想しているのだ



(しかし鳥人族相手に持ちかける商売とは何だろう……)



肝心な所を悩むアルスだが、目の前では早くも枚数の桁が三桁に突入しておりロマノフファミリーの札の上がりが鈍り始めていた



「当然か」


「「え?」」


「ロマノフファミリーも白龍の魔石を狙っている筈だからね。今ここで大金使うよりは後に残す方がいいって判断だろう」






「151」



その一言が勝敗を決定付け、最後までアルスを見つめていた青い瞳は揺らぎ、アルスの中に微妙な蟠りを残して幕を閉じたのだった

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