【1章・貴い一族】3
アルスとセレスは婚約者同士になってもあまり生活に変化は無かった。今日はアーバンドレイク公爵邸にアルスが赴き、セレスティーナと模擬戦をしていたアルスは木剣、セレスティーナは白龍剣である
白龍剣は柄の所が白く一見芸術品の様に見える、アルスはこの白い剣がただの白い剣とは思えなかったが、セレスと模擬戦を続けた
「そう言えば、セレス」
「どうしたの?」
「滅龍騎士団は今日居ないのか?」
「あの人達は確か………エストの国境にアースドラゴンが出たとかで討伐に向かったわ」
ドラゴン種は、レッドドラゴン、ウォータードラゴン、アースドラゴンの三種だが、この三種は地域によっては守り神として崇められていたりする
「……凄いね、いつかお手合わせ願いたいね」
龍を倒したことが無いアルスは普段本でしか見ない龍を倒す事が出来る騎士団がとても気になる
「ふふっ、一度その試合見てみたいわ」
日の光が反射して輝く銀の髪が揺れる、因みに今日、アーバンドレイク公爵邸を訪れているのは、アーバンドレイク公爵がアルスとセレスティーナを連れて登城せよとの王命が下り、一時的にアーバンドレイク公爵邸に集まっていたためである
「アルス君、紹介しようSランク冒険者のスルト君だ」
「よろしくアルス君、スルトだ」
アルスとスルトは握手を交わす
「公爵様から聞いたよ、とても強いらしいね、それにあそこまで剣に慣れているのを見た所何度も窮地を乗り越えてきたと見た」
(まぁ、一年前まで毎日死にかけてたからな)
アルスの目の前のスルトという人間は双剣を使うらしい腰に提げた二本の剣は赤い装飾があしらわれており、来ている鎧は赤色が多く使われているのを見るに火魔法を使うのだろう
「それに、冒険者になりたくないんだってね、アルス君の実力だと十分高位ランク狙えると思うんだけどなー」
「いえいえ、とんでもない自分はまだまだですよ」
「そうかなー……」
スルトはアルスが実力をまだまだ隠していると確信していた。14歳ながらも自分に臆した様子もなく上手く実力を隠すアルスに感心していた
「スルトさんは何歳なんですか?」
「俺か?俺は25だ」
「若いですね…」
「Sランクという事は戦争にも参加されたんですか?」
この国のSランク冒険者は戦争への参加が義務化されている
「いや、俺は去年Sランクになったばかりでな、戦争は参加してないんだ」
「そうなんですね」
「二人共そろそろ王城へ向かうぞ」
アーバンドレイク公爵に呼ばれ王城へ行くため馬車に乗る、スルトさんは馬で並走しながら行くらしい
アーバンドレイク公爵邸は王都にある為、王宮への移動距離はあまりない、しかし道中安全という訳でもない、王都の通りは貴族が多く往来するため窃盗や強盗が意外と多いのだ
そこで名が知れた冒険者を雇いその牽制を行う貴族も多い
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王城の門が開く、中に入ると意外な人物が居た
ガーネット第三王女と近衛騎士団長フロイド=セーズ=トランツェルだ
「公爵様と冒険者様はこちらです」
隣にいたメイドが公爵を案内していく、場にはアルスとセレスだけとなる
「お久しぶりです、ガーネット殿下」
アルスとセレスは片膝をつき言う
「久しぶりね、アルスさん貴方とはお話したいことがいっぱいあるのだけれど、今日はセレスティーナさんに用があるの」
「また今度お話しましょう?」
「了解しました」
ガーネット殿下はセレスを連れて何処かに行く、セレスが呼ばれた理由はどうやらガーネット殿下がセレスティーナに用があるかららしい
(そうすると俺に用があるのが…………)
「やぁ、アルス=シス=エルロランテ君」
(やはりか……)
アルスに用があるのは近衛騎士団長らしい、髪はセンターで分けられ、若干ウェーブがかっている。神器を持つ近衛騎士団長は視覚と味覚と嗅覚を失っているためか常に目を瞑っている。フロイド近衛騎士団長は戦争では敵に容赦がなく愛国心が強い男だと聞いた事がある
「お初にお目にかかります、近衛騎士団長様」
「ハハハ、そこまで畏まらなくていいよ、それに、私の事はフロイドと呼んでくれ」
(なんでこんな急に馴れ馴れしいんだ?)
「まぁ、立ち話もなんだし私の部屋に行こうか」
フロイド近衛騎士団長について行く、少し複雑な構造の王城を迷う様子なく進んでいく姿を見ると神器の犠牲があるのか不思議に思えてくる
「フロイド様は目が見えないと聞いたのですが大丈夫なのですか?」
思い切って聞いてみる
「あぁ、確かに見えないよ、でも何となくの周りの様子は分かるんだ、所謂第六感ってやつかな」
王城を数分歩くと、フロイド団長が止まる
「ここだよ」
フロイド団長の部屋に入る、特に珍しい物や奇怪な物もない普通の部屋だ
「今回アルス君を呼んだのはもう少しで始まる入学時の試験についてだ」
「入学試験ですか……」
てっきり、神器の事について聞かれると思ったがどうやら違うようだ
「そう、王立魔法学園には毎年恒例の試験だが、今年は王女殿下と王子殿下の二人も入学するだろ?」
「だから、Sクラスに確定で入れる事になったのだが、仮にも王族のいるクラスだ、クラス内に王族を嫌う者が入ったら大問題だろ?」
「そうですね、王族をよく思わない貴族も多いと聞きます」
「うん、だから今年は試験官が変わるぞ」
アルスにとっては十分予想ができる範囲である
「そうですか」
「あれ?意外と反応が薄いな、因みに試験官はSランク冒険者パーティーの《ワルプルギス》だよ」
(へぇー、フロイド団長ではないのか)
「どう?驚いた?」
「はい、てっきりフロイド団長が試験官をやるのかと思っていました」
「ハハハ私がやったら、誤って殺してしまうかもしれないだろ?目が見えないと調整が難しくてね」
サラッと怖いこと言うフロイド団長
「《ワルプルギス》は決して弱くないから気を付けて試験に挑めよ」
「試験官が変わるのは分かったのですが、何故私を呼んだのでしょう?」
フロイド団長が呼んだ理由が分からない、このままだと試験官を教えるただの不正だ
「あーー、一番最初に言うべき事を忘れていたようだアルス君とセレスティーナ嬢はこれから学園生活の三年間、王女の護衛が王命で出されたよ」
「えぇ………」
「ハハハ嫌なのかい?両手に花じゃないか」
「一応私はセレスティーナ嬢と婚約しているのですが?」
「知っているさ勿論、陛下も承知の上で王命を出したんだぞ、因みに王命は断れないぞ」
(セレスは知っているのだろうか…ガーネット殿下に今頃話されているかもしれないが、怒られるかな…)
「一つだけ聞いていいですか?」
「私がわかる範囲なら」
「ガーネット殿下は何故私を護衛に選んだのでしょう?やろうと思えば正式な近衛などを付けることも可能だったはずです」
「それか………実はな」
「クシャトリアは死んだんだ」
次回で1章最後です




